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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2021.3.
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161/2533

ふるーつさんど




「痛い」

「うそつけ」

「頭を足蹴りするなんてひどいよよよ」

「さっさと起きろよ」

「やだ」

「これを目にしてもんなとこが言えるか?」

「そ、それは」

「ほわ、もち、じゅわ~。だ」

「ほわわわわわ」

「しかも」

「ほわわわわわ」

「生クリーム」

「ほわわわわわ」

「チョコクリーム」

「ほわわわわわ」

「カスタード」

「ほわわわわわ」

「の三種の神器だ」

「ほわわわわわ」

「ほしいか?」

「ほわわわわわ」

「ほしいならさっさと起きろ」

「なあ。この地面さ、チョコレートを薄く削ったみたいだな。しかもストロベリー。ほんのり匂う恥じらいさ。うあー。手で触ろうとしても舌でなめようとしても消えるってどーゆーこと?」

「さっさと起きれば、これもこれもこれもぜーんぶおまえの好きな甘味は食える」

「…起きてもな―。奢ってくれるやつがなー」

「てめーの金で買って食え」

「いやー。自分てめーでも買うよ。買うけど。さ。やっぱ。人から奢ってもらった方が、なんか、もうひと塩、美味しさが増すっつーか」

「…奢ってやるよ。いつか」

「いつかって。来世って意味?」

「あほ」

「それとも、なにか人外生物になっちゃった?」

「さっさと起きろ」

「やだ」

「食いたいだろ。よだれの川ができてんぞ」

「心がえぐられるので君の顔は見ませんけど。見ませんけど」

「…起きて、さっさと会いに来い」

「…やだ。会えないもん」

「会える」

「会えない」

「会えるっつってんだろ」

「会ーえーまーせーんー」

「…あって。時間は経ってるだろうけど。これ持って、花見すんぞ」

「………」

「おい。川の水が増量してるぞ」

「………起きたくない」

「ああ。きれいだろうなあ。この景色に負けないくらい、桜吹雪が」

「……やーだー」





















 仄かに苦みのある、力強い花々の匂いが鼻腔を通じて喉を刺激する。

 すんなり持ち上がったはずの瞼がえらく重く感じた。

 常になくうるさい呼吸は跳ね返って来て煩わしいことこの上ない。




 起きたくないって言ったのにばかたれ。




 どこもかしこも痛くて、心中で毒づく。




 ばかたればかたればかたれ。

 ばか。




「今年は窓から眺めるだけにしとこうな。ふるーつさんども以下同文。お互いにしっかり歩けるようになったら、行こう」




 ばかたれ。
















(2021.3.16)




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