第44話:二つの龍、広島の風
『からくり空手』
第44話:二つの龍、広島の風
広島・宇品港のほど近く。オープンしたばかりの「秋吉会館・広島支部」の道場開きに、東京本部の一行が到着した。
「へぇ、なかなか立派な道場じゃねえか。賞金を全部注ぎ込んだだけのことはあるな」
東京本部の新大将・木村が、真新しい板間を踏みしめながら不敵に笑う。
「木村、感心してる暇があったら構えろ。今日は稽古じゃない、合戦だぞ」
副将の田所が日拳の防具を鳴らしながら続く。対する広島支部の監督席には、杖を突きながらも眼光鋭い三浦。そしてその隣に、純白の道着を纏い静かにマブイを研ぎ澄ませる安道 嵐の姿があった。
「三浦さん。今日は手加減なしで行かせてもらいますよ」
秋吉館長の声に、三浦が穏やかに頷いた。「……ええ。広島の若き芽が、本部の厚い壁にどこまで通じるか。楽しみですな」
先鋒戦。畑中(本部)対佐野(広島)。
東京本部の新鋭・畑中が、日拳特有の電光石火の突きで先制する。対する佐野は空手着の下に関節可動域を強化した特殊アーマー『ボルシチ・ギア』を纏い、静かに構えた。
「サンボの理、空手の舞台で証明させてもらいます」
佐野は畑中の突きを紙一重でかわし、日拳の面を掴んで空中で螺旋を描く投げへと転じた。分析力に基づいた最短距離の関節奪取——畑中の巨体がマットに沈む。
次鋒戦。遠野(本部)対佐藤(広島)。
「……若いの。ワシの不動を動かしてみせよ」
遠野が山のような圧を放つ中、佐藤はスラスター全開の日拳アーマーでリングを縦横無尽に跳ね回った。
「遠野さん! 重いだけが空手じゃないって、教えてやるよ!!」
しかし遠野は一歩も引かず、飛んでくる佐藤を正面から抱き留めた。「勢いだけでは、大地は穿てん」——重厚な掌打が、佐藤のスピードを物理的にシャットアウトした。
中堅から副将へ、試合は一進一退。本部の寺島による堅実な日拳が広島の空気を締め、副将戦では田所が元エースの貫禄を見せつける。
「嵐! さっさと出てこい! 俺の拳がお前を呼んでんだよ!!」
田所の咆哮が道場に響き渡り、ついに大将戦へ。木村(詠春拳)対安道 嵐(極真空手)。
「嵐。お前が三浦さんの道着を継いでから、一度も手合わせしてなかったな」
木村が「問路」の構えを取った。
「あぁ。木村さんの千手、今の俺にどこまで通じるか——試させてもらうぜ」
嵐が静かに構えた。新アーマー『クロオビ・絶空』が、広島の潮風に反応するように、透明感のある蒼い光を放ち始める。
「行くぞ!!」
二つの龍が、広島の地で激突した。2027年シーズン、秋吉会館が世界を再び震撼させるための——最高の産声だった。




