8章 錬金国家の貴族142 -何故店の名を言わなかったのかを理解した3人-
「いつものあいつなら、何だかんだ理由つけてすぐに雇うと思うんだが…。俺の料理の腕を数日でまともにしたしな」
「…彼女、とある店で働いてると言っていたわよね?」
「ああ、言ってたな」
「普通は店の宣伝になるから、店の名前は出すはずよ。何故出さなかったのかしら?」
「言われてみればそうだね。貴族の関係者相手なら尚更。そもそも豆腐や味噌の事も知っていたようだし、普通に調理してたような…」
「それにパンを焼く魔道具をあいつが持ってる事も知ってたし…あっ!」
「いきなりどうしたの⁉︎」
「全部分かったわ!」
「何がだ?」
「私達が追い返された理由、彼女が店の名前を出さなかった理由、とにかく今回の事に関する全てよ!」
「…そういう事か」
俺も全てを理解した。あいつが『考えておく』と言った理由もそれなら納得いく。
「分からないのは僕だけ?」
「まず、俺達が追い返された理由だ。あの日の講師がセッテだったとする。女王陛下は俺達が料理を習う目的に気がついて、追い返したんじゃないか?」
「…それなら納得いくね」
「ラディーチェは私達に情報を意図的に隠していた。彼と無関係を装う為に」
店というのはセッテがオーナーをやってるあの店だろう。厨房の中は見えないし向こうもこちらの事は見た事がないから初対面なのは間違いないが。
「もうそろそろ部屋に来る頃だし、事情を聞くとしましょうか」
扉が空いて彼が部屋の中に入ってきた。




