光の闇
夏も終わろうとしていた
25年の中で一番充実した夏だった
ここに辿り着いた時は何もない風景に思えたが今は違う
毎日変わる穏やかで時には厳しい自然環境の中で島の人たちは
全て受け入れながら生きている
都会では感じなかった人の温もり優しさ大切さみたいなのが
こんな俺でも少しは感じれた
この夏で、あこともいっぱい遊び
茂さんや典明さんとも絆が深まった感じがした
明日には長いバカンスが終わり
大阪に戻る真弓さんの、お見送り会だ
浜辺に集まってBBQをする準備を典明さんと一緒にしてる側には
あこもいて、お手伝いをしてくれている
しばらくして真弓さんも手伝いに来て
和気あいあい笑いが絶えない
そんな様子を見ながら近づいてくる茂さんと、おばあだ
2人とも優しく孫たちを見る感じで
「みんな楽しそうだね~」と言った
「楽しそうじゃなく楽しいです!」と俺も笑いながら言う
花火大会の日から、あこが、お気に入りの
家庭用の花火も、この夏最後の日になって
「これが最後の一本だよ」と俺が言うと
「にぃたん、どぞぅ」と言うあこ
「じゃ、一緒にしょう!」と言い
あこの手に線香花火持たせその手を俺の手で包み込むと
典明さんが火を付けた
俺の手が震える、あこが
「だいじょうぶぅ、こわくないよん」と巻き舌で言ってくれた
「兄ちゃん怖がりだね」と皆が笑った
大きく弾ける花が少しづつ小さくなり
赤い小さな玉が消えかけて落ちた
あこが少し悲しい顔をして俺をみた
本当に忘れられない夏になった
次の日、俺は真弓さんを船着き場まで
キャリーバックを引きながら見送りに行った
内地からの船が着きかけた
「ありとう荷物助かったは
また近い内に来ると思うから、また会えるかな?」
「はい」
「おばあ、宜しくね。元気でね」
「ありがとう、真弓さんも元気で」
真弓さんは乗り込む手続きに向かって振り返り手を振る
俺も振る
船から、まばらに人が降りてきた
その中で聞こえてきた会話
「そぅそぅ、あの酷過ぎる一家殺害の事件さぁ、犯人息子みたいやん
めっちゃ怖いねんけどぅ~」
「うちの近所やねん」
「え!まじ~」
「こわ~」
「まだ犯人捕まってないんやろ?」
「うんうん”まじ、やばー、いがいと近くにおったりしてな」
「この島とかに、おったりしてー」
「恐ろしい事言わんどって!」
「はよ捕まったらいいのにね」
「時間の問題しょぅ」
俺は震え頭の中が真っ黒になり何も見えなくなる
遠くから「さ と し !」と言う声で
やっと光が差し込む
真弓さんが一生懸命手を振っていた
俺はただ見つめるしか出来なかった




