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第五章 36話

 暗いトレル峡谷の街からほど近い位置に、急遽組まれたエリアの救出隊が居た。眼前には高い崖が横に広がり、その一角に鎮座する大人2,3人分の高さと分厚さがある大岩が一つ。


「ここじゃな?」

「ああ、これが地下通路に繋がる洞窟を塞ぐ大岩で間違いない。入口はここからさらに……あの奥だ」


 シーバーの視線は大岩の横、崖に入った人1人がなんとか通れそうな亀裂に向き、近づいていく。


「手紙にはこの亀裂の奥を土魔法で少し崩せば洞窟内への通路があると書かれていた。ラインバッハ、セバス」

「うむ」

「かしこまりました」


 事前に呼び出されたラインバッハの従魔、アサシンスネークと共に2人が亀裂の中に潜りこみ、他の者は道を開けた途端に盗賊に襲われることも想定して亀裂の外から注意をはらう。


「……『ブレイクロック』……」


 手で合図を出したラインバッハが魔法を唱え、亀裂の最奥が崩れると、人一人が潜れる位の穴がポッカリと空く。しかし、敵が出てくる様子はない。ラインバッハが中の様子を確かめると、後ろに声をかけた。


「誰もおらぬ!」

「よし、行くぞ!」


 ホスロウ達が先に入った2人に続き、その次に女子4名とレミリー、殿にシーバーの順で亀裂の先の入口へ侵入する。




「これは、広いな……」


 ホスロウの仲間の1人がそう漏らした言葉の通り、洞窟の内部はゆうに馬車数台が横に並べる幅がある。隠し通路として利用されていたため邪魔なものとして取り除かれているが、洞窟の端に残された天井から垂れ下がる細長い岩は、ここが鍾乳洞(しょうにゅうどう)である事を示している。


「向こうから風が来ているな」


 ホスロウが示した方向は洞窟の奥。鍾乳石を折って作られた道、そしてこれから進むべき道でもあった。


「少し待て、いま足を用意する」


 ここでラインバッハは、全身が刺のように逆立つウロコに覆われた半月型の体と尾を持つ、体長10メートル前後の従魔を2頭呼び出す。


「スパイクアーマーアルマジロか」

「乗り心地は悪いが、鈍重な見かけに反して馬より早く走る。急がせるので上手くウロコの間に跨り、ウロコに背を預けてくれ」


 騎乗して使う盾を持ち出したラインバッハの指示に従い、自力で飛べるホスロウ以外は2匹の大きなウロコの隙間に跨り、じっとりと湿った空気を切り裂いて奥へ。




 飛ぶような勢いで数分も進めば、洞窟の様相が自然の洞窟から人工的に作られたトンネルへ変わる。道幅や高さに変わりは無いが、それまでと違い地面や壁が整えられ、壁にはぼんやりと光を放つ魔法石が埋め込まれていて、少し薄暗いが明かりを追加する必要はない程度に明るかった。トンネルは緩やかに下へ向けて作られており、時折横の壁に外から空気を取り込む空気穴も見られる。


 トンネルの中では襲撃にも備えていたが、敵どころかアンデッドも現れない。ただひたすらに緩やかに歪曲したトンネルを駆け抜けていると、ここでカナンが声を上げた。


「この匂い……! この先から爆薬の匂いっす!!」


 この言葉で走り続けた2匹の足が止まり、周囲に緊張が走る。


「カナンちゃん、確かなのね?」

「間違いない、っす。昔、魔法道具職人の修行の一環として連れてかれた鉱山の発破と同じ匂いっす」

「竜馬の手紙にも敵の1人が火薬を所持していたとの報告があった。位置は掴めるか?」

「匂いが強くて、そこまでは……」

「そうか……今まで以上に注意して進むぞ。ラインバッハ」

「分かっておる。少し速度を落とそう」


 そこからしばらく馬の並足程度の速さで進むと、次第に犬人族のカナンだけでなく他の者の鼻にも火薬の匂いが届く。


「……どうやら、この先で使われたようですな」


 セバスの言葉通り、さらに進むと光が消え、火薬の残り香がする崩れたトンネルがあった。


 火薬は製造・保管・運用に専門的な知識が必要であり、扱いを誤れば事故の原因にもなる。


 この世界では土と火の魔法の方が手軽かつ、安全性と費用の面でも優れているとして、火薬が使用されるのはカナンが言ったような鉱山関係か軍隊ぐらい。それ以外ではあまり使われる事がない。


 それが使われ、救出隊は崩れたトンネルの前で立ち往生を余儀なくされた。


「音が聞こえず、土埃が収まっている所を見ると、我々が来るだいぶ前に崩されたか。……どこまで崩れているか分からんが、この通路が手がかりである以上、この土砂を取り除くのが確実だろう。

 まずは横穴を掘り避難路を確保。二次崩落に気をつけろ」


 険しい顔でシーバーが指示を出し、急遽(きゅうきょ)穴掘りが始まる。だが、ここで女子4人が思わぬ活躍を見せた。


「『ディグトルネード』!」


 ミシェルが放った『ブレイクロック』を合わせた竜巻は、一発につき前方7~10メートルの道を切り開く。支えを失った岩が多少崩れてくるが、離れた位置から魔法を放つミシェルは巻き込まれることがない。


 また、削りきれそうにない大岩にぶつかれば


「『クラック』ミヤビお願い!」

「任しとき! 『フレイムボム』!」


 ミシェルが内部にヒビを入れ、ミヤビが爆破。道の補強はラインバッハやホスロウの仲間と分担する事で魔力の消費を抑えつつ突き進む。


 またその間、カナンとリエラは避難用に掘られ、外まで通じた横穴から侵入しようとするアンデッドを倒し、他者の体力・魔力温存に貢献する。そして


「『ディグトルネード』……抜けた!」


 何度目か分からないほど放った魔法で崩れた土砂に穴が空き、崩れていないトンネルが覗ける。すぐ後ろに控えていたバラックとシーバーが前に出て敵がいない事を確認すると


「よくやってくれた! 20分ほど無駄にはしたが、君達が居なければこれよりさらに時間がかかっただろう。避難路を塞ぎ、全員をこちらへ集めてくれ。敵の追跡を再開するぞ!」

「「はい!」」


 シーバーは2人に伝令を頼み、避難路を守るために割いた人員を集めさせた。その後、彼らは崩落現場を抜けた先でポーションを飲むだけの小休憩を挟み、追跡を再開した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後の最後? 167話あたりから、一気に陳腐化し、もうこれ以上、読む気が失せてしまいました、、、 これまでは、楽しく読ませていただいておりましたが、残念です。
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