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怪盗は盗んだ宝と恋をする  作者: 野良猫氏
“神の涙”奪還編
21/42

中央大陸聖都

久々投稿……

今後の展開について思い悩んでおりました。

 港から魔導列車に乗り、一週間。


「ふわぁ、都会ってすごいなぁ!」


 リチャラは目を丸くした。

 港で現代的な服をいくつか買い込んだので、田舎者には見えないはずだ。

 ただでさえ、今は北が警戒されている。


 聖都侵入はかなりリスキーだ。


 魔導列車が停まる駅は、魔晶石から作られた電灯でいつも明るい。

 シャンカラ地下街にもこれはあるので、あまり珍しくはない。

 北の古代文明は余程進んでいたらしい。


「見ろよ、道が全部舗装されてるっ! あ、あれってガラスじゃね!? 北以外で初めて見たー」

「はしゃぐな。田舎者だってばれるぞ」

「はぁい」


 ラクルスはささっと辺りを見回す。

 やはり、教会の騎士が多く出歩いている。


「とりあえず、飯だな」



 気がかりなことがある。


 中央大陸に逃した“時の神子”のことだ。

 もしかしたら、生きているのではないか。どこかで、笑って……。


 “神子”は強い。

 もし、協力してくれるのなら嬉しい。

 もし、敵なら。


「昔の恩でも売りつけるか」

「ん?」


 ラクルスは首を横に振る。

 そして、近くの露店を指差した。


 スラムに住む人が出している粗末な露店だ。

 安いし、料理は味は薄いが不味くはない。田舎のシャンカラにはちょうどいい料理たさのはずだ。


「せっかくなら、中央の美味しいものが食べたいんだけど」

「聖都の店には魔力感知(ブザー)があるからな。危険だ」


 リチャラはため息をついて、露店に近づいた。


「お前らどこの大陸だ? 聞いたことない言葉だが」

「……南だよ。それより、このスープと牛肉の串を二人分」

「これは牛肉じゃねぇよ」


 露店の主は串料理を二本掴む。


「これは、人間の肉だ」


 リチャラは平然とそれを受け取る。


「はい、ラクルス」

「いただこう」


 一番驚いたのは店主だ。

 目を丸くしている。


「お前ら、人間を食うのか?」

「人間の肉を売るよりもマシな行いだろう」

「神に殺されるぞ」

「ははっ。そりゃいいや」


 リチャラは不敵に笑う。


「教会の崇める神なら喜んで。殺したいのは、僕の方だ」



「にしても、人間の肉だなんて倫理観バグってんなー」

「戦地ならまだしも………」


 ラクルスは口を閉ざす。


「中央大陸の食糧が足りていないんだろう」

「南がついてるのに?」

「米は東、肉と小麦は西、北からも多少の小麦を出していた。南は果物や野菜ばかりだからな」


 リチャラは黙って串を見た。


「つまり、僕らのせいってことでしょ」


 ラクルスは黙る。戦争とは、そういうものだ。


   ○○○


「出なさい。シスター・オルクリィ」

「司教様」

「買い出しを依頼したい」


 オルクリィは喉を引き攣らせる。

 今の街はかなりきな臭い。教会の勢力争いのせいで、民衆は飢えている。

 人肉の売買が始まり、高級レストランや教会支部を襲う者もいるとか。

 そんか中を修道女が歩いたらどうなるだろうか。


「これは罰だ。わかるな?」

「………はい。もちろん」


 ポンコツの命は、ここまでだろうか。



 街に出て、教会認定の雑貨屋で日用品をいくつか買うとオルクリィはため息をついた。


「また無駄遣い」


 すると、石に躓き、誰かにぶつかった。


「くそっ! 教会のシスターか。ちょうどいい」

「や、やめっ」

「見ろよ! シスターだぜ、神に祈ってもらおう!」



《力を使うのは、己を助けるためにあらず。誰かを助けるためにあるのです》



 ………わかっています、オルックル様。オルクリィは決して、人に力は使いません。

 だから、許してください。もう一度、笑ってください。

 もっと、もっと、楽しいお話がしたいのです。



 オルクリィが教会に入って以来、オルックルはまともに口を聞いてくれない。

 信託を下す以外に話しかけてくれない。

 昔はよく、つまらない話をしたのに。


「助けて、ください」

「やめろよ」


 聞き慣れた声がした。


「誰だ?」

「………そいつの知り合いだ」

「お、お前は“大地の神子”の御付き」

「なんだ、ごっこ遊びでもしてたのか?」

「余計なことを」


 オルクリィは口を抑える。

 ポンコツすぎて申し訳ない。


「すまないが、見逃してやってくれ」

「あ?」


 彼は男の肩を掴んだ。

 男は歯を食いしばって彼を睨む。そして、舌打ちすると逃げる素振りを見せた。

 彼はそれを鼻で笑うと男を離して逃してやった。


 彼の名は確か………。


「ルーセル。あの時も今もまた、助けられました」

「ラクルスだ」

「そう。やはり、あの時」

「気にしてない」


 オルクリィは顔を上げる。


「だが、責任は取ってもらう。俺たちに協力しろ。“時の神子”、オルクリィ」


   ○○○


 俺達は会議室に集まっていた。

 ウラウネはタバコを吸い、アリスはぬいぐるみで遊び、風月(ふうげつ)は近くにいる部下のオルトルをからかっている。

 ミーウとリティアは今日の天気とかいう、長年連れ添って話すことがなくなった夫婦みたいな会話をしている。


 そして、俺の隣にいるローリエは“大地の神子”百花繚乱(ひゃっかりょうらん)相手に顔を引き攣らせていた。


「あまり緊張すんなよ」

「で、でも、一応敵だったんですよ」

「千年も前のことじゃない」


 反省してないらしい。

 というか、昔は教会贔屓で“大天災”を捕まえたくせに今は敵対してんのかよ。

 ………まあ、教会が最高神だけを祭り上げたからだろうけどな。繚乱の神は“大地の神”なわけだし。


「おい、風月。そろそろ始めないか」


 アホロジーがチョコを片手に声をかける。

 風月は頷いた。


「実は、とある情報を入手しました」


 風月の顔は険しい。


「聖教会本部に“水源の神子”が訪れます。……タイミングが悪いことにね」

「タイミング?」


 繚乱が首を傾げる。


「聖教会本部にはラクルスとリチャラがいる」

「……………え?」


 繚乱は風月を静かに見据えた。


「あなた、また、私に黙ってラクルスを」

「この組織の参謀は(わたくし)です。ラクルスはいつから貴女の部下になったのでしょう」


 流石のシャンカラ魔術師も風月に口出しできない。

 今までもこれからも、仕事を斡旋し割り振って来たの風月で、それを受けるのは構成員の自由だった。

 それに、本部へ向かわせる危険な任務なら、あの二人が一番危険が少ない。


 それに、本部には………。


「“水源の神子”の目的は?」

「勢力を拡大させた北東西同盟の対策会議です」

「なら、やることは一つだな」

「私はパスするよ」


 ウラウネが即座に言う。

 アホロジー、オルトルも手を挙げた。


「風月、指示を」

「………(わたくし)とルシェル、ミーウ、リティア、神楽(かぐら)、アリス、ラビット、それから葉月(はつき)。この八人で乗り込む」

「たった八人で教会本部を制圧する気ですか?」


 鈴音(すずね)が目を丸くする。

 どうやら勘違いしているらしいな。


「安心しろ。制圧はしない」

「はい。目的はラクルス達の回収です」


 ラビットが淡々と言った。

 繚乱は険しい顔で考え込む。おそらく、どうするかを決めあぐねている。

 “水源の神子”に手を出せば、表向きに行っていた仲良しごっこはもうできない。

 しかし、ラクルスを放置するのは忍びない。


「私も行くわ」

「ならば、御付きの私も」

「十人ですか」


 風月は地図を見る。

 十人での移動はかなりの時間がいる。そんなことをしてもたもたしていたらラクルス達のタイミングに合わせられない。

 しかし、俺達には瞬間移動なん、て………。


 風月も同じことを考えたのか、鈴音の方を見る。


「“空間の神子”は大規模転移も可能ですか?」

「それは、まあ。“神子”ですし……」


 鈴音はハッと息を呑む。


「まさか、私を利用する気!? 魔力の消費が半端じゃないんですよ!」

「なら、私のを貸そう」

「私のも」


 ウラウネとローリエが言う。

 しかし、風月は首を横に振った。


「アリスさえ運べば問題ないです」

「あー、なるほど。了解」


 鈴音は首を傾げる。


「〈不思議之国(ワンダーランド)〉の使い方は、いろいろあるんだー」


 アリスは得意気にそう言った。

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