互いの過去を知る時 3
精神の検査などもさせた家族の事、特に母親の事は、かなり細かく聞かれ話した
数ヶ月後
弁護士が俺に言った
「この前の結果を先に言うと君は精神異常でもなんでもなく普通なんだ、ただ」
少し言葉に詰まりながら続けた
「君のお母さんは障害の可能性が高い事が解った」
俺は驚きもしなかった
むしろ、やっと誰かに解ってもらえたと言う安堵感だった
「ただ、今はお母さんから検査する事も出来ないし
それ以上に君はたくさんの人を殺めたのだから極刑は免れないかも....」
辛そうな顔して言うので
「解っています、自首した時から覚悟はしてますから、いろいろ調べてもらって
その事だけでも解ってもらえただけで俺は少し救われます」
「何か欲しい物はあるか?」
「島の写真が欲しいです」
「あの、お爺さんが居る島?」
「はい」
しばらく考えて
「解った」と言った
弁護士は本当に写真を撮りに行ってくれ
そこで茂さんに会いに行った
「こんにちは」「はい」と部屋から出る茂さん
「どなたですか?」「私大阪から来た弁護士で今信雄君、あ、ここでは聡君でしたね
彼を担当してます」と名刺を渡す
「あっ、元気にしてますか?」
「そうですね、一時期よりは。初めて面会した時は少しやつれてる感じでしたが」
「そうですか?」
「少しお時間宜しいですか?」
茂さんは男を家に上げてお茶を出す
ちょうど、おばあが来てたので
あこを頼んでスーパーで見てもらう事にした
あこは弁護士さんに、ちゃんとお辞儀して舌足らずで挨拶した
「あこちゃんですね。本当に可愛いですね」そう言い頭を撫でてくれた
「あの子は、なんであんな恐ろしい事をしでかしたんか?
俺が、この島で見た聡は、そら初め会った時は辛そうな寂しい顔をしとったけど
そんな酷い事する子には見えんかったし、この島では優しい子じゃった」
「そうですね、自分も最初に会った時、やつれた感はありましたが
決して凶悪な事をする青年には見えなかったし、むしろ穏やかな優しい目をしてましたから
戸惑いました。それで彼の事をいろいろ調べているうちに
彼自身と言うより彼の環境で徐々に屈折して行ったと思います」
「新聞で読んだが普通の家庭で両親も可愛がっておられたんじゃろ?」
「傍の目にはですね。家庭内って家族の事しか解らない事ってありますでしょ。
勿論、彼の両親や、ご家族も普通で自分達が信雄君を苦しめてるなんて想像もしてなかったと思います。
だからこそ、それが問題で彼を狂わせたのかも知れません」
「弁護士さんが知ってる彼を教えてはくれませんか?
わしは、この島で一緒に暮らしてても何一つ彼の事を知らんかった....」
後悔してる様に見えた
弁護士は彼の幼少期から事件までの事を詳しく話す
話終えると茂さんは涙を拭いながら
自分の過去も話し出した
話終えると弁護士さんは言う
「貴方は彼を息子さんと重ねてらっしゃてたんですね
貴方が悪い訳でも息子さんが悪い訳でもないのです
貴方は良かれと一生懸命愛情を掛けておられた、ただ、ほんの少し
息子さんが求めてた愛情と違っていたのでしょう
私も親ですが、この子の為と思って行う事が本当に、いい事なのか、どうなのか
正直解りません
時には知らず知らず苦しめていたり、子供もまた迷い格闘しながら親を苦しめたりもします
何が正しいのかは誰にも解らないものです
だから時に人間は過ちを起こしてしまう
ただ、取り返しのつかない事になる前に誰かが手を差し伸べたり
誰も解らない子供達の本当の心を、しっかり聞いて受け止める事が大事なのです
それが、たとえ大人には理解出来ない事だとしても」
茂さんは涙ぐみながら
「聡はどうなりますか?」
「僕たちも一生懸命減刑になるよう努力はしてますが
殺害された旦那様のご家族の方達は極刑を望まれていますし
幼い子供さんを殺めていますので......」
「なにか、私に出来る事はありますか?
本当は今すぐにでも聡の所に行きたいんだが
あこがおるけん行けんのじゃ....」
「あなたの想い伝えておきますね
彼なら、あなたの気持ち一番解られると思いますから」
そう言い茂さんの家を出てから
典明さんの家に立ち寄った
「先生いろいろとありがとうございます」
「元気そうで良かった、典明さんも、この島に来てからお顔が柔らかくなられましたね」
「そうですか?きっと、茂さんや聡君達と出会えたからですね
それと、この島には何か解らない人を穏やかにしてくれる母性愛みたいなのが
ある感じですね」
「この島に来られて本当に良かったですね」
「そうですね。先生聡君はどうなりますか?
俺考えてて嘆願書をつくろうかと」
「気持ちは解ります、私もいろいろ最善を尽くすように頑張りますが
問題も多く覚悟はしてて下さい」
「なんで、あんな優しい子が....
息子を殺した連中の方がよっぽど死刑になっても良さそうなのに」
「典明さん、彼は貴方にとても感謝していました
薄々自分が犯罪者じゃないかと感じてても普通に優しく接してくれて
こうして私を紹介してくれた事も
そして典明さんが犯罪に手を染めなかった事を安堵してます
今、これから貴方が本当にしなくてはならない事がきっと何かあるはずです
それが彼にとってこれからの一番の支えになると思います」
そう話した
数日後
大阪の俺の待つ刑務所に来てくれた




