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第12話 ハーレム会議を始める!

「それでは——記念すべき第一回ハーレム会議を始める!」


 放課後の教室。


 俺は机を囲む三人の美少女を前に、高らかに宣言した。


「…………」

「…………」

「おおー!」


 笑顔で拍手をしてくれたのは、走琉だけだった。


「槍田くん、ちょっと待ってよ。なんで私まで参加することになってるの?」

「奇遇ね、同窓さん。私もまったく同じことを考えていたわ」


 なじみと紀律から、冷たい視線が突き刺さる。


「何を言っている。二人とも俺のハーレムメンバーなんだから、参加するのは当然だろ」

「だから違うって何回言えば分かるの!」

「私も了承した覚えはないわよ」

「ボクは入ったよ!」

「走琉はハーレムの意味分かってないだけでしょ?」


 なじみの言葉に、走琉は不思議そうに首を傾げる。


「でも、なんか楽しそうじゃん!」

「さすが走琉だ。ハーレムメンバーとしての自覚がある」

「えへへ」

「褒められて喜ばないで! っていうか、ハーレム会議って何よ!」


 しかし、今日も三人とも最高に可愛いな。


 俺は満足しながら、改めて一人ずつ顔を見渡した。


「このハーレム会議では、今後行われるであろうおせっせカーニバルについて話し合う」

「……私、帰っていいかしら。明日の予習をしなきゃ」


 紀律が椅子を引き、席を立つ。


「待ってくれ!」


 俺は慌てて、その前へ立ちはだかった。


「お願いだ、紀律。行かないでくれ。俺には紀律が必要なんだ」

「…………」


 紀律の動きが止まる。


「別に……いいじゃない。長木仁さんが相手してくれるのでしょう? 私がいなくても」

「それは絶対に駄目だ」

「……どうしてよ」

「俺は紀律のことも好きだからだ」

「…………っ!」


 紀律の頬がわずかに赤くなる。


「頭がよくて、努力家で、負けず嫌いで。それに美少女で、最高に可愛い」

「な、何を急に言ってるのよ……!」

「俺は今、こうして紀律と話しているだけでも、どうしようもなく幸せなんだ」

「幸せって……そんな大袈裟な」

「大袈裟でもなんでもない。紀律は俺にとって、誰かの代わりになるような女の子じゃない」

「…………っ!」


 紀律の顔が、みるみる赤く染まっていく。


「だから、俺と一緒にいてくれないか?」

「…………」


 紀律はしばらく俺を見つめたあと、ぷいっと顔を逸らす。


「……仕方ないわね」


 そして、そそくさと元の席へ戻った。


「話くらいなら、聞いてあげてもいいわよ」

「ありがとう、紀律!」


 紀律は返事をせず、赤くなった顔を隠すように眼鏡を押し上げた。


 そんな紀律を横目に、なじみが走琉へ顔を向ける。


「走琉……その、『おせっせ』が何か分かってるの?」

「えっと、確かすごく体力を使う運動でしょ?」

「やっぱり分かってないんだ……」


 なじみは頬を赤らめながら周囲を確認すると、走琉の耳元へ顔を寄せた。


「いい? おせっせっていうのは、その……えっちなことなの」

「えっちなこと?」

「そう。槍田くんは走琉を家に連れ込んで、えっちなことをしたいって言ってるの!」

「へえー、そうだったんだ」


 走琉は納得したように頷く。


 そして、すぐに俺の方を向いた。


「ねえねえ、伊阪利くん!」

「なんだ?」

「伊阪利くんは、ボクとえっちなことしたいの?」

「ああ、もちろんだ!」

「即答しないでよ!」


 なじみのツッコミをよそに、走琉は自分の身体へ視線を落とした。


「そっか……」


 少しだけ考えてから、再び俺を見る。


「ボクは……別に嫌じゃないよ」

「え?」

「伊阪利くんになら、そういう目で見られても嫌じゃない。むしろ……ちょっと嬉しいかも」

「ちょ、ちょっと! 走琉!」


 なじみが慌てて声を上げる。


「なじみちゃんは嫌なの?」


 走琉は不思議そうに首を傾げた。


「伊阪利くんのこと、嫌い?」

「嫌い……ってわけじゃないけど。でも普通、恋愛って一対一でするものでしょ?」

「そうなのかな?」


 走琉は少し考えてから、にっと笑った。


「ボク、そういうのよく分かんないけど……好きな人と一緒にいられるなら、それでいいかな」

「そんな……私の考えがおかしいの?」

「いや、なじみはおかしくなんかない」


 俺は二人の話に割って入った。


「みんなそれぞれ考え方が違って当然だ。だから、俺だって無理強いするつもりはない」


 俺は三人を真っ直ぐ見渡す。


「ただ、これだけは約束する」

「……何?」


 なじみが俺を見る。


「俺と一緒にいることを選んでくれた女の子は、俺の全力を懸けて全員幸せにする」

「…………」

「途中で誰か一人だけを選んで、ほかの子を放り出したりもしない。誰か一人に我慢をさせて成立するようなハーレムを、俺は作るつもりはない」


 これは、冗談でも勢いでもない。


 俺は本気で、そう思っている。


「私はまだ、あなたのハーレムに入るなんて言ってないわよ」

「それでもいい。俺は紀律がその気になるまで何があろうと待ち続ける」

「……そう」


 紀律はそう呟くと、ほんの少しだけ頬を緩めた。


「ボクはいいよ! 伊阪利くんと一緒なら楽しそうだし!」

「走琉、ありがとう!」

「うん!」


 走琉は迷いなく笑った。


「…………」


 なじみはそんな俺たちを見ながら、何やら考え込んでいる。


「まあ……この三人なら、私も——」


 なじみが小さく呟きかけた——そのときだった。


「いざっち、なんか盛り上がってんじゃん」


 ん? いざっち……?


 俺のことか?


 聞き慣れない声に振り返る。


 いつの間にか、教室の入り口に一人の女子生徒が立っていた。


 腰まで届く、緩くウェーブのかかった暗めの金髪。


 こんがりと焼けた褐色の肌。


 制服は大胆に着崩され、爪には派手なネイルが施されている。髪にも色とりどりのヘアピンが飾られていた。


 見た目は、まさしく絵に描いたようなギャルだ。


「ちーっす! アタシ、同クラの萬地《まんじ》ぱなえ! よろしくね、いざっち!」


 そう言いながら、ぱなえはずいっと俺との距離を詰めてきた。


「へぇー。これが噂のいざっちかぁ」

「ち、近いな……!」

「ふーん……」


 ぱなえは俺の顔をまじまじと眺める。


「よく見たらビジュも悪くないじゃん。合格かな」

「何の合格だ?」


 ぱなえはにっと笑った。


「いざっち、クラスの子たち集めてセフレにしてるんでしょ?」

「セ、セフレ……だと!?」


 大事なハーレムメンバーになんて言い方をするんだ!


 ぱなえは俺の顔を覗き込むように、さらに一歩距離を詰めてくる。


「アタシも志願しちゃおっかな?」

「…………え?」

「だからぁ——」


 ぱなえは楽しそうに口元を緩めた。


「アタシが、いざっちのセフレになってやってもいいって言ってんの」

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