第49話:13人の賢者(マスターズ・オーバーロード)
「嵐くん。……彼らは審判を派遣する組織ではない。この世界の『理』を定義する門番だ」
三浦の指が叩く『プラチナ承認プロトコル』。プラチナとは、ホストサーバーから無限の給電を受ける権限であり、アンディが持っていた四つ目の席は、システムの監視を唯一免除される「絶対自由」の権利だった。
「その空席は今、マスターズたちの『取引材料』だ。君がそこを狙うなら、一三人の理想すべてと戦うことになる」
嵐の『絶空』が、見えざる壁を予感してハウリングする。後藤の規格、秋吉の伝統……それら全てを上書きする、巨大な「意志」との対峙。
「嵐さーん!! 大変だッ!!」
佐藤の悲鳴に近い叫び。モニターには秋吉館長の険しい顔。
「IKKCが動いた。理事会直属の執行部隊『ジャッジメント・イレブン』を、マスターズ推薦枠として参戦させる」
銀色の滑らかな装甲。顔のない一一名。彼らにはライセンスがない。彼ら自身が「法」だからだ。
「あいつら、適合検査とか言って、気に入らないマブイを論理的に消去してやがる……」
田所のバイザーが、広島支部の門下生が「一撃」で再起不能にされる映像を映し出す。物理的な損壊はない。だが、その格闘家のマブイ機関は、二度と熱を産まない「ただの鉄クズ」に書き換えられていた。
嵐は白いカードを握りしめた。ルールを作り、正しい空手を決定する一三人の賢者。
「……俺たちの『白』が、その理想にとって、どれだけ都合の悪いバグか。一三人の爺さんたちに、直接教えてやるよ」
広島の、潮騒が止まった。
宇品港を照らす月光は、執行者の到来を告げるように、冷たく、無機質な銀色に凍りついていた。




