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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2021.2.
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153/2529

信託




 利発

 寛容

 臆病

 瞬発

 畏怖

 嫉妬

 持久

 慈愛

 愛嬌

 忍耐

 素直

 順応




 少年は十二の想いを注いだ粘土の置物を創り。

 一つのわがままを託した。

 たった一つ、己のわがままを。









 一月一日。

 或る一軒の家に、一人の少年が訪ねてきては今年の置物を差し出して、住民から去年の置物を受け取った。

 住民は深々と頭を下げて、少年の腕に抱えられた去年の置物を丁寧に触れてから、よろしくお願いしますと告げた。

 少年は軽く頭を下げてから、立ち去って行った。


 白の笠を深く被って顔を見せないようにして、白の着物に袴を身に着ける少年が持って来た置物を玄関に置き続ける限り、この家は安泰に過ごせられる。

 そう告げられてから、三百年続く、この家の恒例行事であった。


「しかし、少しずつちっちゃくなってくなあ」


 腕に抱く置物は、少年の温度が移ったのか、温かくて。

 不安が少しだけ、拭われる。

 

「家の終わりを告げているのかなあ」












 二月十一日。


「終わらせないさ」


 歩いて、歩いて、休んでは、また歩いて。

 今年の場所に辿り着いた少年は、相棒を地面に置いた。

 すると、置く寸前までしゃべっていた、相棒であるねずみの置物は黙ってしまった。


「ありがとう」


 ねずみの置物を何度も何度も優しく撫でた少年は、呪文を唱えた。

 ねずみの置物を土に還す呪文である。

 ねずみは小さく小さく形を縮ませていき、土へと還って行った。


「さてと、来年はとらだったね」


 よっこらせ。

 ねずみに叱られそうな掛け声を出しながら立ち上がった少年は地面を注視した。

 

 今はねずみの置物を創るのに適した土ではあるが、一年後にはどこぞに移動して所在が分からなくなるのだ。


 世界の意地悪。だろう。

 己が必要な土だけ毎年毎年飽きもせず移動させる。

 

「けれど。この星に在るだけ、感謝するべきだろうな」


 少年は姿なきねずみに深々と頭を下げて歩き出した。

 

 とらの置物を創る為の土を捜す為に。


「あの家だけは絶対に」







(2021.2.13)




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