三十八話
最悪な目覚めで、今日が休日で助かったと安心する。微妙な吐き気と脳をハンマーで叩かれているような鈍い痛み。二日酔いだ、うっぷ・・・・・・。
「おはようございます」
そんな俺の不調を一瞬で和らげてくれるルウ。すぐに変えそうとしたけど、昨夜のシエナの話を思い出す。
「あ、ああ。おはよう」
後悔するくらいの素っ気なさで、そそくさと椅子に座る。少し不審がられたが、ルウはすぐに食事の準備を再開した。
「昨日はお楽しみだったようですね」
「・・・・・・どうかな」
シエナと飲んでいた記憶はあるが、ほとんど後半シエナの愚痴に付き合い続けた。俺もシエナの無理強いを断れなくて飲み過ぎたのか記憶が曖昧だ。それでも、最初のほうの話題は覚えていてルウと顔を合わせられない。
「シエナ様と二人で痣だらけたんこぶだらけ、服もぼろぼろで泥だらけで驚きましたが」
なにがあった。というかシエナはなんで一緒に来たし。
「背負っていらした魔物の剥製や可愛らしい人形はどうされたのですか?」
まじでなにがあった! そんなものどこで手に入れた昨日の俺!
「ベッドの上で一時間以上逆立ちをされてこれが俺の答えだぁ! と叫ばれたときはお医者様を呼ぼうかと」
「いやごめん」
は・・・・・・恥ずかしい・・・・・・! われながらいみわからん!
「そのあと、撒き散らされた吐瀉物の処理が一番大変でした」
「いやまじでごめん!」
ルウにとんでもない迷惑をかけたんだな。酔っ払いすぎて自分でも意味不明すぎる。
「一時間前にすべてが終わっておやすみになられて、ようやく私も肩の荷が降りたところだったのですが」
「俺何時に帰ってきたんだ!?」
まさか徹夜で酒飲んでたのかよ!
「いつっ・・・・・・」
ツッコミすぎた反動でまだ二日酔いの辛さがぶり返してきた。
「今日は食べやすいリゾットかお粥にしたほうがよろしいですね」
「あ、ああ、うん。頼む」
ぱたぱたと台所に向かうルウを眺めたあと、一人でうなだれていたとき、あることに気付いてしまった。動くのもしんどかったが、大声で確認するのも嫌だった。
「ルウ。朝方誰か来たのか?」
ガラガラガシャン! と鍋かなにかを落としたのか盛大な衝撃音と同時にだらんと垂れていた尻尾がびくぅ! といきなり直立した。全ての毛が逆立ちつつ、震えている。どうした?
「な、なにゆえに?」
「いや、机にポットと飲みかけのカップが残ってたから」
それも、湯気がたっているからまだ用意されてから時間を置いていないんじゃないか。
「あ、え、ええ。そうですね」
「誰が来たんだ?」
「そ、そうですね。少々お待ちください。ご主人様がいきなり声をかけられたせいでお鍋が大変なことになっているので」
落としただけじゃないの?
「え、ええ。そうですね。先ほどシエナ様がいらっしゃいました。お詫びにと」
「? そうか」
あいつも俺と一緒にしこたま長いこと飲んでいたはずだろうに、そんなことができる余裕があったのだろうか。それもわざわざ? 俺より酔いが残っていたとか早くさめたとか?
「それよりも、お顔を洗ってこられたほうがよろしいのではないでしょうか。昨夜の惨劇がまだ残られてますし」
「惨劇ってなんだ!? 俺まだなにかしてたのか!?」
「それはご自分でご確認を」
なにがあったのか、そして顔がどうなっているか。急に不安になった俺は外へ出て井戸へと走る。




