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からくり空手  作者: 水前寺鯉太郎
第3部

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45/67

第45話:白いライセンス、白い拳

『からくり空手』

第45話:白いライセンス、白い拳


 広島支部の更衣室は、新品の木の匂いがした。

 佐藤が受け取ったばかりのカードを、蛍光灯にかざした。白い。ピカピカに白い。名前の横に「からくり空手ライセンス:白」という文字と、通算成績「0勝0敗」の数字が刻まれている。

 「佐野、見ろよ。これが俺たちのスタートだ」

 「……当たり前だ。新人は全員白から始まる」佐野が自分のカードを丁寧に道着のポケットに収めながら言った。「まず10勝で黄。30勝で緑に白線。段階を踏んで積み上げるのがセオリーだ」

 「100勝で黒、か。気が遠くなるな」

 「黒で終わりじゃない」佐野が続けた。「その先にブロンズ、銀、銀星、金、金星——そして最上位がプラチナだ。四天王に認可された者だけが持てる、世界に4枚しかない」

 佐藤が口笛を吹いた。「プラチナか。そんなもん、俺たちが生きてる間に見られるのかね」

 「さあな」

 廊下を、嵐が通りかかった。

 「あ、嵐さん!」佐藤が声をかけた。「嵐さんのライセンス、何色ですか? 世界のワールドカップ決勝まで行ったんだから、もう金とか金星とか——」

 嵐は足を止め、道着のポケットからカードを取り出した。

 白かった。

 「…………」

 佐藤が固まった。佐野が目を細めた。

 「去年はトーナメント形式だったからな」嵐は特に気にした様子もなく言った。「公式戦の勝利数は5勝だ。白のままだよ」

 「お、俺たちと同じじゃないですか!」

 「色は後からついてくる」嵐はカードをポケットに戻した。「大事なのは、その色に恥じない空手ができるかどうかだ」

 嵐が道場へ向かおうとした時、佐野が静かに問いかけた。

 「……嵐さん。最終的に、どこを目指しているんですか。プラチナですか」

 嵐の足が、一瞬だけ止まった。

 「……叔父さんのアンディは、プラチナだった。四天王認定を受けた、4人のうちの1人だ」

 それだけ言って、嵐は道場へ消えた。

 佐藤と佐野は、しばらく無言だった。

 「……つまり」佐藤がゆっくり言った。「嵐さんの目指してるところって——」

 「同じ場所に立つこと、だろう」佐野が答えた。「叔父上と」

 道場では、田所が新入生たちを並ばせていた。

 「いいか! お前たちの白いライセンス、今日から汚れ始める。汗と血と、負けた悔しさで染まって、初めて色がつく。——わかったか!」

 「「はい!」」

 佐藤は自分の白いカードを、もう一度見た。さっきまでは「ピカピカで嬉しい」と思っていた。今は少し、違う見え方がした。

 この白さは、これから何色に変わるのだろう。

 「佐藤」佐野が隣で言った。「まず10勝だ」

 「……おう」

 二人は道場へ飛び込んだ。田所の怒号が、広島の朝に響き渡った。

 監督席で、三浦が杖を突きながらその様子を見ていた。秋吉館長が隣に座った。

 「……いい顔をしていますね、あの二人」

 「ああ」秋吉が静かに頷いた。「嵐もあんな顔をしていた。第1話の頃は」

 三浦は微笑んだ。「……白から始まる。それが、空手というものです」

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