第43話:広島、胎動
『からくり空手』
第44話:広島、胎動
2027年4月。広島——。
瀬戸内海の穏やかな風が吹く街に、一際目を引く近代的な建物が完成した。『秋吉会館・広島支部』。壁面には、ワールドカップ決勝でビリーと拳を交えた三浦の勇姿と、新エースとしてその遺志を継いだ安道 嵐の巨大なパネルが掲げられている。
「……ここが、世界一の道場か。すげえな、佐野」
「……ああ。だが佐藤、浮かれるなよ。俺たちは『世界』を学びに来たんだ」
道場の門を叩いたのは、対照的な二人の少年だった。お調子者で天性のバネを持つ佐藤と、冷静沈着で武術の理論を重んじる佐野。広島の地で、新しい「からくり空手」の物語が始まろうとしていた。
道場の中では、東京本部から派遣された田所と遠野が、新入生たちを待ち構えていた。
「おらぁ! 広島のガキども、気合入れろ! 世界一の看板は、生半可な覚悟じゃ背負えねえぞ!」
田所の怒号が響く。日拳のアーマーを脱ぎ捨て、後輩を育てる「鬼」と化していた。
「……田所さん、少し静かに」遠野の重厚な存在感が、道場の空気を一変させる。「君たちが佐藤くんと佐野くんだね。私は遠野だ。よろしく」
「へへ、よろしくお願いしまっす! 俺、嵐さんみたいな『旋風』を吹かせたくて!」
「……私は、三浦先生が到達した『空』の理論を、からくりで再定義したいと考えています」
その頃、東京本部。嵐は新アーマー『クロオビ・絶空』の最終調整を行っていた。
「どうだ、木村さん。マブイの同期率は?」
「完璧だぜ、嵐。だがこのアーマーの出力は、お前の身体能力の限界を優に超えてる。一歩間違えれば、自分を壊すぞ」
木村がモニターを見つめながら言った。
「……分かってる。でも、三浦さんが見せたあの『景色』に辿り着くには、これくらいの翼が必要なんだ」
嵐の瞳には、昨年以上の静かな闘志が宿っていた。
広島支部の佐藤と佐野に、最初の試練が訪れた。
「おい、新人。挨拶代わりだ。その『からくり道着』を着て、俺に一撃入れてみろ」
田所がニヤリと笑い、日拳の構えを取った。
佐藤の瞬発力と、佐野の分析力。二人の新星が、広島の地から世界へ羽ばたくための第一歩。そしてそれを見守る、嵐の次なる戦い。
「よし。2027年シーズン、秋吉会館——全開で行くぞ!!」
広島の空に、新しい旋風の予感が漂っていた。




