↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2021.3.
PR
162/2529

ついと




 死んでもゆるさねーから覚悟しとけよな。


 声量はどうだったか。

 声質はどうだったか。

 どんな顔をしていたか。


 おとだけしかのこっていなかった。











 荘厳たる雲海の上を足が進むままに歩くと、高さも知れぬ扉の前へと辿り着く。

 見ているだけで目が回りそうな模様が描かれていた扉を当然開けるものと言わんばかりに、腕が持ち上がり、手が扉を押し当てる。


 ほんのわずか。

 それだけで扉が動くことを知っている。

 扉のうちに入れば、こちらに戻ってこれないことも。


 ただしそれだけ。

 戻れずとも困らなかった。


 だからほんのわずか。

 手に腕にと言わず、足にも力を込めて扉を押そうとした、その刻。


 ついと、袖が掴まれて、顔を動かし、視線を斜め後ろへと向ける。


 驚愕すべきだろう。

 恐怖を抱くべきだろう。

 手首より先の手だけしかそこにはなかったのだから。


 けれど、不思議とどちらの感情も生まれなかった。

 生まれたのは、綿のような安堵だけだったのだ。



 









「しんでもゆるさねーからかくごしとけよといったよな?」

「閻魔様への借金がどんどん増えていくな」


 第一声がそれかと罵りたいのだろう。

 紅の色合いがさらに深まり、さらに鮮やかになり、覚えず、笑みがこぼれる。







(2021.3.23)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。