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Part7「変転」

 よろよろと彼女も歩き出す。そこに

「ブレイザさーん」

 体育館からジャンスが呼びかけた。

 美鈴を抱えた大樹もいた。

 こちらもうまくいったと理解した。

(さて。セーラさんはどうなったのかしら?)








 高い樹の上。短時間で「愛の巣」が出来上がった。

「かんせーい。ほら。優介。ここが私たちの住まいよ」

 相変わらずくぐもったアマッドネス特有の声だが、だいぶ口調がまりあのそれになっていた。

「ここでわたしたちは結ばれて。きゃっ」

 照れて両手で頬を押さえる。それを怪人の姿でやると異様である。

「夫婦ってことかい?」

 淡々として言う優介。

「夫婦って、キャーッ。そうなるのかしら。いずれは子供も授かって」

「わかった。じゃ卵を産めよ」

「へ?」

 「鷹」だが「鳩が豆鉄砲くらった」という感じのリアクションをするホークアマッドネス。

 それに追い打ちをかける優介。


「だってお前トリじゃん」


 いうなり優介は携帯電話でホークアマッドネスの顔を撮影してその写真を見せる。硬直するホークアマッドネス。

「こ、これが……わたし?」

 鋭い嘴。カギ爪。羽毛に覆われ白い肌がまるで見えない。

 二足歩行のタカにしか見えない。

「うそ。そんなはずは!?」

「それじゃこれ」

 今度は動画再生だ。

 まるっきり鳥そのものの巣作りの様子が録画されている。

 手を使わず、嘴で枝を運ぶ様子が。


「これがわたし? この醜い姿がわたし?」

 鼻にかけた態度こそ取らなかったものの、自らの可愛さを自覚しているまりあにしたらおぞましい姿だった。

「わかったか。鳥と人間じゃ結ばれないんだよ」

 いつもとはちょっと違う感じの辛辣さを乗せた優介の言葉。

「人間じゃなくなってた? そんな」

 ホークアマッドネスが気を失った。

 ここまではのっとったタオの心が強く、鷹の姿にはむしろ誇りを持っていた。

 しかし優介を見つけたのがタオにとっての命取り。

 仲間/友達の援護より、戦乙女の殲滅より、優介を手に入れるが最優先のまりあの心がよみがえった。

 そしてその心が「鷹女」であることを拒絶した。シンクロが解けた瞬間に羽毛が舞い散り一糸まとわぬまりあが。

 それにまといつくように着衣が再生されていく。


「ばーか。それでいいんだよ」

 その言葉はいつになく優しさがにじんでいた。


 舞い散る羽毛を見つけてセーラは巨大な「鷹の巣」を見つけた。

 急いで駆け付けると優介と気を失ったまりあがいた。

「大丈夫だった?」

「おま……まぁ怪物になるよりはわかる姿か」

 場にそぐわぬレオタード姿のセーラ・フェアリーフォームに驚いていた。

「だいたい想像はつくけど、何がどうなったか教えてくれる?」


 事情を知ったセーラは安どした。

 同時にキャロルがドーベルに連絡。そちらも片付いたとわかった。

「まだアマッドネスの力が残っているかもだけど、拒絶したなら大丈夫だと思うわ。さて。キャロル」

「はい」

 キャロルは空に飛び降りると天馬としての姿を見せる。

「二人だけど大丈夫?」

「お任せください」

 確認してセーラは巣の中に入る。そしてマーメイドフォームに転じ、まりあを抱えた優介がペガサスに乗るのを手伝った。


 ゆっくりと着地して、そこからは優介がまりあを抱えていく。

 セーラもフェアリーフォームで着地したとたんにエンジェルフォームへと。








「ちっ。役立たず共め」

 監視していた栗生は吐き捨てるように言うと、次の行動に出た。








 保健室へと向かっていた一同だが、恭兵に呼び止められてその場で待っていた。

「おお。綾瀬も元に戻ったのか」

「ああ。聖奈ちゃんのおかげだな」

「その高石は?」

「心配要りませんわ。ほら」

 まりあをおぶった優介と、セーラ・エンジェルフォームがともに歩いていた。

 それも一緒に待つことにした。


「みんな元に戻せたのね」

 安堵の笑みを浮かべるセーラ。だがその表情が引き締まる。ブレイザもだ。

「危ない」

 セーラとブレイザ。二人は前に出て壁となった。

 すさまじい突風が吹きつける。自然現象ではない。

 とうとうこらえきれず飛ばされ、守っていた裕生たちのほうへと吹っ飛ばされた。

「きゃあっ」「うわっ」「ぐはあっ」

 悲鳴を上げてなぎ倒される一同。

 逆にその衝撃で気絶していた四人の少女は目覚めた。

「くはあっ」

 激闘に次ぐ激闘の上にこれだ。セーラとブレイザはとうとう力尽きてその場に倒れ伏す。

 気絶した瞬間、高岩清良。伊藤礼という二人の男子の姿へと戻る。

「ええええ!? 男の子だったの? 聖奈さん」

 まりあの目がいっぺんに醒めた。


「ちっ。仲間を盾にして自分は逃れるとはな」

 攻撃者。栗生は背中に翼をはやしたままいう。

「あたしまでやられたら誰が守るのよ」

 ジャンスは変身を維持している。

 弓を向けるが狙いが定まらない。

「死にぞこない一人何ができる」

 その姿が変貌していく。

 まりあ同様に唇がとがる。

 ステゴアマッドネスの仲間。そしてその系統で翼をもつことから予想はできた。

 栗生は翼竜・プテラノドンアマッドネスへと変身した。


「さて。守りながらの戦い。どこまでできるか見せてもらおうか」

 余裕のプテラノドン。一方のジャンスには余裕がない。

(こんな時に助けでも来てくれたらなぁ。こんなふうにバイクの轟音を響かせて……あれ? ホントに来ている?)

 解放されている正門から稲妻の走る黒いバイクが飛び込んできた。

 金色のヘルメット。黒いバイザー。白い二本のマフラーは昆虫の翅を思わせる。

 プロポーションから見て女と思われるライダーは、全くの躊躇なくプテラノドンにバイクで体当たりをする。

「ぐぎゃあああっ」

 吹っ飛ばして当面の危機を回避。

 そのライダーはバイクを止めると右グリップを引き抜く。それが剣へと変化する。

「来てくれたの?」

 歓喜するジャンス。

「き、貴様までいたのか。大賢者・スズ」

 驚き、そしてあわてるプテラノドンアマッドネス。

 そう。助っ人・スズの参上だ。


「助かったよ。スズ。でもどうしてこの場所が?」

「ふっ。君の相棒が私を呼びに来てくれたのだ。おかげでここに来れた」

 美鈴たちがアマッドネス化して戦い始めたときにウォーレンが救援として呼びに行っていたのだ。

 ただこの場所を知らないため案内の必要があり、それで時間を要した。

 連絡が届いて呼んだ直接の理由は消えたのは分かったが、むしろこの疲れ切ったところを狙われると読んだ彼女は逆に急いでやってきた。


「さて。あの時に助命嘆願した立場としては気が進まぬが、どうやら何の関係もないものたちにまで危害を加えている様子。それならばもう許すわけにはいかんな」

 切っ先を向けて宣する。

「今一度、眠りについてもらう」

「ほざけ。貴様もしょせんはロゼの飼い犬。ならばわれらの敵よ」

「あいにくだがすでに袂を分かった。だがお前の敵であることには違いがない」


「殺せ」

 いつの間にか校舎の入り口に世良がいた。

 それが野太い声で告げる。

 翼竜は異形の顔だが青ざめて見えた。

「ああ。わかってるよ。ノザ」

「あれがノザのついた憑代か。使い魔から聞いたがテゴはすでに葬って二人だけらしいな。ならばこれまでだ」

 過去においては三人のチームワークがあったから戦えた。

 しかし単体ではそこまでの強さはないとしての発言だ。


「観念しろ。この時代は貴様たちの生きる時代ではない」

「ふざけるな。貴様も同類だろうが!」

「そうだ。だから私が黄泉路まで案内してやろう」

「地獄には一人で行け」

 三人で六武衆と渡り合ったからか怯える様子もない。

 地に足をつけ「踏ん張った」状態で翼を動かすと凄まじい突風がスズを襲う。

 セーラとブレイザを戦闘不能に追い込んだそれだ。

 だがスズはなんと得物である細い剣を投げた。

 地面すれすれ。狙いはプテラノドンアマッドネスの脚だ。

「うわっと」

 まさか唯一の得物を放るとは?

 その考えもしなかった攻撃は冷静な判断をさせなかった。

 反射的に剣をよける。そのため「踏ん張り」が効かなくなり、自身の繰り出した風が推進力となり浮き上がってしまう。

 ここで着地したら無防備なままだ。やむなくそのまま空を飛ぶ。だがそれがすでに命とりだった。

 ピンクのワンピース姿になったジャンスが「狙撃銃」を構えていたのに気がついたときはもう遅い。

 左の翼を撃ち抜かれる。


 強制的に飛ばされたプテラノドンは、今度は強制的に地べたを這うことに。

「今のはまりあさんの分ね。そしてこれは」

 二つのハンドガンに分けるとメイド服姿のヴァルキリアフォームに戻るジャンス。

 左右の銃から一発ずつ撃ち今度は右の翼を使えなくする。

「詩穂理さんとなぎささんの分。みんなお前のせいで『化け物』にされたんだ。そしてここからは」

「ひいいいっ」

 テゴやノザとの連携で制空権をとる。

 それが本来のブラ……プテラノドンアマッドネスの戦い方だった。

 しかし単体となると地を制する二体がいない。

 ましてや翼を奪われた今である。この劣勢もさほど不思議ではないのである。

 だから逃げた。しかしそれを完全に見越した攻撃が「おかれていた」

 上からスズが飛び込んできた。

 インパクトの直前に体をひねり回転を作る。

 それがトップスピードになった瞬間に命中した。

 スズの必殺技。その名は。


「ホーネットスティンガー」


「ぎゃああああっ」

 体半分持ってかれた。勝負あった、

「今のはジャンスと闘わされた娘の分。後はジャンス。君に任せるよ」

「ありがと。スズ。後はあたしに任せて」

 静かなるジャンス。むしろ不気味た。

 そのまま無表情で二つの銃口を向ける。


「最後はあたしたち。彼女たちと闘うように仕向けられた、あたしたちの怒りよっ!」


 彼女らしからぬ「熱血」。言い換えればそれたけ怒り狂っていた。

 ジャンス・ヴァルキリアフォームの左右の銃が無尽蔵に銃弾を発射する。

「ぎゃあああああっ」

 数十発の魔弾をその身に受けたプテラノドンアマッドネスは、力なく倒れ爆発四散する。


「きゃあっ」

 その衝撃でなぎさ。詩穂理。美鈴も目を覚ました。

「な、何? 何が起きたの?」

 理解できないのも無理はない。

 いきなり爆発が起き、それが収まると全裸の少女がその場に。

 そしてジャンス……彼女たちにしたら押村順子が倒れ伏したと思ったら、こちらは逆に少年の姿になったのだ。

 魔力と体力の限界だった。

「ええええ? 男子?」

「もしかして……そちらの男子二人も」

 頭のいい詩穂理は今の状況でこの二人も聖奈と麗華の本来の姿と察した。

 何しろ自分たちが先刻で異形と化していたのだ。性転換くらいなら同じ人間。まだ理解できる。


「くっ」

 爆風にたじろぐ世良。

 それにまっしぐらのスズ。

「一気に行くぞ。ノザ。覚悟」

 世良が変身しないがお構いなしだ。切っ先を心臓に突き立てかけた時だ。

 世良の腹から突起物が飛び出て、スズの腹部を強烈に貫いた。

「な、何ぃっ!?」

 吹っ飛ばされるスズ。だが世良も致命傷だ。

「な、何が起きたというのだ?」


「そいつは影武者よ。あなたが狙うのは私」


 隠れていたのは生徒会長。海老沢瑠美奈。


 笑っている。上機嫌で笑みを浮かべている。

 異様なのは見た目もだ。

 スカートの中から太い尻尾が伸びていた。

 これが世良ごとスズを貫いたのだ。


「る、瑠美奈様ぁ」

 世良の姿が女性へと変わっていく。同時に意志の光が消えうせた。

「き、貴様の方がノザか。くっ。お飾りと思わせて本命だったということか」

「そう。権力を欲する者同士で力をもらったの」

 その広い額が緑色に変わる。目も爬虫類のそれになる。

「消えなさい」

 世良から引き抜かれたしっぽがスズを横殴りに打ち付ける。

「うっ」

 そのまま清良やまりあたちの元へと吹っ飛ばす。

 強烈なダメージで変身が解けた。

 その正体は清良の幼馴染。野川友紀だった。


「今度は女の子? 何がどうなっているの?」

 混乱がひどくなるまりあ。

「くっ」

 友紀は力を振り絞って立ち上がろうとしている。

「無茶だよ。どうして立ち上がるのさ?」

 さすがのスポーツ少女。なぎさも臆している。


「私は、罪を犯したの……」

 同じ17歳のはずが、まるで人生の大先輩のように友紀が見えたまりあたち。


「かつて私はアマッドネスに堕ちたことがあった」

「何ですって!?」

 衝撃を受けたなぎさたち。他にそんな少女がいたなんて。


「こともあろうに大切な人に刃を向けた。殺そうとした」

 まりあたちは嫉妬心からその相手を殺そうとした。だからその気持ちを瞬時に理解した。


「そして私はスズさんと一つになった。彼女もまたアマッドネス。重い罪を背負う人」

 戦闘中の姿というのはなぎさにも理解できた。

「だけどその非道さに袂を分かち、その力を暴力ではなく愛の力で人を守るために使った」

 友紀は立ち上がり「変身」しようとする。

「この罪を償うために私とスズさんは、戦わないといけない……」

 しかし気力だけでは続かない。友紀もひざを折る。倒れ伏す。


 その間に敵のいなくなった瑠美奈は、ゆっくりと変身を進めていた。

 肌は緑色に。体は肥大化。巨大化していく。

 強靭な両足。その姿はまさにティラノザウルスだった。

「ふははは。戦乙女たちも戦えぬ今、もはや我を止めるものはない。待っていろロゼ。復讐の準備だ。手始めにこの生徒たちをすべて手ごまとしてくれる」

 文字通りの恐竜がその巨体ゆえ校舎を外から攻めにかかる。

 逃げようにも生徒会役員を中心とした奴隷女か妨害して、校舎内に閉じ込められている生徒たちだった。


 校舎内。逃げられないどころか、生徒会の女たちが襲ってくる。

「にゃーっ!!!!」

 逃げ惑う恵子。それを追う奴隷女。だが

「せいっ」

 あすかが奴隷女のみぞおちに拳を叩き込む。崩れ落ちる。

「化け物に操られるとはだらしない」

 彼女らしい切り捨てた言い方だ。

「そ。それはちょっと無理なんじゃないかにゃ?」

「無理などない」

 一喝すると首をすくめる恵子。

 あすかは機嫌か悪かった。

(糸井。お前がまさか男だったとはな)

 せっかく好敵手ができたと思ったらこの展開。それで不機嫌だった。

「Help! アスカセンパーイ」

 アンナが助けを呼ぶ声で我に返る。

 ティラノの指示で手当たり次第にとらえて、奴隷女にしようとしている奴らに千尋や双葉も襲われていた。

「ちっ。きりがない」

 あすかは走り出した。


 グラウンド。

 頼みの戦乙女とスズは戦闘不能に。

 戦えるものはいないのか?

 そんな焦燥が外に残された裕生たちを襲う。

「双葉」

 真っ先に動きかけたのは大樹だ。愛する妹が取り残されている。

「やめて。いくら大ちゃんでもあんな怪獣と闘って無事のはずがないよっ」

 美鈴が叫ぶ。

「それでも……俺が行かないで誰が助ける」


「オレも行く。あの中にゃ千尋もいるんだ。こんな時に助けられなきゃ『ヒーロー』にゃなれないぜ」

「ヒロくん。無茶よ」

「無茶はオレの専売特許だ。妹見捨ててオフクロに顔向けできるか」

 やはり目前で母を亡くしたのはトラウマになっていた。


「だったらぼくも。亜優を助けないと」

 いくら女嫌いと言えど肉親となればそうも言ってられない。優介まで立つ。

「優介。わたしも行くわ」

「引っ込んでろ。お前に何ができる」

 一見きついが正論である。ただの少女が「恐竜」に勝てるはずがない。死にに行くだけだ。


「いいや。戦えるよ」

「なぎさ?」

 恭兵も姉。由美香が中にいる。助けたい思いはあったがさすがに逡巡していた。そこにこの発言だ。

「戦える力ならまだある。そうだろ。みんな」

 決意した瞳のなぎさ。


「そうね。わたしは爆発しなかったわ。みんなは?」

 まりあの問いに頷く三人。

「まだ残っていると思わない? 彼女みたいにできると思わない?」

 「彼女」とはスズ/友紀のことだ。そして何が残っているのかは言うまでもない。アマッドネスの力だ。

「もう一度……あの醜い姿になるんですね」

 決して嬉しくはない。そんな口調の詩穂理。

「……怖い。彼が爆発したら女の子だったもん。美鈴はやられたら男になるのかな?」

 そのあたりの知識まではない。

「男ならまだいいよ。もともと女のあたしらだ。女になるんじゃなくて、動物に、トビウオになったりしたら」

 なぎさの指摘はない話でもない。

「やだよ。あたし出汁に使われるのは」

 錯乱気味で訳が分からない発言に。

 それたけフライングフィッシュアマッドネスと化していたのは、トラウマに近いものを感じたなぎさだ。


 もちろんなぎさだけではない。

 化け物と化した四人はみんな恐れていた。

 無事に戻れたけど今度は保証されてない。

 ましてや擬似的に『メス牛』の生涯を体験した詩穂理は尚更だ。

「あ、あのヒロくん。私がもし牛になっちゃったら、そのお肉はヒロくんが食べてね。そうすればヒロくんに消化吸収されてずっと一緒だから」

 いきなり『観念した』かのような発言が出た。

「……いや。怖いから。槙原」

 裕生よりも早く反応したのは恭兵。さすがの恭兵もドン引きだ。

「それじゃわたしはもしも鳥になったら優介を高い空からずっと見守っているね。インコとかカナリアなら飼ってくれるかもだけど、タカじゃ無理だし」

「お前は何を言っているんだ? 人間のままでいればいいだろ」

 優介の本音はそんなストーキングは嫌だというところ。


 清良。礼。順。友紀は気絶したままだ。

「やるしかないわ」

 まりあが宣するとなぎさ。美鈴。詩穂理も頷いた。

「恐怖」を「勇気」で乗り越えた。

 それ以上に罪の意識。そして助けたい思いが勝った。


 まりあはとりあえず翼をイメージした。美鈴も翅をイメージした。なぎさは水中で泳いだイメージがどうしても出る。

(牛になる……牛に化けるといえばギリシャ神話の大神ゼウス。彼は雷を用いたという。カミナリさま。角……)

 詩穂理らしい思考だった。


 そして気持ちが高まった。叫ぶ少女たち。

「悪魔の力よ。わたしにもう一度ツバサを」

 まりあの背中に翼が生えた。ただし大鷲ではなく、白鳥だった。


「美鈴にも翅を」

 その願いどおりに羽が生えた美鈴。

 体が今度は縮んでいく。


「わっ。なにこれっ?」

 なぎさの下半身が魚になった。


「こ、これはっ!? 力がみなぎる」

 放電しながら角が生えてきた詩穂理。


 白い翼で羽ばたいたたまりあの着衣が純白の薄衣に変わる。

 ツインテールが勝手にほどけ、おろした髪が銀色に輝く。

 瞳も金色と人ならざる者のそれだった。

「まりあ……お前天使に?」

 優介の言うとおり、まりあは天使の姿になった。

 その手には光でできた弓矢があった。


「妖精……」

 ただでさえ小柄なのに二回り小さくなった美鈴は、大樹のつぶやく通り、まるで「ピーターパン」に出てくるティンカーベルのような姿だった。

 まりあ同様に銀の髪と金色の瞳だった。

 こちらはノースリーブのトップスとミニスカートだった。


「なぎさ。さっきよりは断然いいぞ」

「は、恥ずかしいね。下半身裸だし」

 なぎさは人魚になった。なぜか空中を泳げる。

 胸元だけフライングフィッシュの名残かうろこがビキニのようになっている。

 全裸なのだがそんな気にならないのはそのおかげ。

 ポニーテールはほどかれ銀色の髪が流れる。金の瞳がちょっと泳ぎ気味。


「おおおおっ。シホ。かっこいいぞ!」

 興奮気味の裕生。もちろん彼は全力でほめている。

「み、見ないで。恥ずかしから見ないでください」

 バッファローアマッドネスの力を引き出そうとしたがそれは角だけ。

 縦にではなくこめかみから生えて前方に向かった二本の角がある。

 胸と腰に申し訳程度の布が。

 「カミナリ様」のイメージでトラジマだ。

 詩穂理はオーガ……というより鬼娘になった。

 彼女も銀髪の金の瞳だった。もちろんメガネはない。


「いくわよ」「うん」

 エンジェルまりあ。フェアリー美鈴が空からいく。

「あたしたちも」「はい」

 マーメイドなぎさが空中を泳いでいく。唯一自分の足で走るオーガ詩穂理はやや遅れ気味。

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