光の闇 2
船が出てからも動けない俺
またあの事が脳裏を過り、いろんな事を思う
そして「捕まるのも時間の問題でしょ」と言って去って行った人の声が
何度も耳に聞こえる
このまま俺は茂さんの所に帰っていいのだろうか・・・・
自分の事を知られるのが近づいてきてるように思う
あこの笑顔が目に浮かび
あこには知られたくなと感じる心
そして
あの時の少年の見開いた目が頭から離れない
いろんな事が浮かんでは消えてまた浮かぶ
気が付いたら俺は典明さんの家の前にいた
ただ立ち竦むだけしかできない
少しして家の扉が開いた
「・・・?聡どうした?」
無言のまま立ちながら俺が初めて見せた涙
家に上げてくれた
「どうしたんだ?なにか苦しんでるなら俺でよかったら聞くよ」
無言の俺
「茂さんにも誰にも言わないからな」
俺の気持ちを少し理解してくれてると感じた
俺は話し出した
「俺がこの島に来たのは大阪から逃げて来たのです
本当は自殺するつもりだったんですが、それすら出来なくて.....
そんな時に茂さんに助けてもらって今こうしていますが.....
傍から見たら普通の家族に見えても
俺は孤独だった、誰からも愛情受けてなく自分の居場所もなく
虐められても誰も気が付かない気が付いてても助けない
家族は、寄ってたかって俺を見下す
劣等感は募る一方で
そんな時、家族の一言で今迄の溜まりに溜まった感情が爆発して
家族全員.........
殺害しました」
俺が今話せるのは、これが限界だった
典明さんの表情が一変したが
「聡、よく話してくれたね。苦しんだんだね。」と言った
少しして
「聡は、これからどうしたい?」
「.......自首しようと思っていますが
どうしても、茂さんには言えなくて
そして、あこにも知られたくなくて、もちろんいつかは解りますが
あこが自ら解る時までは知られたくなくて.....」
「そうか、お前の気持ちも解るけど
もし急にいなくなったら茂さん達も悲しむんじゃないかな?」
無言の俺に
「お前を信じてるから、お前が言わない事は俺も茂さんには言わない
ただ何も言わないで島を出るのは
俺が茂さんなら苦しいな~」と言った
家に戻ると、いつもと変わらない優しい穏やかな日常が流れていた
あこが「ぉかぁえり!」と喜んで抱きつく
茂さんも「ご苦労様やったな」と優しい顔で言う
食卓には茂さんの作った食事が並ぶ
それを3人で穏やかに微笑みながら食べる
3人で後片付けしながら楽しそうな、あこを見て笑う
お風呂のシャワーは最近では俺とあこが一緒に入る
嬉しそうにキャッキャ言いながら恒例の水かけバトル
それを見付ければ、じぃは「こら!水もったいないじゃろぅ!」と笑いながら諭す
体拭くときは、あこは自分で俺の真似して拭くが
頭を拭いて欲しい時はタオルを俺に渡して頭を少し下げる
拭くと気持ちよさそうにしている
寝る時はあこが真ん中で3人で川の字で寝るが
必ず俺の指を握ってるのは今も変わらない
こんななんでもない事が
こんなにも幸せで嬉しく楽しいのだと今更ながら感じて
あこの穏やかな寝息を聞いて俺も眠りにつく
翌朝の早朝
まだ寝静まってる部屋から静かに出る
食卓に2通の手紙を置く
茂さんと、あこが眠る部屋の方を見て
一礼して昨晩用意してた少ない荷物を持ち
家を出た
少しの時間が流れて
茂さんが起きてきた
「聡、さとし!そとぼー?」
俺の部屋を見て少し様子が違うのを感じる
食卓の手紙を見つけた
「茂さんへ
今迄、本当にお世話になりました
こんな形で出て行く事を許して下さい。
どうしても茂さんと、あこの顔を見ると言えない自分がいます
俺は、この島に来る前に決して許されない事を起こし自殺しに来ました。
そんな時、茂さんに助けて頂き何も知らない俺を家族の様に接して頂いて
嬉しかったです
感謝でいっぱいです。
うまく言えませんが、茂さんと出会って、このままではいけないと思い
大阪に戻り自分の犯した事と向き合い罪を償いたいと思います。
本当に今迄お世話になりました。
本当にありがとうございました。
一生忘れません
お体に気を付けて長生きしてくださいね
聡 」
もう一通には
「あこへ
あこ今まで、本当にありがとう!
あことの生活は本当に楽しかったし
お兄ちゃんにとって忘れられない素敵な思い出になりました。
あこの屈託のない笑顔と優しさに何度も救われていました
お兄ちゃんは遠くにお仕事に行かないといけなくなったので
お別れになりますが
一生あこの事はわすれません。
あことの出会いは俺の一生の宝物です
素敵な思い出をありがと!
元気でね
さとし 」
船が島に着いた
乗り込もうとした時
「さとし!さとし!」と声がする方を見ると
あこを抱える茂さんだった
「聡!何があったか解らんけど
ここは、あの家はお前の家でもあるんやで
だから、いつでも帰ってくればええ
落ち着いたら好きに来ればええんやからな
ここは聡の故郷じゃ!
じぃは、ずーっと待っとるけんな」と言葉を掛けてくれた
俺は涙で茂さんの顔がぼやけてくる
「にぃ~にぃ~」と言いながら涙を流すあこ
体を低くして、あこに言う
「ありがとうねぇ、兄ちゃん今から遠くへお仕事行くけれど
ずーっと、あこの事忘れないし大好きだからね元気でね
ありがとね」
と溢れる涙をこらえ
あこを抱きしめた
茂さんが「これ持って行け」と袋をくれた
船に乗り込む時
あこが走ってきて
「いやー!」と俺の腕を掴む
「あこ、ダメじゃ、お兄ちゃん仕事だから、お利口にしてたら、また会えるんだからな」
あこは、いっぱい涙しながら辛そうに寂しそうに俺の手を離した
出航の時まで茂さんと、あこは見送ってくれていた
2人の姿が見えなくなり貰った袋を見ると
オリオンビールと手作りの摘みと封筒が入ってて
封筒を開けると3万円入れてくれていた
涙がまた流れる、そして
いつまでも消えない、茂さんと、あこの顔だった
大阪に戻った
人混みに揉まれ都会の空気を吸いながら
そのまま流れるように警察署の中に入った




