第36話:崩壊の調べ、岩の慟哭
「次鋒戦――始めッ!!」
染川の『デッド・レゾナンス』が超低周波を放ち、空間が歪む。遠野は『岩鉄』を大地に根付かせたが、染川の掌が触れた瞬間、金属の結合エネルギーをゼロにする「分子解体」が牙を剥いた。
キィィィィィィィィィィィン――。
遠野の誇りである重装甲が音もなく「砂」となって崩れ落ちる。さらに振動がマットを液状化させ、不動の門は足元から泥の海へと沈んでいった。
【秋吉A 02 - 10 後藤1選抜】
「終わりだ、遠野。お前という岩は、今日ここで砂漠に還る」
とどめの振動波。遠野は眼を閉じた。(固まるから砕かれる。止まるから壊されるのだ)
遠野はマブイを拡散させ、人工筋肉の微細振動を周囲の装甲粒子に同期。舞い散る砂を自らの右腕に「吸着の渦」として引き寄せた。
「……砂は、砕けぬッ!!」
遠野の右拳が正面衝突。砂の粒子が互いに衝突し、染川の振動を熱と乱反射へ変換し減衰させる。固い鋼では防げぬ波を、形なき砂のカーテンが飲み込んだ。
砂の質量を乗せた一撃が染川の核を貫く。染川は叫ぶことすらできず、自らの喉の振動膜を自壊させ、完全な静寂の中で崩れ落ちた。
【最終スコア:秋吉A 15 - 12 後藤1選抜】「勝者、遠野!!」
遠野は崖が崩れるように沈んだ。全身の毛細血管から赤い霧が噴き出し、砂と血が混ざり合う。「……へへ、嵐。砂になれば……どこへでも、行けるぜ」
意識を失う遠野と入れ替わりに、中堅・水野が立ち上がった。彼が通り過ぎたアリーナの手すりが、切断面すら見せずに「自重」で解けるように崩れ落ちた。
ポーン、と。木村の肩のボルトが一本、何もない床に転がった。
嵐の『昇龍』が、かつてない悲鳴を上げた。装甲のボルトが嵐の意思を裏切り、恐怖で解体したがるように内側から緩み始める。水野の視線が触れただけで、嵐の右腕の装甲がペリペリと皮を剥ぐように剥がれ落ちた。
「中堅戦。……解体を開始する」
安道 嵐、対、水野。
後藤は敗れた染川のデータを無造作に消去し、タブレットをタップした。「砂のデータ、回収完了。……嵐くん、次は『接合』の無意味さを教えましょう」
形あるものが、ただの「概念」へと解体される地獄の中堅戦。
安道 嵐の旋風は、この「崩壊」を繋ぎ止めることができるのか。




