互いの過去を知る時
~刑務所~
取り調べが本格的に始まる
そんな時、俺に面会があった
連れられた部屋のガラスの向こう側に知らない男性が座っていた
俺が側に行くと男は立ち会釈をして
弁護士の野村ですと言いながら名刺をガラスにあてた
「座りましょう」と言われた
「佐藤典明さんから連絡頂き、あなた信雄さんの弁護を頼まれました」
俺の本名を言った
「典明さんが?」
「ご存知ですよね?」
「はい」
「過去に息子さんが事件で亡くなられたのもご存じですか?」
「はい少し聞きました」
「その時の被害者家族の会で出会ったんです、あなたの事を典明さんは
凄く心配されていて、いろいろ調べられたみたいで
なんとか少しでも力になりたいと僕に相談されて引き受けさせて頂きました」
「そうだったんですか、こんな俺に....」
「典明さんは、あなたが、あんな酷い事を起こすように
どうしても思えなくて信じられなく
あなたに何があったのか真実を知りたいと言ってました
あなたの心の声を聞いてあげる事が、あなたを救う事にもなるのではと
僕も今の、あなたを見て、こんな優しい目をして穏やかな表情の方が
あんな事件を起こした事に改めて驚いています
僕も、あなたの事を、もっと知りたいと思いますし
あなたの抱えている苦しみを受け止めてあげたいと思っています」
「ありがとうございます。でも、多くの命を奪ったのは俺ですし
あの、島に行く迄の俺は、凶悪者でしたから
今穏やかなのは、あの島と、あの島で出会った方達のお陰ですから」
「それでも、いいと思いますよ。
凶悪犯罪者は元々精神的に問題があり産まれ持った者か
なんらかの環境で、そう変化して行った者だと思います
あなたを見てると思いますが、ここで精神鑑定も受けますが
僕は、貴方は元々は今見せてる穏やかな優しい子だったんだと思います
それを変えたのは何だったんでしょうか?」
無言の俺に
「また来ますので話したくなったら聞かせて下さいね」
と言い面会が終わった
取り調べは事件の事を詳しく一から説明して
もう一度自分が事件を起こしてる感覚になり
穏やかだった感情がまた、あの苦しかった日々に引きずり込まれる感じになった
警官は弁護士と違い
俺の本質を知ろうとはしない冷たさを感じた
まあ、こんな酷い殺人鬼なのだから、仕方がないが
やはり心で呻き苦しむ俺がいる
この想いを誰かに聞いて欲しいと
そんは日、また弁護士さんが会いに来てくれた
「こんにちは、体調は如何ですか?御飯食べれてますか?少し痩せたみたいなので」
「大丈夫です」よく見てると思った
「俺、人とと言うか家族とも殆ど会話してなかったから
上手く話せないと思うし、自分の気持ちを表現するのが苦手なので
俺の気持ちが上手く伝わるか不安なんですが....」
「大丈夫ですよ、みんなそうですし、上手く話せる人の方が少ないですよ
それに僕たち弁護士は、それをちゃんと正しく受け取り理解し、あなたに少しでも寄り添うのが
私たちの役目ですからね。安心していいですよ」
この人なら大丈夫かもと思った
そして話し出す
封印して誰にも言わなかった自分の真実




