表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

311/315

第311話 ふたりの少年との出会い

 フランスは、あらためて自分の姿を見下ろした。


 裸ね。

 何度見ても、男の裸よ。


 でも、ちょっと人間とは……ちがう見た目をしているわね。


 自分の体つきをあらためて見ると、少年と青年の間くらいだろうか、基本的なかたちはそのくらいの人間のように見える。


 股にはしっかり男らしいものがぶらさがっていた。


 フランスは、そのぶらさがっているものを、ちょいっと指でつついて言った。


「男になっちゃったわ」


 すると、頭のなかに、トンミムの声がひびいた。


『男じゃないよ』


「エッ⁉ ウリムとトンミムって、男の子でしょ? お股のあれがあるもの」


『ぼくもウリムも、人間のような男と女のくくりには入らないかな。どちらの要素ももっているから』


「え、どっちもあるんだ。男性の形も、女性の形も?」


『そうだよ。でも、形だけね』


「どういうこと?」


『子供を作ったりはできない』


「そうなの⁉ じゃあ、なんでどちらの器の形ももっているの?」


 トンミムがくすくすわらう声が、フランスの頭の中にひびいた。


『なんでだろうね? そもそも同じ種がいなかったから、繁殖はできなかったと思うよ』


 同じ種がいない?


 たしかに、ウリムとトンミムはそれぞれに全く異なる姿をしている。

 それぞれが、他では見たことのない、独特の姿を持っていた。


 人間って、みんな同じような姿だし、子どもを産んで増えるから、それが当たり前みたいな気がするけれど、そうじゃない場合もあるのね。


 フランスは、ふと思いついて言った。


「ねえ、全然関係ないんだけど、前から聞きたいことがあったのよね」


『なあに?』


「ウリムとトンミムの言葉って、わたしが知っているどの言葉とも違う。でも、何を言っているのかはわかるの。これって、なぜ?」


『ああ。多分だけど、神様が言葉を分ける前から使っている古い言葉だからかな。古くからいる天使たちも、同じようにこの言葉を使えるよ。人間たちにはもう使えなくなってしまったけれど』


「へええ、そうなのね」


 なんだか、すごい。


 フランスはトンミムと話しながら、自分の身体を見た。

 上半身も腕も手も、人間と同じような形だった。


 だが、大きく人間と異なる部分が、いくつかある。


 尾がある。


 尻から、トンミムが持っていたのと同じような尾がのびていて、先には明けの星の輝きをもつ炎がゆれていた。


 尾をゆらしてみる。

 くねくね動いた。

 フランスの意思通りに動いたり、勝手に動いたりする。


 変なの。


 そして、顔は、さわった感じ人間っぽい。


 だが、耳があきらかに人間とはちがった。


 トンミムがもっていたような耳が、大きく左右にのびている。片側に三つずつ。合計六つの耳があった。


 一番上にある耳が大きくて、それ以外はちょっと小さい。

 下におさえつけてから離すと、ぴこん、とはねあがる。


 たぶん、この動きはかわいい。

 見えてはいないけれど。


 これ、混ざるのがウリムじゃなくて良かったかも。


 ウリムと混ざっていたら、目が顔に六つも並んでいたかもしれない。

 想像すると、ちょっとこわい。


 耳に、馬がかける音が聞こえてきた。こちらに近づいている。話し声もわずかに聞こえた。


 男の子……、の話し声かしら。


 フランスはまわりを見た。

 だいぶ遠い場所に、二頭の馬がかけているのが見える。


 すごい。

 あんなに遠くの馬の音と、そこにいる人間の話し声まで聞こえたのかしら。


 トンミムの耳って、本当にすっごく聞こえるのね。


 とりあえず、あの馬に乗っているひとに声をかけてみるか。


 でもなあ……。

 どうするか。


 ここで、全裸待機していていいものか!

 悩む~!


 とんだ変態野郎だと思われるかもしれない……。


 でも、ここで出会った誰かに助けをもとめて、服を調達するしかないような気もする。それに、大人よりも子供のほうが、優しくしてくれるかもしれない。裸の不審者にも。


 フランスはちょっとの間、全裸でしっかりとその場に立ち、考えた。


 ……。


 まあ、全裸の男なんて、たまにそこらへんに転がっているものよ。

 酔っぱらって、すっからかんになってね。


 何度か見たことがある。


 全裸で、男が外でいることは……、普通よ!

 このさい、そういう勢いでいよう!


 フランスは、堂々とかけてくる馬にむかって手をふり叫んだ。


「おーい!」


 馬上の人は、すぐに気がついたのか、こちらに向かってまっすぐにかけてきた。近づいてくると、馬上の人物の姿が、だんだんとはっきりとしてくる。


 溌溂とした雰囲気の男の子が、こちらを見て叫んだ。


「おわー! すごい! 妖精⁉」


 となりで馬を走らせている、気真面目そうな顔をした男の子も、驚いたように言う。


「こんなところに? 裸で?」


 すみません。

 裸で。


 それよりも、フランスはふたりの少年の姿がはっきりとするほどに、その姿に目が釘付けだった。


 おそらく、年のころは、十三か十四歳くらいだろうか。


 まだ青年というには幼さの残る雰囲気をもつ彼らは、完璧に似ていた。


 溌溂としている少年は、ダラム卿に。

 そして気真面目な雰囲気のある少年は、イギリスに。


 うわあ、想像していた通りというか、なんというか!


 少年たちが、フランスの側に馬をとめて、なれた様子で馬をとびおりる。


 フランスはふたりに向かって、笑顔で手をふって言った。


「やあ、こんにちわ」


 おそらくダラム卿のご先祖様だろう少年が、わくわくした顔で言う。


「こんにちわ! すごい! 妖精久しぶりに見た!」


 妖精ね。

 まあ、この姿じゃそう思うわよね。


 良かった、開口一番、変態バケモノとか言われなくて。


 そして、多分イギリスっぽい少年が近づいてきて、ちょっと警戒した表情で挨拶する。


「こんにちわ」


 どうする。


 これはとりあえず自己紹介よね。

 何をどうでっちあげればいいのよ。


 うーん。


 溌溂とした少年が、フランスの両手をぎゅっとにぎって、ぶんぶん振りながら言った。


「おれは、ダラム。で、こっちの、仏頂面がイギリス!」


「あ~、わ、わたしは……」


 名前をそのまま言うのは、問題あるか?


 フランスは、とっさに言った。


「わたしは、フランシス!」


 ダラムが無邪気に言う。


「フランシス! へえ! こんなところで裸でなにしているの?」


「ちょっと、服がなくて……困ってた」


 イギリスが、同情するような顔で言った。


「追い剥ぎされたのか?」


 フランスはすぐさま、その言葉に乗ることにした。


「そう! そうそう! それ!」


 ダラムも、同情した様子で言う。


「そっかあ、災難だったな。妖精の国なら追い剥ぎなんかないんだろうな」


「まあ、そうだね」


 そうかな?

 追い剥ぎするほどの服を着ていないから、ないわよね、多分。


 ダラムが、ぱっと顔を明るしくて言った。


「あ、ちょうどいいや。イギリス。そのズボン、フランシスにやれよ。ちょうど股がさけているし、フランシスの尾を出すのに丁度良さそう」


「ええ、父上の衣装だぞ? 怒られる」



 父上の衣装を着て、股をやぶいて、何していたのよ、この少年たちは……。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ