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魔導士志望者と奴隷ウルフ  作者: マサタカ
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最終話

「あ、そうそうご主人様。今晩のお夕飯ですが」

「ってなんで普通に戻ってきてるんだ!」

 感動も余韻に浸る間もないじゃねぇか!

「なにを急に叫ばれているのですか。そんなことをしては傷が悪化してしまうでしょう。それともなんですか。私に介抱される時間を長くするためにわざとそうなさっているのですか。最低です」

「そうじゃねぇよ! おまえのおかしい行動にツッコんでるだけだよ!」

「おかしい? なにがおかしいのですか。私はいつもどおりにしているだけでございますが」

「いつもどおりって・・・・・・え? ええ?」

 意味がわからない。自由に、生きたいように生きてくれって言って、それに応えてついさっき出て行ったばかりじゃないか。なんでいつもどおり戻ってくるんだ? それも、今後もここで暮らすみたいな発言とともに。

「私は、ユーグ様の奴隷としてここでまた生活がしたい。そう望んだからです」

「・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 思考が停止する。

「俺の奴隷にって、なんで?」

「第一に、元奴隷を雇ってくれる物好きはいません。マット様にも以前聞きましたが、普通の生活を送れず、最悪また奴隷として売買されるのが普通だそうです。なので、これより劣悪な状況で生きることになるでしょう」

 現実的過ぎる・・・・・・。

「第二に、ユーグ様は生活能力がなさすぎます。私が家事炊事洗濯等々しなければこの部屋はゴミ屋敷に逆戻りです。そして、研究にのめりこみすぎて衰弱ししてしまうでしょう。誰かが一緒にいなければ」

 ・・・・・・想像できる自分が情けない。

「けど、それだったら奴隷じゃなくて居候とか同居とか。いっそのこと、こいび――」

「奴隷のほうがいいのです。恋人なんていうのは今、の時点では絶対に無理です」

 またフラれた。それも一回目よりも簡単に。

「じゃあ、どうしてそこまで奴隷でいたいんだ?」

「そして最後の理由は、知りたいからです」

「・・・・・・知りたい?」

「はい。ご主人様のことをもっと。私の、ご主人様に対する感情。まだ復讐したいのか。それとも別のものなのか。それを、奴隷になって知りたいのです。奴隷になったのがきっかけなのですから奴隷になれば知ることができる。当然の帰結ではないでしょうか? 今までの私は、奴隷として間違っていました。正しい奴隷となって、知りたいのです」

 いや、ルウの言い分もわかるよ? わかるけど・・・・・・う~ん。

「これで満足ですかこの鬼畜変態ドエスやろー」

「勝手に言って勝手に罵倒して勝手に恥ずかしがるなよ!」

 情緒不安定すぎるだろこの子。

「お願いです。私を奴隷にしてください」

 どこの国にいるだろうか。きっと世界中を探してもいないだろう。自分から奴隷にしてくれなんて頭のおかしいことを頼んでくる女の子は。

 断るべきなんだろう。良識的に。好きな子を奴隷にするなんて。それで、一度は間違えてしまったんだから。

「知りたいことは大切だと、ご主人様もおっしゃっていましたよね?」

「・・・・・・かなわないな、ルウには」

「お願いします。今度こそ、正しい奴隷になってみせます」

「ははは、正しい奴隷って、なんだよ・・・・・・けど、うん。わかった」

 結局、俺はルウが好きなんだ。自分の感情より、この子の気持ちを優先してしまうくらい好きなんだ。好きな子の頼みを、誰が断れるだろう。

「ありがとうございます。では、この『隷属の首輪』を付けてください」

「そこまでやる必要あるか?!」

「やるならば徹底的にです」

「というかどこで見つけてきたんだそれ?」

「以前逃亡奴隷のときに知った、例の壊したり外したりできる業者からです」

「だいぶ前の話だなそれ! 完全に忘れてたよ」

「以前からその業者のことは探していたので」

「・・・・・・もしかして逃げようとか考えてたとか? だから調べていたのか?」

「・・・・・・ちなみに情報源は例の商人の片腕の奴隷の子からです」

「露骨に話題変えるなよ!」

「どうぞ」

 ルウに催促されて受け取った首輪を、躊躇しながら付ける。まるで結婚式の指輪をはめる神聖な儀式みたいで、緊張してしまう。対するルウは、なにも感動することもなく、ただ早く終わるのを待っている。どこまでもクールだ。やっぱり愛おしい。

 首輪が淡い光を放って、ルウの体を照らしていく。光が消えてから、本当にこれでいいのかと疑問が。また俺たちの関係が元に戻った。特別な繋がりができたことに喜びはあるものの、ちゃんと『隷属の首輪』が機能しているのかどうか不安だ。

「では、最初のご命令をください」

 命令を実行できるか、強制力はあるのか。それで『隷属の首輪』の機能を確かめろということなんだろう。

「けど命令。命令か。急に言われてもなぁ~」

「ちなみに恋人になってくれとか好きになってくれとかの類いなら今は受け付けませんのであしからず」

「そっちから言い出しといて条件つけんなよ!」

 そこまで恋人になりたくないのか!? 泣くぞ!? そりゃあもしかしたらってちょっとは考えちゃったけどさぁ! というかそこまで恋人になるたくないやつの奴隷になりたいって、それ奴隷でいることが重要で俺に仕えなくてもいいんじゃないのか?

「だってご主人様、反応やリアクションがこわいです。気持ち悪いです。不安です。病気の発作みたいです」

「って全部自分のせいだった!」

「なので、今は恋人になれません。あなたの告白も断るしかありません」

「ん?」

 言い方に違和感が・・・・・・それにさっきも今は、とか。今の時点ではって言ってたような?

「・・・・・・今後一緒に暮らすことで、私自身もご主人様を好きになる可能性がなくもなく、ありなしのどちらかととわれればなしでもありかもしれないというかんじなので。いいからさっさと早く命令をください。なにを関係ない話をしているのですか」

「ええ・・・・・・そっちから出してきた話題なのに・・・・・・?」

 けど、ルウの反応。尻尾がパタパタとしきりに動いているし、耳がぴこぴこと跳ねるように反応している。顔も若干赤らんでいるし、まさに恥ずかしがっている女の子ってかんじで、いとおしい。

期待していいんだろうか? まだ俺にも可能性があるんだよな?

「・・・・・・よし。決めたよ。命令」

 引き締まった面持ちでびしっと佇まいをなおす。こちらまでつい緊張がうつってしまう様子に、表情が綻ぶ。

「俺のずっと側にいろ」



「俺の命令なし助で俺から離れることは許さない。死ぬまで俺の側にいて、俺と一緒に生きろ」

 ルウに、俺を好きになってもらう。命令ではなく、強制ではなく、この子自身が心から望む。俺の力と努力によって。魔道士になるという夢と一緒で、自分の力で叶えていけばいい。そ

のための、きっかけとなる命令。決意、そして誓いだ。

「はい、かしこまりましたご主人様」


 この誓いから、またはじめよう。


 俺達の生活を。

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