表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくり空手  作者: 水前寺鯉太郎
第2部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/84

第38話:縦拳の衝撃、連環の壁

「副将戦――始めッ!!」

 木村の『隼Mk-II』が青白い放電と共に爆ぜた。迎え撃つ進藤は「波動立ち」のまま動かない。漆黒の面の裏、古い道場のステッカーが、システムに魂を売った男の「未練」を木村に突きつける。

 「お前の拳は、軽い」

 進藤の縦拳が音を置き去りにし、木村の鼻先を掠めた。

 【秋吉A 02 - 10 後藤1選抜】

 木村の連環拳が進藤の装甲に吸い込まれる。進藤の『黒鋼』は衝撃を吸収するたびに不吉な紫に発光し、蓄えられた熱量を拳に乗せ、木村を蹂躙していく。

 (規則正しいから、シンクロされる。なら――俺の空手は『不協和音ディソナンス』だ!)

 木村はあえて関節ボルトを緩めた。腕が振れるたびに金属が肉を削り、ボルトが皮膚を突き破って飛び出す凄惨な光景。打撃の間隔をミリ秒単位でずらし、解析不能なノイズの嵐を放つ。

 「なっ……蓄積回路が逆流を!? 捌ききれん……ッ!」

 不規則な振動に進藤のアーマーが悲鳴を上げ、継ぎ目から高圧の火炎が噴き出した。

 「全部食わせてやるよ。内臓システムがひっくり返るほど酷ぇ音だぜッ!!」

 木村の右拳が音の壁を突き破り、面の継ぎ目へ刺さった。

 ビシィィィィィィィィン!!

 鼓膜を焼くような金属の絶叫と共に、漆黒の面が粉砕された。

 【秋吉A 15 - 13 後藤1選抜】「――勝者、木村ッ!!!!」

 木村は膝をつき、風が触れるだけで激痛が走る右拳を見て狂おしく笑った。日本代表、三勝一分。秋吉会館の勝利が確定。だが、ドームの熱気は一瞬で氷点下へ凍りついた。

 

 貴賓席から後藤が立ち上がった。一歩踏み出すごとにアリーナの照明が順に消え、後藤の周囲に「闇」が収束していく。彼のアーマー『ゼロ・エントロピー』は、白い繊維が脈動する「繭」のように全身を覆っていた。

 「……三浦さん。あいつ、空気が消えていく……」

 嵐の戦慄。右腕のない三浦は、全細胞を石に変えるような静止で、ドーム中の湿気を一箇所に引き寄せていた。

 大将戦。「からくりの神」後藤、対、「空の化身」三浦。

 後藤がリング中央で立ち止まり、冷酷に告げた。

 「ここからは、計算の必要はありません。……どちらが世界に『存在』を許されるか。それだけの事だ」

 

 伝説の幕引きが、今、神話へと変わる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ