第30話 始めるぞハーレム会議を!
時は夏。
なじみ、紀律、走琉、ぱなえ、玖詩、そして沙奏。
俺のハーレムメンバーもついに六人となり、以前にも増して賑やかになっていた。
そして今日——。
俺たちは、燦々と照りつける太陽の下、人気の大型プール施設へとやって来ている!
先に着替えを済ませた俺は、水着姿でプールエリアの入口に立ち、六人が更衣室から出てくるのを待っていた。
やがて扉が開き、最初に走琉と紀律が姿を現す。
「第二回ハーレム会議——inサンライズウォーターパークを開催する!」
記念すべき開会宣言が、青空の下へ高らかに響き渡った。
「わーい! プールだー! 今日は泳ぐぞー!」
しかし、走琉は俺の言葉など聞いていない。
更衣室から飛び出すと、そのままプールサイドを駆けていった。
「長木仁さん、プールサイドは走らない! それと準備運動も忘れないで!」
紀律も慌てて、そのあとを追っていく。
「…………あれ」
まだ二人の水着姿をじっくり見ていないのだが……まあ、いい。
あとで存分に見させてもらおう。
再び更衣室の扉が開き、今度はぱなえと沙奏が並んで出てきた。
「気を取り直して、もう一度——って…………っ!」
その瞬間、入口付近の空気が変わった。
「おい、見ろよ……あの二人、スタイルやばくない?」
「モデルの撮影か何かじゃないのか……?」
周囲にいた男たちの視線が、一斉に二人へ集中する。
それも無理はない。
二人とも、誰もが目を奪われるほどの抜群のプロポーション。
しかも今日は、その魅力を惜しげもなくさらすビキニ姿だ。
ぱなえは派手で華やかに。
沙奏は大人びて妖艶に。
それぞれ違った方向から、男の本能を容赦なく刺激してくる。
「沙奏さんの水着姿、マジでエロすぎ!」
「ふふっ。ぱなえちゃんは、とっても可愛いわよ」
たまらん……。
だが抑えろ、俺。
ここは公共の場だぞ。
「ぱなえ! 沙奏!」
二人へ近づこうとする。
しかし、見惚れて足を止めた人々に進路を塞がれ、思うように前へ進めない。
俺の声も周囲のざわめきにかき消され、二人は楽しそうに話しながらプールへ向かっていった。
「待ってくれ! ぱなえ、沙奏!」
必死に叫んでも、二人は振り返らない。
ぱなえたちに気を取られている間に、なじみと玖詩も更衣室から出てきていたらしい。
気づけば、少し離れたプールサイドで、玖詩がなじみに日焼け止めを塗っていた。
「なじみ! 日焼け止めを塗ってあげるね!」
「ちょ、ちょっと! 玖詩ちゃん、どこ触ってるの!?」
「えへへ。逃げると変なところまで触っちゃうかもしれないから、大人しくして」
「いやっ、もう! そんなところ、日焼けするわけないでしょ!」
水着姿の美少女二人が絡み合い、何やらとんでもない光景になっている。
「…………」
おかしい。
第二回ハーレム会議のはずなのに——。
誰一人として、俺の話を聞いていない。
「ちょっと、槍田くん! 突っ立ってないで玖詩ちゃんをどうにかして!」
ようやく俺に声をかけてくれたと思ったら、助けてほしかっただけらしい。
「はぁ……はぁ……なじみ、可愛いよぉ……」
やばい。玖詩の目から、完全に理性の光が消えている。
日焼け止めを塗るという当初の目的など忘れ、なじみの身体をただ弄っているだけだ。
このままでは、なじみが傷物になりかねん。
「玖詩、落ち着け! これ以上はなじみが壊れてしまう!」
「離せっ! 触んな! 発情害虫!」
相変わらず、俺への当たりは強い。
なんとか暴れる玖詩をなじみから引き剥がし、そのまま押さえ込む。
「はぁ……はぁ……助かったぁ……ありがとう、槍田くん」
なじみは目尻にうっすらと涙を浮かべ、乱れた呼吸を整える。
近くにあったタオルを手に取ると、慌てて自分の身体を覆った。
「…………」
火照った頬。
乱れたオレンジ色の髪。
そして、慌てて身体を覆ったタオルの隙間からは、可愛らしい水着と白い肌が覗いている。
……やけに色っぽいな。
「なじみ……」
「な、何? 槍田くん」
「俺もなじみに日焼け止めを塗っていいか……?」
「いいわけないでしょ!」
はっ!
危ない。なじみの魅力にやられて、俺まで玖詩と同じ末路を辿るところだった。
「いや、しかし……これは、なじみの水着姿が魅力的すぎるのも悪い。人を狂わせる何かがある」
「アンタ、話が分かるじゃない」
俺と玖詩はその場で固い握手を交わした。
「槍田くんと関わるようになってから、玖詩ちゃんまでおかしくなっちゃったよ……」
なじみは呆れたように頭を抱えている。
「それはそうと、玖詩も水着よく似合ってるじゃないか」
「……なっ!?」
「玖詩の可愛さが、いつも以上に際立ってるぞ」
「ふ、ふんっ! 別にアンタに褒められても嬉しくないから!」
健康的な白い肌に、黄色を基調としたフリル付きの水着。
金髪のツインテールも、普段とは違う青色のリボンできっちりと結ばれている。
こうして改めて見ると——。
やはり可愛いな、玖詩。
「玖詩……俺が日焼け止め塗っていいか?」
「はぁ!? バカじゃないの! そんなのダメに決まって——」
「槍田くんもたまには良いこと言うじゃない!」
「……え?」
なじみがタオルを肩へかけ、すっと立ち上がった。
「さっきは玖詩ちゃんに……たっっっぷり塗ってもらったからね。今度は私が塗ってあげる」
「な、なじみ……?」
玖詩の顔から、さっと血の気が引いた。
一歩。
二歩。
ゆっくりと後ずさり、その場から逃げようとする。
「槍田くん! 早く玖詩ちゃんを捕まえて!」
「任せろ!」
逃走を試みた玖詩だったが、俺はすぐさま背後から抱き止めた。
「離して! どこ触ってんの! 発情害虫、死ねぇ!」
「玖詩ちゃん……あんまり動くと、変なところまで触っちゃうかもしれないから……大人しく、ね?」
なじみは満面の笑みを浮かべたまま、手のひらへ日焼け止めを垂らした。
「な、なじみ……さっきのは謝るから……。私、全然焼けない体質なの!」
「問答無用っ!」
「な、なじみ……! ら、らめえぇぇぇっ!」
玖詩の悲鳴が、夏空の下へ響き渡った。
しばらくして——。
全身にたっぷりと日焼け止めを塗られた玖詩は、目から光を失い、その場へぐったりと横たわっていた。
「もう……駄目ぇ……壊れちゃうよぉ、なじみぃ……」
それだけ言い残し、力尽きる。
「…………」
駄目だ。
完全に魂が抜けている。
「それにしても、玖詩があんなふうにはしゃぐなんてな」
「うん……ほんと、槍田くんと関わるようになってから玖詩ちゃん変わったよ」
「俺は何もしてないぞ」
「前の玖詩ちゃんって、もっと荒れてたから。テニス部でも誰にでも噛みつく勢いだったし」
なじみは横たわる玖詩のそばに腰を下ろし、その頭を優しく撫でる。
「でも……最近は少し丸くなったっていうか。なんだか楽しそう」
「その反動で、なじみへの愛が爆発しているけどな」
「あはは……まあね」
なじみは困ったように笑いながらも、玖詩の髪を撫で続けた。
「でも、なんだか手のかかる妹みたいで可愛いよ」
そう言って微笑むなじみの姿は、優しさに満ち溢れていた。
「なじみは絶対、いい母親になるな」
「いい母親って……なによ、いきなり」
「それになじみの子どもなら、きっと最高に可愛いんだろうな」
「…………」
なじみがぴたりと動きを止めた。
「……それって……もしかして槍田くんとの子って……こと?」
なじみが、聞き取れないほどの小声で呟く。
「何か言ったか、なじみ?」
「う、うるさいっ! なんでもないから!」
なじみにぐいぐいと背中を押される。
「玖詩ちゃんは私に任せて、槍田くんはみんなと遊んできたら……?」
「お、おう……」
振り返ると、なじみはタオルを頭から深く被り、赤く染まった顔を必死に隠していた。




