34 雨は降っていないのに。約束の満月と、タカシの掌から落ちた涙
ダイフクは、大きな大きなお月様を庭先から見上げていた。
「ばあちゃん、お月様まん丸になったダニ」
ダイフクが、後ろの縁側を振り返ると、縁側には、誰も座っていない。
「......ばあちゃん」
誰もいない縁側を見つめ、ダイフクはポロポロと涙を流した。
「ばあちゃんの嘘つき!まん丸のお月様を一緒に見ようって約束したダニ」
お家の雨戸は固く閉じられ、家の中は真っ暗な状態だった。何が起きたのか理解したくなかった。
「......ばあちゃん、俺また1匹だ」
今日は、いつもと様子が違う感じがしていた。ばあちゃんが縁側から、クロッチと遊ぶダイフクを見つめていた。
ダイフクが縁側に振り返ると、いつもは手を振ってニコニコしながら見つめてくれていた。そんなばあちゃんを見るのが大好きだった。
クロッチと追っかけっこして、しっぽがボアボアになった。
そして、何時ものようにばあちゃんに振り返ると、ばあちゃんはお手手を胸に当てていた。
「......ばあちゃん?」
全てがスローモーションだった。
お手手を胸に当てたまま、ゆっくりと右に倒れていった。
ドンと音がして、クロッチが飛び上がった。
思わずダイフクがばあちゃんに駆け寄ると、額からいっぱい汗をかいていた。
『ごめんね ダイフク』
そのままばあちゃんは、目を閉じた。
クロッチは、リーダーに知らせてくるとお庭を飛び出していった。
「ばあちゃん、起きて」
おでこをゴッチンとするもばあちゃんはピクリとも動かなかった。
壁の外から人間が悲鳴を上げたので、思わず床下にダイフクは隠れた。
ピーポーピーポーとうるさいブーブーがやってきて、お庭にいっぱい知らない人間が入ってきた。ばあちゃんは、そのまま知らない人間達に連れていかれた。
呆然としたまま床下に隠れていると、お家にタカシがやってきた。何が起きたか分からず、とりあえずタカシの側に寄ってみた。
ちょうど良いタイミングでクロッチもリーダーもやってきた。
タカシのお目々は真っ赤になっていた。ダイフクに気がついたタカシは、そのままダイフクの側にしゃがんだ。
『母さんを一人にしないでくれてありがとう。だけど、母さんはココに戻って来れなくなった』
ダイフクの頭を撫でると、タカシは真っ赤な目を掌で隠し、肩を小さく震わせていた。
ポタリ、ポタリと水が落ちてきた。空を見上げても雨は降っていなかった。
「......ダイフク、ここともお別れする日が来たにゃ」
「リーダー?何が起きたダニ?なんでタカシは泣いているダニ?」
クロッチが、リーダーの側で大泣きしている。リーダーの自慢のしっぽは、いつもと違って下を向いていた。
『ちっこいの、母さん亡くなった』




