二十二話
「ご主人様、本日ご予定などはございますか?」
「ン~? んん~」
明けて朝食時、ルウとの会話になんとも曖昧な反応しかできなていないが、これは致し方ない。昨日は本当に一睡しないでいたから、死にそうでヤバい。今日が休日でよかった。
それと、昨日の夜のことも振り返らないで、すんでいられる。寝不足で頭が麻痺しているからなんだろう。ルウは・・・・・・・・・・・・うん、変化はない。いつもどおり感情がないみたいだ。
昨日の寝る前のことなんてなかったみたい。やっぱり元通り、というか昨日のことは俺の幻だったんじゃないだろうかってくらいの普通っぷり。
「あ~、でも買い物行こうか。臨時収入あったし」
研究に必要な材料とかも買い足さないといけないし。シエナから受け取ったお金の経緯を説明すると、ルウは納得した。
「それでは金銭的には少し余裕ができた、ということですね。それでは、今日はこの後お買い物に出掛けるということで。よろしければ市場にも行きたいのですが」
なんだ? ルウのほうからそんな提案をしてくるなんて、初めてじゃないか?
「市場って、なにか必要なものでもあるのか? だったら俺がついでに買ってくるが」
「ご主人様とご一緒がよいのです」
「そうか、俺と一緒にか」
それなら仕方ないな。すぐに――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今なんてった?
「ご主人様とご一緒がよいのですが」
よっぽど俺は間抜けな表情だったに違いない。
「あ~、あ。あれか。荷物持ちが必要だからとか市場への道がまだ覚えられてないからとかか」
「いえ、別にそのようなわけではないです」
ええ~。余計謎が深まる。理由を知らなければ不安で安易に首肯できない。
「ご迷惑でしょうか?」
「迷惑なわけあるか!」
残っている食事をマッハで口に突っ込んでいく。時間が惜しくてそのまま飲み込もうとするが詰まりそうになって水で流していく。
覚醒している。動きも思考も。さっきまでのだらしがない自分がうそみたいにすっきりしている。眼球と頭の中がキンキンに冷えた氷水で洗われたようだ。急いで着替えて歯磨きや身だしなみ等々を整える。
「さぁ準備万端だ!」
ここまでで、まだ十分もたっていない。ルウを待たせるなんてことありえない。愛しい人と一緒に出掛けられる時間が俺のせいで減ったら後悔してもしきれないから。
「ほこりが舞うので走り回らないでください食事に混じってしまいます」
ルウはまだゆっくりと食事を堪能していて、そして騒々しさをたしなめてきた。
マイペースなところもいとおしいなぁ・・・・・・。
彼女が食べ終わって食器を片付け終わるまで、三十分くらいかかった。今か今かと常にそわそわしっぱなしだったけど、ルウの尻尾がリズムを刻むように振られているのを観察して、なんとか抑えた。ルウも楽しみにしてくれてるって、期待ができるから。




