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魔導士志望者と奴隷ウルフ  作者: マサタカ
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二十六話

 夕食後、すぐに俺は作業に取りかかった。難しいことじゃない。シエナから預かった証拠の調査だ。


「材料は火蜥蜴の肝、ウシガエルの炙られた舌、乾燥させたクスノキの木。それからいくつかの薬草で作られている。やろうとおもえばどこででもそろえられる。けど、どこもあるのがバラバラだから短期間でそろえるには専門店で買いに行ったほうが早い。残りのやつには生き物幻覚系の植物が使われている。理性を失わせて暴走させる薬だ。材料のアレンジが加えられていて、驚いた」

「普通、そんな薬が作れるものなのかい? 植物を暴走させるなんて魔法薬、僕は聞いたことがない」

「俺も初めてだ。正直どうしてこの材料でこんな効果が出るのか不思議なくらいだよ。きっとこれを作ったやつは、すご腕だな」

「ふぅん。じゃあ相当絞り込めるな。ありがとう。参考にさせてもらうよ」

 魔法士。魔法薬に相当詳しい。自然とこの前再会したあいつを想像してしまう。頭を振ってイメージを打ち消していると、シエナが小瓶を持って帰ろうとしていた肩を押してひき止めた。シエナは目をぱちくりさせている。

「どうしたんだい?」

「この証拠、もらっちゃ駄目か?」

「は?」

「全部が駄目だったら半分、いや三分の一くらいでもいい。俺の研究に使いたいんだ」

 正直、最初は面白くなかった。友達の頼みだから仕方なくと引き受けたが、調べていくうちにワクワクしてきた。どうしてこんな魔法薬を作れるのか。この材料を組み合わせたらどうしてこんな効果が出るのか。こんな気分は久しぶりだった。この証拠を調べて、徹底的に調べたい。あわよくば、自分の研究に役立てたい。

「そんな子供みたいに目をキラキラさせて鼻息荒くしているところ悪いありけど、それはできないよ。これは騎士団が預かっている証拠の一部だ。上司に許可をもらって特別に持ち出したから、僕の判断だけで君にあげられない。すまないね」

「そうか・・・・・・」

「けど、君はやっぱり魔道士気質なんだなぁ。僕は仕事で現役の魔道士に会う機会が多いけど、皆変人だ。君と似てるし共通点もある」

「なんだ?」

「欲求さ。知りたい、調べたい、作りたい。そういう欲求を魔道士は全員ていた。さっきまでの君みたいに楽しそうに研究している。心の底から魔法の研究が好きだからなんだろうね」

「楽しそうだった? 俺がか?」

「僕からはそう見えた。それに、熱中しすぎてたからか様子を見に来たルウちゃんと、とそれを口説いてた僕にも気づかなかっただろう?」

「人がせっかく頼みをきいてやってたのになんてことしてやがったんだ!」

「もっといえば、僕が君のズボンを脱がせようとしたことも、ベルトを外したことも気づいていないだろう」

「本当になんてことしてやがる!」

 どうりでなんか腰周りが緩いとおもったら! 確認したら本当になくなってるし! 真剣に協力してる友達を使って遊んでんじゃねぇ!

「単純だなぁ。ところでどう? 眠れてないんじゃない? 目元のくまけっこうすごいし」

 つま先立ちで俺の目元を覗き込んでこられて、のけぞった。シエナみたいな美少年だから流せるが、普通男友達にこんなことしない。

「さっさと帰れ」

 ひらひらベルトを振っているシエナから乱暴に取り戻したはいいものの、やはり面白くなくて雑な言い方になる。

「そうすることにするよ。もう二時すぎだし、まだ帰ってやらなきゃいけないこともあるし」

もうそんな時間になっていたのかと軽く驚いたが見送るつもりにはなれず、そのまま工房に残る。まだ眠気もないから、魔導書作りにとりかかろう。

「あまり無理をするなよ、ユーグ。根をつめすぎると体に障る。時間をかけてちょっとずつやってもいいんだ。君なら魔道士になれるよ」

「そうはいかねぇよ」

 魔導書を作るのに、通常なら十年以上かかる。魔道士になれるのはほんの一握り。それなのに魔導書作りは遅々として進まない。熱意もやる気も、楽しいという熱もない。焦ってしまう。

「さっきおおまえは、俺が魔道士気質とか魔道士になれるとか言ってくれたけど、俺は特別な才能なんてない。昔の魔道士や今の魔道士達と比べて、作れた物のレベルも低くて種類も少ない」

「過去の人や周りと比べても仕方ないだろう? 君は君だ。それに、現にその義眼の魔法だって今までにないものだし」

「失敗作だ。今の魔導書にも載せられないくらい最低な魔法なんだよ」

 それきり黙りこんでしまう。自分の情けなさを振り払うかのように、俺は研究にとりかかる。

「・・・・・・今何時かわかるかい? 君が魔法薬を調べ始めてからどれくらいの時間が経用字たっているのか」

 ? いきなりなに意味不明助詞不足の可能性ありなことを。

「才能というのはなにかを産み出し続ける力だけじゃないってことさ。じゃあおやすみ」

 なんなんだあいつ・・・・・・意味深に語って、足早に去っていきやがった。頭を捻りながら、シエナの言葉を考える。けど、すぐにどうでもよくなって、研究に没頭する。


 

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