第48話:雑草の意地、冷徹の理
「始めッ!!」
佐藤の『オンド・プレッシャー』が、制御不能の咆哮を上げた。佐藤は嵐の「機体と心中しろ」という不条理な助言を胸に、右脚のスラスターを物理的に破壊。溶け出したマットの熱を支点に、物理法則を無視した多段ジャンプを敢行した。
本田のバイザーが異常な熱源警告を吐き出す。
「直線だと言ったはずだ、ガキ!」
本田の縦拳を、佐藤は左肩を砕かせて受け止めた。装甲の破片を火花に変え、過熱した冷却水を一気に噴射。
超高圧蒸気の爆発が本田の『黒鋼』を内側から解体し、マットへ沈めた。
対照的に、佐野は『ボルシチ・ギア』の関節を全開放し、向井の突進速度を最小限の慣性モーメントで回転運動へと変換した。
「チェックメイト。……あなたの質量は、もう僕の円の中です」
投げ飛ばされた向井の巨体が天井を打ち、静寂が訪れる。
【佐藤:一勝】
【佐野:一勝】
「……勝ったぞォォォ!!」
佐藤の叫びが響く。去りゆく石田の瞳には、かつて捨てた「飢え」が火花となって宿っていた。「白のまま、本戦まで上がってこい。……俺の黒で、直接確かめてやる」
広島の夜。宇品港の工場から立ち昇る白い蒸気が、瀬戸内の月を白く塗りつぶしていく。
嵐は二人の背中を見つめ、三浦義一が自分を看送った時のように、静かに、しかし力強く微笑んだ。
継承は終わった。ここからは、彼ら自身の風が吹く時間だ。




