夢を見つめて 2
裁判が始まった
改めて自分の犯した事の酷さを認識させられる日々だ
独房では毎日家族を殺めた方角にお経を唱える
それは無くなった者達への為なのか
自分の自己満足なのか分からないが
唱える事で唯一精神を保ててるように思えた
そんなある日一人の面会者が来た
ガラス越に見えたのは
あの島で出会った時の優しい笑顔で微笑む真弓さんだった
「こんにちは聡くん」
「あっ、自分の本当の名前は」と言い掛けると
「私が出会ったのは、あの島の聡くんだよ
聡くんしか知らないもん」と屈託のない笑顔で笑った
「元気そうで良かった。少しダイエットした?」と笑う
「食事美味しくないよね?」
「贅沢言えない身分ですから」
「でもバランスはいいって聞いた事あるから
健康的かもね」とまた笑う
彼女は事件の事はいっさい語らず
自分の仕事の上司の変なん癖とか
真弓さんが凄い方向音痴でオオボケした事など
ただ、、たわいのない楽しい話をしてくれた
久し振りに俺は笑った
彼女は不思議な人だ
彼女の顔を見ているだけで心が安らぐ
彼女との、面会で少し癒やされた
「もう時間なのね、早いわ」
「楽しかったです本当にありがとうございました」
「また来るね」と言ったので
「こんな所は、真弓さんが来る様な所じゃないので、もういいですよ」
「何言ってるのん、私が聡くんに会いたいから来るだけだよ」と優しく笑った
毎日同じ時間に起き
祈り食事をし刑務所内で決められた務めをし
聖書やお経の本を読み
また祈る日々
そしてまた自分が
犯した事が蘇り涙して魘されながら眠る
裁判が続いて行った
こんなに1日が長いのだと改めて感じて
また長い1日が過ぎるだけの日々
そんな日々に唯一楽しみになっていたのが
定期的に来てくれてる真弓さんとの時間だった
そして数年が経った
その楽しみも段々終わりに近づいている事も感じていた
面会終了の時俺は立ちながら
「真弓さん今日まで貴重な休みの時間を俺の為に本当にありがとうございました
ここに来てから笑う事無かったけれど真弓さんのお陰で笑う時間が出来ました。
体に気を付けて幸せになって下さいね」と言った
俺が部屋を出る時、真弓さんの目から涙が零れた




