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怪盗は盗んだ宝と恋をする  作者: 野良猫氏
“神の涙”奪還編
37/42

南大陸

 俺達は眼下に広がる街並みを見た。

 網目状に水路が巡り、人々はゴンドラに乗って移動している。

 南大陸の水の都だ。


「じゃ、飛び降りて“水源の神子”を誘き出しますよ」


 リティアが楽しそうに言う。

 古代文明組が猛獣に見えて来た。


 ミーウ、ニューズ、リティア、ラクルス、そして百花繚乱(ひゃっかりょうらん)

 どうしよう。マジで南の人可哀想。


「怪我には気をつけろよー」

「お前も行くんだよ」

「へ?」

「残るのは運転手とローリエ、風月、ロネシェだけだ」


 諷詠(ふうえい)が諭すように言う。

 ついでに、しれっとパラライド国王を運転手呼ばわりするのはやめてもらおうか。

  

「ま、待てよ。“神子”9人で一斉に街を潰すのか」

「燃えるわね」

「リティア、落ち着け!」


 そんなことしたら、街の人は………いや、いいか。

 人はゴミみたいな。やめよう。また“死神”に怒られる。

 怒られないようにするなら、止めるべきでは?


「民間人は傷つけないようにしよう」


 皆んな不思議そうに俺を見る。

 リティアと繚乱、ローリエだけは普通の態度だった。

 まるで、俺がそう言うのを待っていたようだ。


「そういうことですので、街はある程度破壊して出てきた戦闘員を片っ端から壊しましょう」

「了解」


 ラクルスが呟くと、皆んな同意した。


「行きますよ!」


 皆んな一斉に飛び降りた。



 街に爆音が響き渡る。


「入れ!」


 ミーウが防御結界を張った。皆んな、その中に入る。

 残ったのは、リティア。


「【暴風雨(サンダーストーム)】!」


 街に雷が落ち始める。

 俺達の近くに落下した。


 どうやら、この大技は安定するまでに時間がかかり、安定するまでは自分の近くにも落雷することがあるらしい。

 危なかったな。


「よし、行くぞ!」


 目的は街を粉々にして“水源の神子”を誘き寄せて、その魔術を奪取すること。

 神からの許しを得ているとはいえ、最悪だな、これ。



 俺達はバラバラに行動することになった。

 当然のようにオルクリィと組まされた。


 ………誰もポンコツと組みたくなかったんだろうな。


「ドンマイ」

「わかったような顔してそんなこと言わないでください」


 しかし、南の魔術師はこんなに暴れている俺達を無視しすぎじゃないか?


「おかしいな」

「やはり、そう思いますか?」


 街は魔力で満ちているのに、魔術師の気配は一切ない。


「あ! そう言えば!!」

「?」


   ○○○


 リティアは急に立ち止まる。

 ミーウがドスンとその背中にぶつかった。


「どうした?」

「ど、どうしようミーウ?」

「ん?」

「そう言えば、変身のショックで忘れてたけど……“水源の神子”って“魔神の神子”に……」

「へ?」


 リティアは焦ったように顔を顰めた。


「だから! “水源の神子”はもうすでに」


 地面が震えた。

 水から巨大な怪物が現れる。


「この魔力……」


 神獣リヴァイアサンにも似たそれはけたたましい咆哮を上げた。


「“水源の神子”も竜にされていたのか!」


 リティアは魔力を込める。


「【雨のち晴れ】!」


 天気が雷雨から晴天へと変わる。

 ジリジリと日の光が濡れた地面を乾かす。


「ギャァアアア!!」

「逃すか!」


 ミーウは水面に結界を張る。

 “水源の神子”は潜ろうとしても潜れない。


「リティア!」

「うん!」


 リティアは風で“水源の神子”を宙へと吹き飛ばす。


「気づいて………!」


   ○○○


 ラクルスは足を止めた。

 黒イタチのニューズが後ろを振り向く。


『アレは!?』

「ちっ、そういうことかよ!」


 ニューズとラクルスは走り出す。

 しかし。


「がっ!?」

「その程度か、ライザ流?」


 ラクルスは脇腹を抑える。

 赤い液体が、服を汚していく。


 目の前には、珍獣がいた。

 

『西で見たことがある。あれは、象ではないか?』

「我は“水源の神子”に使える名も無き魔術師の一人だ」


 何故、この街に人がいないのか。

 ラクルスは改めて気配を探る。


 異形の気配だ。

 街中から漂うそれは、おそらく、住人達の成れの果て。

 そして、魔術師達は。


「お前には、理性が残っているんだな」

「理性? 面白いことを言う。ほとんどの魔術師に、理性というものはない。敵を殺すことが当然と考え、敵に傷つけられることが普通だと考える」


 象はパオンと鼻を高々と上げた。


「会話ができる、という意味の理性ならば、理性はあるさ。だが、話し合いができる、という意味ならばそれは否」


 ラクルスは剣を構える。

 長期戦はできない。


「殺す」

「〈水弾〉」


 鼻から水が発射される。

 ラクルスは全て叩き切って、象に接近した。


「ふん!」


 鼻に薙ぎ払われる。


「くそっ」

『どうした?』

「コイツのどこにも魔力の流れが見つからない」


 象の身体の作りは人間とは異なる。

 どこに魔力が流れているのかわからない。

 それがわからなければ、ライザ流は使えない。


「オレはただの剣士だ。魔術師を倒す方法なんて、それしかねぇのに」

『龍脈を斬るしかないか』

「そんなことしたら、味方も………」

『魔力をかき乱せば、場所がわかるか』

「多分な」

『ならば』



 魔術師達は気づき始める。


 策に嵌められたのは、自分達の方だったのだと。



   ○○○


 花鳥諷詠(かちょうふうえい)悪事千里(あくじせんり)は味方と合流しようと僅かな気配を追っていた。


「無理だな。この街、迷路みたいだ」

「南の魔術師も、化け物になっているのかしら」

「当然、そうだろうが」


 諷詠は足を止めた。


 目の前には、黒い狼が十頭ほどいた。子供もいる。

 今までは遊んでいたのだろうが、諷詠達に気づくとじっとこちらを見つめてきた。


「住民だった者だろう」

「は?」


 黒い狼は一斉に襲いかかって来た。

 しかし、千里に触れるとドロドロに溶けてしまう。


「流石、“猛毒の神子”」

「でも、魔力的攻撃は受けきれないわ」

「だろうな。どうしたものか……」


 二人は顔を上げる。

 狐が一匹。しかし、尻尾は九つある。


「まさか、こんなところで会うとはねぇ、イヒヒヒヒ」

「その笑い方……“幻影の神子”……? お前は、教会の魔術師じゃ」

「何を驚くことかね、教会はもう動き出したよ」

「っ!」

「北、東、西、そして、ここで迎え撃つ。つまり、今頃各地で戦争が起きてるわけさ。馬鹿だねぇ。指導者のいない各大陸は今頃」


 いひひひ、と狐は笑う。

 魔術師達にはあえて、理性を残させている。

 もしくは、己の運命を受け入れた者が理性を持っている。当然、化け物になることを拒んだ者もいるはずだろうから。


「まだ、救いはある」

「そうね」


 二人は頷く。


「何を言っているんだか」

「忘れてないか? お前は、誰か。僕達が、何者か」


   ○○○


 シャンカラは教会から来た化け物と戦っていた。

 ラビットは顔を顰めて、化け物を見る。


「古代文明を襲った“黒い化け物”みたいです………」

「これ、僕ら生き残れる?」


 リチャラがやって来た。

 地下街を守るために、戦闘員は化け物の注意を引いていた。


「大丈夫ですよ。きっと、皆んながなんとかしてくれます」


 化け物は増え、こちらの気力は減っていく。


(誰か、助けて)



《もう大丈夫》



 降り立ったのは、白い服を着た少女だった。


《はじめまして、私の名前はクリオネ》


「か、神様!?」


《貴方達がこの世界を穢すのなら、黙って見ているわけにもいきません》


 かつては、信仰が浅く、力が弱すぎた。

 だから、共に戦うことができなかった。


 だが、今は違う。


 神の数も、力も、あの頃とは比べ物にならない。


《共に戦いましょう。力無き者達を守るのが、戦える者の務めですから》


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