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決戦は誕生日…




朝食を済ませ、約束の時間を前に意気揚々と自室でカテリーナを迎える準備を整えていた私に、







「お誕生日おめでとう、ステラ」







天使の微笑み(エセスマイル)全開で陽の光を後光の様に背負った婚約者(宿敵)が紅い薔薇の花束を私に差し出しながら現れた…







*** *** ***






真紅の薔薇の花束にも見劣りしないって本当に美形は恐ろしい…


美少年が美少女に花束を渡すなんて見た目は少女マンガのワンシーンの様に可愛らしい光景に見えるだろうけど、何故だろうか…嫌がらせを受けているのと同じ気がするのは…


「…ステラさま」


私の後ろでそわそわとしていた侍女のアンナが声を掛ける。


(さっさと)受け取れ、ということだろう。


私は烏がいつも私にするような苦い顔を心の中に押し隠しながら、淑女の微笑みでライオネルから「ありがとうございます」と花束を受け取り、イヤなものを放り投げるかの如く速攻でアンナに花束を渡す。


そんな分かりやすい私の態度に、


「薔薇は好きじゃなかったかな?」


と微笑みながら問いかけてくるライオネルに、


「まさか。ノースエッド様から戴くもので好みではないものなどありませんわ」


そうにっこりと返し、


「…たとえノースエッド様が薔薇の()()()()()()になっていたとしても」


とライオネルの瞳を真っ直ぐに見つめながら告げた。


するとライオネルの口の端が僅かに笑みを深め、


「気に入らなかったのなら直ぐに別のものを用意するよ」


とまるで恋人を宥める様な言葉を吐いてきて、私は背筋を駆け巡る冷たいむず痒さに耐えながら、彼を応接間へと案内する。


(…そうよね~…腐っても婚約者…ステラの誕生日に呼ばれない訳無かったわよね~…)


カテリーナの事でライオネルの来訪を失念していた私はもっと気を引き締めねばと己を叱咤する。


(…しっかし…この子…本当に底意地が悪いわ)


ちらりとアンナの持つ花束を見つめ、そして直ぐに前を向く。


渡された薔薇の本数は()()本。





花言葉は――――――――『絶望的な愛』





(仮にも婚約者にそんな意味合いになる薔薇の花束渡すなんて何考えてんのかしら…)


私は密かに溜め息を吐く。


…と、


「…あの本数になったのには訳があるんだよ」


「!」


ふと耳元で聞こえた声に驚いて横を向いた私の目の前にライオネルが笑顔で立っていた。


(ちょっ……気配!!)


とまるで烏の様な気配の消し方に驚いている私を余所にライオネルは続ける。


「実は君を部屋に迎えに行く前に君の母上とソフィア嬢に少し、お詫びとお祝いの意味で薔薇を渡してしまったんだ」


「…お母様とお姉様に?」


どういうことかと問う私に、


「ほら、あのお茶会の件で君の母上にお叱りを受けてね、そのお詫びに少し薔薇を差し上げたんだ。ソフィア嬢には王子妃に決まったお祝いとしてね」


とライオネルは笑う。


(…仮にも婚約者へのプレゼントからお詫びとお祝いを渡すか、この男…)


私は呆れながら何事も無かったかのように再び歩き出す。


そうして、もう少しで応接間に着くという時…


「ステラ」


「お姉さま!」


応接間の扉の前に天使のような美少女が微笑みながら立っていた。


(あぁ~…癒されるぅ)


その神々しさにライオネルに会って盛り下がっていた気分が急浮上するのを全身で感じる。


もうソフィアの笑顔には浄化作用があると最近本気で思う。


デレデレとソフィアに近づいた私の髪を優しく撫でながら、


「ライオネル様とステラは仲良しね」


と心外極まりない言葉を言われても、


「はい、お姉さま」


と心からの笑顔で返せる。


―――『仲良し』とか内容は重要じゃないの、ソフィアが可愛いくて笑ってくれるのが一番重要。


そうして私が近くでソフィアを思う存分愛でていると…


「ソフィア嬢もフェリクス様と仲睦まじいと聞いているよ。王子妃教育も立派にこなしていると父上が言っていた」


…耳から要らん雑音が聞こえてきた。


思わず舌打ちをしそうになったのを抑えていたら、脳内で鍛練用のフォークをライオネルの額に投げつける、なんて危ない想像を巡らせてしまった。


「な、仲睦まじいだなんて…」


そんな…とソフィアは頬を高潮させ、


「…殿下は…お優しい方、ですから…」


と恥ずかし気に微笑む。


もう…その姿の何て可愛さ…その原因は気に食わないけど、でも本当にうちのソフィア世界一なんだけど。


「お姉さま、可愛い」


思わず声に出した言葉に、ソフィアがより真っ赤になり、


「す、ステラまで…もう…からかわないで」


と唇を尖らせた。


(…あぁ~もぉ~…拗ねても可愛いとか…もう…)


私はソフィアの腰に抱きつき、ふふふ~と甘える。


それをライオネルが無言の笑顔で見つめているのがどういう事かとか知ったことか。


「お姉さま、今日は一緒にケーキを食べましょう?お姉さまの好きなお茶も用意したの。ねぇ、良いでしょう?」


約束!と私が強調すると、


「ふふ…わかったわ、ステラ」


ソフィアは優しく微笑んだ。


その笑顔で気を良くした私は、応接間の扉を開けると、後ろに居たライオネルを促し、アンナにソフィアの好きなお茶を用意してもらえるよう頼む。


「…ノースエッド様のお飲み物は如何致しますか?」


とアンナが訊いてきたが、私は、


「皆同じ茶葉で大丈夫よ」


と笑って返す。


何人たりともソフィアが好きなお茶に文句は言わせん。


何か言いたげな顔で下がったアンナを見送り、私はソフィアの隣に座る。


「…改めて、お誕生日おめでとう、ステラ嬢」


私たちの対面に座ったライオネルがそう言うと、私は淑女(営業)スマイルで、


「ありがとうございます」


と返す。


ライオネルのお陰で淑女(この)スマイルが研かれて有難い。


それだけは感謝してる。


だからもう帰れ。…とか言えないのが本当に辛い。


そう思いながらエセスマイル合戦を繰り広げていた時、応接間の扉をノックする音と共に、


「失礼致します」


とセバスチャンが扉を開いた。


そして、


「お嬢様方、アバン公爵家令嬢、ロクサーヌ様、カテリーナ様がご到着されました」


と言うと後ろにいた二人を応接間へと促す。


私とソフィア、そしてライオネルは二人を迎える為立ち上がる。


「お誕生日おめでとうございます、ステラさん。ノースエッド様、ご機嫌よう」


「ありがとうございます」


「ようこそいらっしゃいました。ロクサーヌ様」


「ご機嫌よう、ロクサーヌ嬢」


そう言いながら近づくロクサーヌは今日も見事な生地の赤いワンピースを翻しながら優雅に私たちに応える。


そんな華麗な彼女の影に隠れるようにカテリーナの眼鏡が反射しているのが見え、


(…来たわね、カテリーナ…今日はタダでは帰さないわ…)


と穏やかな空気の中、私は一人カテリーナへと標準を合わせ、彼女の()()を暴くべく、これからの計画を思い描いて気を引き締めた。


―――が、


「…そちらに居るのは…ロクサーヌ嬢の姉妹の…カテリーナ嬢、かな?」


そう言いながらライオネルがロクサーヌの後ろの方へと微笑みかけ、





「~~~~~~!!!!!!??????」





…その微笑みを受けた本人は、何とも形容しがたい、まぁ、確実に淑女とは程遠い声を上げ、見事に卒倒した。


「きゃあ!?カテリーナ!?」

「カテリーナ様!」


ロクサーヌとソフィアが青ざめながら慌ててカテリーナに近づくのを見て、


(――あ、出遅れた)


いっけね、と私も心配する振りをして倒れる彼女へと近づき、私は驚愕した。


…そこには鼻血を出しながら、


「…て、転生、…まじ…サイッコー…」


と宙を見つめニヤけているカテリーナがいた。






カテリーナ=()()()確定(どうしよう全然嬉しくない)


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