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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2020.2.
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114/2515

カカオの護衛




 カカオの姫を守るのは、胡椒の護衛。

 強固な壁で守り続けるは、愚行の極みと位置付ける。


 ほどよく世界を見せなければならない。

 ほどよく交流を図らせなければならない。

 ただし、交際相手は努めて吟味してから会わせるべし。


 例えばそれが、

 我が最愛で最高の息子なれど、

 忖度してはいけないのである。






「カカオの姫が最も信頼している父上、いえ、胡椒の護衛の許しが出ないのであれば、致し方ありません。今は。諦めます」


 彼と相対する胡椒の護衛の心中を覗いてみよう。


(あああああ、我が息子ながら、表情立ち振る舞い仕草言葉温度湿度すべてが完璧だ。も~最高最高も~父と母からよくこんなにも立派な息子が生まれてくれたー)


 称賛の喝采で埋め尽くされている。


 同時に、


(あああああ、お相手がカカオの姫でなければ、私だってもっともっと素直に応援できたのに~。おまえと一緒になって幸せにならない人などいないから頑張れよと応援できたのに~)


 悔し滂沱の涙を流していた。


「潔い引き様感謝する……申し訳ないが。その手紙も受け取らん」

「はい」


(あああああ、悲しみを見せまいとする柔らかい笑顔がはーかーなーいー!む、胸が、くる、しい。いや、私より遥かに息子が苦しんでいるんだ。ああ、息子よ。父を許してくれとは言わん。だが、カカオの姫を諦めないでくれ!)


 バレンタインデー当日という事もあるのだろう。

 愛を告白する日。

 息子は自らの熱い想いをその文にしたためたのだ。


 渡したい!

 切実に!

 けれど、できない。


 息子だからこそ、さらにもっと厳しく。

 家族の情が入り込む余地など皆無。

 血の涙を流し、新たに生成された血が流れようと、この信念は変わらないのだ。











「お帰りになるのですか?」

「はい、姫君」


 ひどい夢を見て以降、人間不信に陥ったカカオの姫は甲冑を身に着けて暮らしていた。

 家の中でも、学校でも、どこへだって。

 金目当てで姫に近づく者もいたが、甲冑を身にまとってもなお、にじみ出る姫の魅力に気づく者はいるのだ。


 我が息子のように、


「あの、あの。この手紙を、読んで、もらえませんか?家に帰ってから」


 勇気を振り絞って書いて、手渡そうとしているのだろう。

 手を震わせているカカオの姫に、慈愛に満ちた笑みを向ける。


「はい。大切に読ませていただきます。それでは失礼いたします」


 交代時間が訪れたようだ。

 米の護衛と挨拶を交わしてから、踵を返した。








 帰ってから身支度を済ませて、早速カカオの姫からの手紙を読んだ胡椒の護衛。

 の口から血反吐が出た。


(む、息子の友人が気になるとな!)


 幸せになってほしいのである。

 カカオの姫にも。

 我が息子にも。


 だから、だから。私は、


 まずは、米、パッションフルーツ、バナナ、トウモロコシ、これら四人の護衛との会談を催す事にしたのであった。

 

 









【 カカオの木は強い直射日光を嫌うので、日差しが当たらない様に、幼木のうちはシェードツリーと呼ばれるバナナの木など、背の高い日陰を作る樹と混植して育てる。他にも、トウモロコシや米、パッションフルーツやコショウなどと一緒に育てることで、花の受粉を助ける昆虫を繁栄させ、強風から枝葉を守り、土壌に水分を保つなど、生態学的に作用し合う土地利用を行っている。

 一本の木で一年を通して数千の花が咲くが、その中で実を結ぶのは一%前後のカカオ。

 果肉を覆う硬い殻はウイルスやさまざまな食害から守るためと考えられていて、その色は赤・黄色・茶色さまざま】


(参考文献 : https://dandelionchocolate.jp/blogs/ourdays/393)









(2020.2.14)




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