互いの過去を知る時 4
「こんにちは」
そう言いながらガラス越しに弁護士さんが
あの美しい風景の写真を数枚見せてくれた
「行って頂けたのですね、本当にありがとうございます。
俺の好きな場所の風景です」
「そうでしょう、典明さんが教えてくれたんですよ」
「会いに行ってくれたんですね」
「茂さんにも会いましたよ。お二人とも凄く心配しておられました
あこちゃん貴方が言う様に、とっても可愛いいですね。
貴方の事は何も知りませんので安心して下さい」
そして
お二人が俺の為に一生懸命考えて頂いてる事も聞かされた
「それから、これをお話ししておきますね」
そう言い茂さんから聞いた話を俺にした
茂さんには2人の子供がいた
男の子と女の子だ
茂さんは、とても厳粛で特に気の弱い男の子には厳しく接していた
小学生ぐらいになると、よく虐められては泣く
そんな息子が情けないのと腹立たしいのとで一層厳しくなるが
益々引っ込み思案で意気地なしになっていく
そんな息子は気が弱いまま中学生になると虐めは益々エスカレートして
いつも体に痣を付けられたリ皆の前で恥ずかしい行為をさせられたりした
母親は学校に行き虐めた子を突き止め辞めさせると言うが
茂さんは、今ここで親が手を出したら、この子は一生自分で切り開けん子になるから
自分で解決させろと言う
社会に出てからの方が、ずーっと大変で苦しい事ばかりあるのに
今耐えて乗り越えられんかったら、ずーっと負けぱなしだと
母親を引き止めた
幸い妹は社交的で友達も多いので息子も、きっと大丈夫と信じていた
それから少しして息子は高層マンションで自ら命を落とした
家には息子の遺書があった
「お父さんへ
僕は本当に弱い子なのでしょうか?
僕が虐められるのは僕に責任があるのですか?
大人は何もしてくれない
先生も友達も
それは弱虫な僕のせいですか?
お父さんみたいに強くなれる人間と
なりたくても出来ない、なれない人間がいるのです
僕は、いつもお父さんに怒られる度に思っていました
どうして僕の気持ちが解らないのですか?
僕の心の叫びを何故聞いてくれないのですか?
僕は弱虫なんかじゃなく
僕は僕は優しい子なんだと
僕はお父さんを恨んで死んで行きます
僕は虐めに負けたのでなく
僕は、お父さんに殺されるのです」
母親は発狂し茂さんは崩れ落ちた
それから夫婦中は悪くなり喧嘩ばかりする日々
次第に母は精神が病んで躁鬱病になる
そんな中で思春期を送る娘も、また心が病んでいく
あんなに社交的で明るかったのに
娘もまた心が泣いていた
どうして私を見てくれないの?
私はここにいるのに何故お兄ちゃんの事で、そんなに苦しんで自分を見てくれないの?
どうして私を愛してくれないの?
心が悲鳴をあげる
娘が働きだすと家族もバラバラになった
母は実家近くの精神科に入院
娘は働くが、病んだ精神状態なので普通に働けないので
茂さんが両方の生活のお金を稼ぐ日々
そんな時、娘はバイト先で知り合った男の子供を妊娠した
産みたいと言う娘に茂さんは止める事は出来なかった
益々金銭が必要になる茂さんは
稼ぎのいい肉体労働や大型トラックにも乗った
贅沢一つせず、遊びは勿論、趣味なども全くせず、お酒も飲まず
ただただ毎日、奥さんと娘さんと娘の子供の為にだけ働いた
茂さんは家も売り金銭も作るが生活が苦しくなり
茂さんも苦しみ何もかもから逃げたく島に流れ着いた
数年後、奥様は病気で亡くなり娘さんも子供を育てられない精神になり
その子は施設で育つ事になって
施設で成長し大人になり施設を出て一人暮らししながら
いろいろ働くが親の愛情を知らないまま育っていた為か
寂しさを紛らわす為か彼女は男性に溺れて行った
そんな時子供を妊娠して産むのだが
まともに育てる事が出来なく事ある毎に施設に預け育児放棄する
茂さんはそれを知り、なんとか引き取ろうとするが
その時は島に来てたので役所も茂さんの年齢と、この島では無理と許可が出なかった
その子が、あこだった
本当は、あの島で家族を呼び暮らしたかったのだ
あの島の家は、島スーパーの、おばあの旦那さんが残した家だったらしいが
手入れが大変で困っていた
そんな時、茂さんに出会い過去も知る
おばあは旦那さんから、家をいつまでも残して欲しいと言う遺言通り
茂さんに好きに使ってもらっていたのだった
茂さんも、また孤独だった




