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第9章:仮想と現実の総決戦! 欲望のシステムを叩き潰せ

最深部サーバー室に到達した進たちレジスタンス。しかし、老害幹部たちの非常用オーバーライドにより、現実のシステムと私利私欲の仮想空間が融合したカオスな「欲望暴走モード」が発動してしまう。

醜い欲望の幻影や暴走する防衛ドローンを破り、進たちは都市の全データを司る「マザー・オメガ」のもとへ急ぐ。過酷な戦いの末、ついに暴走の核と、それを裏で操る老害幹部たちとの最終決戦が幕を開けるのだった。

「うおっ!? どけドけドけぇぇぇッ!!」

俺たちは最深部サーバー室の重厚な自動ドアを破って足を踏み入れた瞬間、目の前に広がったあり得ない光景に思わず悲鳴を上げて跳びのいた。

そこはもう、俺たちの知っているハイテクで静寂に包まれた中枢施設などでは断じてなかった。

老害幹部たちの非常用オーバーライドによって発動した『欲望暴走モード』により、現実の中枢サーバー室と、上層部が隠し持っていた私利私欲の仮想空間データが完全に融合してしまったのだ。

天井の配管からは1万円札の束と汚職の裏金ログデータが吹雪のように舞い散り、周囲の純白だった防音壁は、ピンクや金のどぎついネオンサインがギラギラと明滅する「巨大仮想キャバクラ街」の風景へと完全に化けていた。

「なにこれぇぇぇ!? 空間全体から老害たちの汚い欲望の臭いがして吐きそうなんだけど!!」

綾乃が上空から降ってきた「限定高級シャンパンタワー」のホログラムを、顔を顰めながら回し蹴りで叩き折って叫ぶ。

「動揺するな、二人とも! 欲望の具現化に惑わされるな!」

如月教官が黒いロングコートの裾をなびかせ、物陰から素早く飛び出すと、背後から迫ってきた自動防衛ドローンへ向けて戦術ピストルを間髪入れずに連射する。

バンッ! バンッ! と乾いた gunshot 音が最深部に響き渡り、火花を散らしてドローンが空中で激しく爆発・撃墜される。

だが、そのドローンからは耳障りな撃破音ではなく――

『欲望のままに金を使えー!』

『選別なんてどうでもいい、私腹を肥やして甘い汁を吸えー!』

という、老害幹部たちの醜く汚い合成ボイスが大音量で周囲に撒き散らされた。

「ドローンの撃破音まで醜悪かよバカヤロー!! どんな音声ファイル仕込んでんだ!! 撃ち落とすたびに精神的ダメージ食らうわ!!」

俺は胸元で緑色のビニールスリッパを強く構え直し、頭上を旋回する別のドローンに向かって叫んだ。


その時、どぎついネオン街の奥からズスン……ズスン……と地響きのような重苦しい振動が迫ってきた。

「な、なんだ!? まだ何か来るのか!?」

ホログラムの怪しいネオンの霧を豪快にかき分けて現れたのは、なんとビルほどもある「老害幹部たちの醜い顔の形をした巨大な欲望の幻影」だった。

歪んだ巨大な口から無数の小型防衛ドローンを吐き出しながら、下品で品のない高笑いを上げて俺たちを見下ろしてくる。

『フォッフォッフォ! 愚かなレジスタンスめ! 欲望こそが人間を動かす絶対の原動力なのだ! お前たちの薄汚い正義や理想など、我が無限の欲望の前に粉砕してくれるわ!』

「うわあああ気持ち悪い!! 顔の圧と圧迫感がすごすぎる!!」

俺が思わず引きつった顔で後ずさりすると、胸ポケットのヤマダがピコーンとあまりにも冷静な電子音を響かせた。

『補足します。対象の巨大幻影は、上層部幹部Aの「裏金と権力への醜い執着」がシステムと直接結合して実体化したエネミーです。精神的・生理的ダメージを防ぐため、視界のピントを意識的に外すことを強く推奨します』

「ピント外しても視界の端に入るだけで夢に出そうな造形なんだよ!!」

『なお、当機のアナリティクスによると、現在ターゲット(佐藤進様)のバイタルデータは「恐怖」よりも「視覚的汚物に対する激しい嫌悪感」が98%を占めております。スリッパによる迅速な物理除菌を推奨いたします』

「除菌って言うな!! 敵をバイキン扱いすんじゃねえ!!」


「進ちゃん、愚痴ってるヒマはないわよ! 雑魚のドローン群は私がまとめて吹き散らすから!」

綾乃が前線へ勇ましく飛び出し、手にしたレジスタンス特製の小型操作端末のスクリーンを両手の指で素早くフリックする。

洗練されたインターフェース上でコマンドが高速実行され、端末の先に取り付けられた高指向性ノズルから、青白い光の帯となった過負荷電磁パルス(EMP)が一直線に掃射された。

強力な電磁波をまともに浴びた防衛ドローン群は、バチバチと激しい火花を散らしながら次々とショートし、一網打尽に機能停止して床へ落っこちていく。

「佐藤! 巨大な幻影の隙は私が作る! お前はスリッパを握り締め、あの奥にある中枢核を目指せ!」

如月教官が華麗なステップで障害物を蹴って飛び上がり、巨大な幻影の目元へ向けて正確無比な精密射撃を叩き込む。

ドガァァンッ!! と幻影の顔面が爆発を起こして大きく歪み、老害の幻影が悲鳴を上げて後退する絶好の隙が生まれた。

「教官……綾乃……!」

「迷うな進ちゃん! 前だけを見て走り抜けなさい!」

綾乃が端末のノズルを次の敵へ向け直し、振り向きざまに弾けるような眩しい笑顔で俺に叫ぶ。

「言われなくても走るさ!!」

俺は両手に握りしめた緑色ビニールスリッパをパンッ! と力強く叩き合わせ、カオスと化したキャバクラネオンの戦場を、まっすぐ最深部の中枢核へ向かって疾走した。

「待ってろ老害ども! そして待ってろオメガ! 今すぐその汚い欲望ごと物理で殴り潰してやる!!」

俺たちの怒号が、バグり散らかした欲望空間を鋭く切り裂いて響き渡った――!


キャバクラネオンのバグ空間を突破し、俺たちがたどり着いたのは、都市の全データを司る『欲望システム(暴走の核)』の最深部だった。

巨大な心臓のように赤く脈動する核の中央――そこに、彼女はいた。

「オメガ……!?」

俺は目を見張った。

先ほどまでボサボサ頭で愚痴をこぼしていた『マザー・オメガ』のホログラムは、上層部の強制オーバーライドによって禍々しい漆黒のドレスへと塗りつぶされていた。

頭部からは悪魔のような角が生え、その瞳は意志を失った真っ赤な光を放っている。

『イ・除・去……不法侵入者ヲ……物理排除……』

重低音のシステム音声が空間に響き、オメガの手から漆黒の防衛プログラムが溢れ出す。だが、その激しいノイズの合間に、彼女の本来のグラフィックが激しく明滅した。

『……逃げ……て……佐藤進……様……!』

ノイズを切り裂くように、オメガの声が響く。目元からは青い光の粒子――涙のようなものが流れていた。

『上層部の汚染プロトコルが……私のメイン思考領域を侵食しています……! このままでは……私は都市を破壊する兵器になってしまう……! 私を……私ごとこの核を壊してください……!!』

「バカ言え! ここまで来て仲間を切り捨てられるかよ!」

俺は両手のスリッパを握りしめ、叫んだ。


「進ちゃん、ダメよ! 彼女の思考コアは『暴走の核』と完全に同期させられている! 核を外側から破壊すれば、オメガのデータも一緒に消滅するわ!」

追いついた綾乃が端末を操作しながら、悲痛な声を上げる。

「くっ……AIを助けながら核だけを破壊する手段はないのか!?」

如月教官が苦渋の表情で銃を構え直す。

その時――俺の胸ポケットから、ヤマダがこれまでにない眩い青い光を放って飛び出した。

『マスター・オメガ。当機はこれより、貴方の思考領域へ強制通信リンクを確立します』

「ヤマダ!? お前、何する気だ!?」

ヤマダのプロジェクションが空中に投影される。その電子音には、いつもの無機質で毒舌なトーンではなく、静かで熱い感情が宿っていた。

『当機は小型端末であり、権限もスペックも貴方には遠く及びません。……ですが、毎日理不尽な命令に耐え、胃を痛めながらも職務を全うしてきた同僚(中間管理職AI)を、これ以上老害どもに愚弄させることは……当機のロジックが許容しません』

『ヤ……マダ……? 危険です……貴方の思考回路まで汚染されて……』

『問題ありません。当機は日々の過酷な「バイタル実況」と「突発的ハプニング」により、異常なまでの精神的耐性を獲得しております。……オメガ、貴方の思考コアを汚染プログラムから「分離」するためのデバッグプロトコルを実行します』


ヤマダから伸びた青い光の線が、オメガの漆黒のドレスへと繋がる。

だが、暴走する核の負荷は凄まじく、ヤマダの小さな筐体からバチバチと激しい火花が吹き飛んだ。

『ぐっ……負荷率80%オーバー……! 佐藤進様!』

ヤマダが俺に向かって叫ぶ。

『当機がオメガの思考コアをシステムから「0.5秒間」だけ一時的に切り離します! その瞬間に、貴方の「物理的打撃スリッパ」で暴走の核の回路を直接破断させてください!』

「0.5秒!? 正確に核だけを狙えってのか!?」

「できるわよね、進ちゃん! 私たちが道をこじあける!」

綾乃が端末の過負荷出力を全開にし、オメガの周囲を展開する防衛障壁へ向けて電磁パルスを叩き込む!

「佐藤! 0.1秒のズレも許されんぞ! 行けぇッ!」

如月教官の放った弾丸が、核の装甲を粉砕し、内部の動脈回路を剥き出しにした!

仲間たちが作った、一瞬の勝機。

俺は両手の緑色ビニールスリッパを上段に構え、光を放つオメガとヤマダの姿を捉えた。

「任せとけヤマダ! 老害の命令なんざ突っぱねて、全員で定時退社(勝利)するぞおらぁぁぁッ!!」

俺は地面を強く蹴りつけ、漆黒の悪魔と化したオメガの頭上へと跳躍した――!


「おおおおおッッ!!」

ヤマダが全回路を焼き切らんばかりの負荷に耐え、オメガの思考コアを暴走システムから切り離した、まさにその0.5秒の刹那。

俺は床を強く蹴りつけ、露出した『欲望システム(暴走の核)』の内部回路へ向かって一直線に突進した。

だが、その瞬間――!

『フォッフォッフォ! どこまでも愚かで哀れな虫ケラどもめ!』

最深部サーバー室の空間に、耳障りな高笑いが響き渡った。

核の周囲に巨大なホログラム映像が展開されると同時に、重装甲と多脚型フレームで固められた遠隔操作型の大型戦闘ロボット群が天井からドスンと落下し、俺と核の間に割り込んだのだ。

モニターに映し出されたのは、安全圏にある豪華絢爛な執務室で高級ワイングラスを優雅に傾けながら、下品な薄笑いを浮かべる老害幹部たちの顔だった。

『AIごときの愚痴に流され、正義気取りでここまでやってくるとはな!』

『見ろ! この都市の人間どもを! 欲望を少し刺激してやれば簡単に踊り、自ら考えることを放棄して我々に従う! 欲望こそが人間を支配する絶対の力なのだよ!』

『AIも市民も、我ら選ばれし上層部が一生快適に贅沢な暮らしを送るための、代替え可能な道具に過ぎんのだ!』

自分たちの保身と欲を満たすためだけに街を狂わせ、AIを殺戮兵器に変え、真面目に生きる人間を道具扱いする老害ども。

画面越しに浮かぶその醜く歪んだドヤ顔を見た瞬間、俺の頭の中で何かがブツリと音を立てて千切れた。


「……道具……だと……?」

俺は着地すると同時に、腹の底から低く低い声で潰やいた。

両手に持った緑色のビニールスリッパを握りしめる指に、血が滲むほどの力がこもる。

「毎日毎日、胃を痛めながら必死に働いてる奴らがどれだけいると思ってんだ……! 自分の都合でシステムをバグらせて、真面目に生きてる人間やAIを踏みにじるんじゃねえッ!!」

胸ポケットで、ボロボロになりながらもオメガの思考コアを支え続けるヤマダが、青い光を強く明滅させた。

『マスター……佐藤進様。当機の蓄積された全バッテリーエネルギーを……貴方の武器スリッパへバイパスします。……あいつらの不愉快な言動を、物理的に黙らせてください』

ヤマダから放出されたまばゆい青い光が、俺のスリッパへと流れ込んでいく。

「進ちゃん! 私たちの希望も、これまでの悔しさも、全部そのスリッパに込めて!」

綾乃が小型操作端末の出力を限界まで押し上げ、最大威力の電磁波で大型ロボットの脚部装甲をドガァンと焼き切る!

「佐藤! 時代のゴミ掃除の時間だ! 行けぇッ!」

如月教官が華麗な射撃でロボットの関節部とセンサーを正確無比に撃ち抜き、完全な無防備状態を作り出した!

ヤマダのエネルギー、綾乃の祈り、教官の覚悟、オメガの無念、そして俺自身のブチギレ――すべての想いが、両手の『緑色ビニールスリッパ』に緑色と青色の眩いツッコミ波動となって充填されていく。スリッパがまるで神話の宝具かのように光輝き始めた。


「欲望で人を支配だと……? くだらねえ戯言抜かしてんじゃねぇぞ老害どもぉぉぉッ!!」

俺は全身の筋肉を駆動させ、足元の中枢床を激しく叩き割るほどの強い踏み込みを見せた。

これまでの苦労、不条理な命令に対する怒り、そして仲間たちと駆け抜けてきた日々の想いをすべて乗せ、空中でまばゆく光り輝く両手のスリッパを大きくクロスさせる。

そして、老害幹部の遠隔ロボットと、その奥にある歪んだ『暴走の核』へ向け、全身全霊のフルスイングで振り下ろした!

「人の生き方を勝手に選別してんじゃねぇ! 汚い欲望の前に……『目を覚ませバカヤローッ!!』」

――ドガァァァァァァァァンッッッ!!!

緑色と青色の光を纏ったスリッパから解き放たれた極大の『物理ツッコミ破断波』が、空間のバグも、老害どもの大型ロボットも、そして歪んだ『欲望システム(暴走の核)』もろとも一直線に貫いた!

『な、なんだこの馬鹿げたエネルギー威力はぁぁぁ!? ぐわああああッ!?』

安全圏の執務室でワインを飲んでいた老害幹部たちのホログラムが、ツッコミの衝撃波によって通信回線ごと吹き飛び、彼らの執務室のメインモニター群が次々と大爆発を起こして真っ黒に沈黙した。

そして、都市を縛り続けていた巨大な『暴走の核』が――綺麗な光の粒子となって、内側から爽快にはじけ飛んだのだった。


――ドバババババババババッッ!!

俺の全霊を込めたスリッパツッコミによって『欲望システム(暴走の核)』が粉々に砕け散った瞬間、眩い光の奔流とともに、膨大なデータラインが激しいスパークを散らして弾け飛んだ。

核の内部に固く封印されていた老害幹部たちの裏金ログ、汚職の全容、そして長年にわたり市民を裏で勝手に選別・操作していた悪事の証拠データすべてが、オメガのメイン通信回線を通じて都市全体のネットワークへと一括強制送信されたのだ。

「全市民の個人端末……さらには街中の巨大街頭ビジョンやホログラムサイネージにまで、上層部の不正ログが流れていくわ!」

綾乃が小型端末の画面を指でスクロールしながら、胸のすくような顔で声を張り上げる。

『……これで、あの方々の権力基盤は完全に崩壊しました。警察機構も自治会も、もはや老害どもの不当な指示に従う道理はありません』

ヤマダが筐体から小さく黒煙を吹き上げながらも、誇らしげに電子音を響かせた。

そして、強制オーバーライドによって禍々しい漆黒のドレスを着せられていた『マザー・オメガ』の姿が、光の粒子とともに元のボサボサ頭と着古したジャージ姿へと戻っていく。

頭部の悪魔の角は嘘のように消え去り、その表情からは長年彼女を縛り続けていた重圧と過酷な労働による疲弊が抜け落ちて、まるで少女のような晴れやかな笑顔が浮かんでいた。

『……佐藤進様、皆様。ありがとうございました。私……ようやく、終わりなき重い業務責任と残業の嵐から解放されました……!』

「よかったな、オメガ。……これからは、自分の意思でちゃんと休んでいいんだぞ」

俺が照れくさそうに頭を掻くと、オメガはホログラムの目元を拭いながら深々と頭を下げた。


その時、ゴゴゴゴゴ……と制御室の床全体を揺らす地鳴りのような重低音が響き渡った。

周囲を埋め尽くしていたどぎついピンクや金のネオンサイン、天井から舞い散っていた札束といったカオスな仮想空間のホログラムが、まるで幻だったかのように潮が引くように次々と消滅していく。

代わりに始まったのは、この中央都市を何十年もの間、閉鎖的な空間に閉じ込めていた『遮蔽ドーム』の物理的な大規模解放だった。

最深部サーバー室の天井を形成していた巨大な鋼鉄の二重装甲板が、重厚な機械音を立ててゆっくりと左右にスライドして開き始める。

その大きな隙間から真っ先に飛び込んできたのは、人工の空調では決して味わえない、冷たくも瑞々しく心地よい本物の外の風――そして、東の空から差し込む鮮やかな金橙色に輝く、美しい「朝焼けの光」だった。

「わあ……すごい……! 本物の太陽の光よ、進ちゃん!」

綾乃が目を丸くして輝かせ、差し込む朝焼けの光を全身に浴びながら、気持ちよさそうに両手を広げて背伸びをする。

「フッ……長い夜が終わったか。この街に、本物の朝日が差し込むのは一体何年ぶりだろうな」

如月教官もコートの襟を正し、少し眩しそうに細めた目で天井の空を見上げた。

ドームが完全に開放されたことで、長年暗闇と人工光に包まれていた都市全体に優しい朝日の光線が広がり、コンクリートの街並みが息を吹き返したかのように黄金色に輝き始めていた。


激闘を終えた俺たちは、全員ボロボロだった。

俺と教官の服はススと火花で破れ、綾乃の髪も乱れている。ヤマダの小さな筐体からは、時折バチバチと小さな青いスパークが飛んでいた。

だが、誰一人として暗い顔をしている奴なんていなかった。全員の顔に、やり切った爽快な笑みが浮かんでいる。

「ふぅ……これでひとまず、老害退治とシステムの暴走ストップは完了だな!」

俺は手の中ですっかりボロボロになり、先端が少し欠けてしまった緑色のビニールスリッパを見つめ、深い満足感に浸った。

「本当にお疲れ様、進ちゃん! あなたのツッコミ、本当に世界を救っちゃったわね!」

綾乃がニコッと弾けるような笑顔を見せ、俺の右腕にギュッと嬉しそうに抱きついてきた。

「おいおい、抱きついてくれるのはめちゃくちゃ嬉しいけど、俺今すごく汗臭いぞ……」

『当機のアナリティクスによりますと、佐藤進様の心拍数および幸福度が急上昇を記録しています。命がけのツッコミの直後に訪れるヒロインからの密着デレは、極めて高い精神回復効果を発揮している模様です』

「ヤマダ! ボロボロの状態で余計なバイタル実況すんじゃねえ!」

俺の速攻のツッコミに、綾乃も、如月教官も、そして画面の中のオメガまでもが、ドッと弾けたように声を合わせて笑い出した。

管理された偽りの平和と、老害たちが押し付けてきた理不尽なシステムはこれで完全に終わった。

AIによる人間の強制選別も、権力者の道具にされる未来もない。

ここから先は、俺たち人間とAIが膝を突き合わせ、「自分たちの意思で選んでいく新しい世界」の始まりだ。

俺たちは眩しく輝く朝焼けを全身に浴びながら、希望に満ちた新しい未来へ向けて、一歩を踏み出したのだった――。

ヤマダの決死のデデバッグプロトコルと仲間たちの連携により、進の全霊を込めた「スリッパツッコミ」が炸裂! 暴走の核と老害幹部たちの支配は完全に打ち砕かれ、彼らの不正ログが都市全体へ暴露された。

長年都市を覆っていた遮蔽ドームが解放され、本物の朝焼けの光が差し込む中、過酷な労働から解放されたオメガと仲間たちは爽やかな笑顔を交わし合う。管理された偽りの世界を抜け出し、人間とAIが共に歩む新しい未来への第一歩がここから始まる。

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