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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2021.2.
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157/2529

つるし雛見合い




 天国でもあり地獄でもあった。

 ここを訪れた友人から告げられた言葉を携えて今。

 私は鳥居を仰いだ。

 雲で覆われて頂が見えない、鳥居の連なりを。


 本気。

 戯れ。


 看板が立つ、二つある入口の片方には、多くの人が集まり、もう片方には、片手で数えられる人しかいなかった。

 きゃっきゃうふふと楽しみなされ。

 私を見ては小声で話すグループを横目に、颯爽と歩きだす。


 桃色に塗られた鳥居の上には、さまざまな色の和傘が開いた状態で、つるし雛が飾られる。

 この時期にしか見られない光景に、キャっきゃうふふとはしゃぎたくなる気持ちがよくわかったが、私はそんな観光気分でここを訪れたのではないのだと、影を濃くさせる。

 

 一方通行、かつ、先人たちの足が速いのだろう。

 誰の背も捉えられず、誰ともすれ違わない状態にそう憶測しながらも、ともすれば、浮き立ちそうになる心身に歯止めをかけんと、足取り速く、しかめ面で前へ前へと進む。


 確かに友人が言ったようにここは、天国でもあり、地獄でもある。


 所々に設けられている休憩所を目にすれば、一寸座って、お茶でも飲んで一息。この素晴らしい光景を楽しもうじゃないか。なんて、誘惑に駆られてしまう。


 そもそもこんなに足速に進まないで、ゆっくりと歩きながら、この光景を楽しみたいのに。

 どうして私はこんなに急いでいるのだろう。

 

 冷たい風に全身が身震いするたびに。

 日差しで降りる和傘の色が目をさすたびに。

 長く垂らされるつるし雛の愛らしさを目にするたびに。


 疑問がこぼこぼと小さな音を立てて浮上する。

 

(あーーー!!!)


 心中で叫んでは、頭を大きく振って駆けだした。

 

 だめだだめだだめだ。

 このままでは誘惑に駆られて、目的を果たせなくなってしまう。


 約束もあるが、それ以上に私自身が望んでいるのだから。




 








「はーい。おめでとうございまーす。見事足を止めずに登り切れた皆々様方には、お約束通り、弊社有望の社員たちとのお見合いをしていただきます。つるし雛の人形の数と同じ人数とお見合いしていきますので、サクサク行きますよー」


 無事に足を止めず頂上に着いた途端、思わず手に納めたくなるようなメジロがハイテンションでしゃべって、あれよあれよという間に席に座らされたかと思えば、眼前には好印象の象徴かよという人物が初めましてと言っては、すぐさま別の人物が眼前に現れた。


 違う意味で眼福だと思ったのは、最初だけ。

 好みでもそうでなくとも、一目見ていい印象しか持てそうになり人物が次から次へと高速で入れ替わるのだ。

 直感で選べと、メジロは言うけど、どんどん顔が同じに見えてきて選べない。

 ここも、天国でもあり地獄でもあった。




 ごめん、ばっちゃんじっちゃん。

 私まだ、結婚できそうにない。
















「来週。いいけど。見合いじゃなかったっけ?え?変な夢を見たから、止めとく?私がなんか忠告してたって?なによ。忘れたの。まー。夢の知らせかもしれないし、いいけど。じゃあ、私、行きたい所があるんだよね。すごくきれいな所だって。ふふふ。鳥居、和傘、つるし雛の三種の神器よー。恋愛運をたかめましょー!」

「………あ。うん。うん、ゆっくり、休みながらなら、行く」










(2021.2.27)




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