↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/12

10・社会の闇の一面

とりあえず、ゾンビの暴走は秒で停められた。

魔法の範囲外が暴走の要因であるからゾンビのアレを食べて魔法の効果範囲の拡大で事なきを得た。

…事なきを得たのだ

不幸中の幸いとして赤羅組の残党を含めた囚人のみがゾンビに変わった事だろうか。

犯罪者が減ったという点だけを見れば良い事ではある。

それでも大々的に全国ニュースで報じられていたが囚人が集団脱走したという事件が大事にならないはずがない。


その際に囚人の代わりに大量の異国風全裸少女が刑務所で暴れていた動画がどこからか世に出回った。

複数の少女に追いかけられ鬼気迫った様子で逃げる囚人の動画は、たちの悪いフェイクニュースとして流されて世間にとって真実は闇の中である。


動画を見た限り、牢屋が怪物でも暴れたかのように破壊されていたが修繕費はいくらかかるだろうか。

税金が無駄に消費される事に心のなかで謝罪しながら俺は目の前の光景から目をそらした。


ヤクザの拠点のとある一室。

そこにゾンビによって囚われていた女性が並べられていた。

人はここまで残虐になれるのか。

そう言わざるを得ない姿だった。

変人から説明を受けた時は耳を疑ったが実際に見ると犯罪者は滅ぶべきだと思う。


生きた人形。


それが赤羅組の商品だった。


虚ろな顔で言葉を発さず手足が無い人。

20人。


卑猥な入れ墨や装飾品が身体中に有る人。

15人。


永遠と何かを叫んでいる少女。

1人。


無事な女性は一人として居なかった。

商品として扱われていたからか、死人は居なかったが誰一人として日常に戻れないと思ってしまった。

それが36人。


「さぁ、兄弟!

 憐れな彼女らを救おうじゃないか!」


変人が俺を急かすように腰を叩く。

俺は近寄るのも憚れるような状況に臆していたが変人の言葉に押されるように足を進めた。

そうだ、臆している場合ではない。


せめて魔法で少しでも楽にられるように。

俺はそう願いながら手足の無い女性に触れた。

変人は背後からブツブツと唱えているといつか見た時のように女性の手足が生えていく。

変人には俺からの要望として彼女達に安らかな眠りを与えていった。

せめて悪夢さえ見ない深い眠りに、と。


なかには体内に仕込まれたナニカが出た時は吐くかと思ったが最後までやり通した。

人は同じ人に想像を超えた残虐な行為を行えるのかと憤り、叫びそうになったが女性達を起こしてはいけないと必死にこらえた。


「さぁ、兄弟!

 疲れただろう!

 あとはエロゾンビに運ばせるから!

 休んでいろよ!」


変人はそう言うといつの間にか用意していたのか、惣菜パンを渡してゾンビを従えて女性達を移動させ始めた。


「帰せないのか」


この光景を見た後に食欲の湧かなかった俺はそっと惣菜パンを置いて変人に尋ねる。

変人なら彼女達の記憶を消して元の日常に帰せると信じて。


「難しいだろうな!

 外見は治せたが…この薬物!

 まさか魔法で治せないとは思わなかったぞ!

 まさかこんな所で見つかるとはな!」


嬉しそうに叫ぶ変人に吐き気を覚える。

なんで人を治せない事に喜びを見出すのか。

変人よりも人でなしが適切であろうか。


薬物。

それは赤羅組が独自に開発したモノで全ての女性に投与されていた。

それは脳機能を低下させ、人間性を著しく失わせる禁忌とも呼べるモノだった。

言語障害、感覚の鈍化、感情の鈍化、筋弛緩…

人を構成する特質を尽く破壊する薬物。


まるで外見を損なわずに精神だけを破壊する事に特化させたような薬物だと変人は言っていたが俺もそう思う。


聞いただけでも恐ろしいが、実際にその薬物で壊れてしまった女性達を見るとなお恐ろしい。

さらに言えば魔法を阻害する効果があると聞かされればなんとも言い難い。

彼女達の脳は薬物の影響で治せなかった。

それこそ、新しいモノに入れ替えるしか方法が無いらしい。


偶然とはいえ、とんでもない薬物が有ったものだ。

万能だと思えた魔法でもどうにもならない事がある事を知ってしまった。


彼女達は団地で管理する事になった。

薬漬けにされた彼女達は借金の肩代わりやそもそも身寄りのない者が選ばれていた。

つまり帰る場所も介護する相手も居ない。

病院で看るにしてもベッドを圧迫する厄介者扱いをされると残酷な現実を突き付けられた。


それに比べて俺達の団地ならば死ぬまで面倒を看れるし、時間をかければ再起できると言われたので許可した。


「兄弟!

 顧客リストを見つけたぜ!

 回収ついでに潰すか!」


回収という言葉に嫌な気分になるが、救えるだけ救おう。

変人は魔法を阻害する薬物に対して興味を抱いているだけだろうが、その過程で人が救われるならば文句はない。

何人になろうが面倒を看るつもりだ。

相手を潰すのは大賛成だ。


「よし、やれ」


需要があるから供給がある。

こんな生きたまま死んだような人間を求める奴には消えてもらう方が世の為だろう。

俺が頷くと変人は顧客リストを確認しながらゾンビを差し向けていた。

俺は顧客リストの人物が誰か知らない。


だが、ヤクザと取引がある連中なら同じく闇社会の同類だろう。

皆、滅ぶべし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。