↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/128

第63話 話

『白銀鉄(はくぎんてつ)を割り、その粉を燃やすと海の向こうの国が攻(せ)めてくる』

ヴァルゼンベルク家に代々(だいだい)伝わる腕輪(うでわ)の裏には、そう書いてあった。


にわかには信じられなかった。


だが、ラジャトの切り替(か)えは早かった。緊迫(きんぱく)した口調で言う。

「僕(ぼく)はやることがある。これからは別行動をさせてもらう」

またたく間に馬にまたがり、その場を去る。


「……ひとまず帝都(ていと)に戻(もど)ろう」

そう言うと、キリルは素直に頷(うなず)いた。


どこに言ったか分からないトルーシスとレオラには、「先に戻(もど)る」と置き手紙を残しておいた。






    ◇






帝都(ていと)に戻(もど)ると、キリルは書庫守(しょこもり)用に与(あた)えられた天幕の中で、自分の世界に入りこみ、思考を始めた。


俺も頭を整理したくて、帝都(ていと)を1人歩いていると、懐(なつ)かしい後ろ姿が見えた。


「父上?」

何もなくなった帝都(ていと)を眺(なが)め、佇(たたず)んでいる。


ふと、気になった。

父上は俺が砂紋民(ヌルム)だと知っているのだろうか?

いや、もしかして――。


思わず駆(か)け寄る。

久しぶりに対面したが、少しやつれてはいるものの、眼光の鋭(するど)さは健在だった。

一目で俺の左腕(ひだりうで)の腕輪(うでわ)がないことを見てとり、「気づいたか」と微笑(ほほえ)むと自らの左腕(ひだりうで)をたくし上げた。


思った通りだった。

父上も砂紋民(ヌルム)だった。


「我がヴァルゼンベルク家は、砂紋民(ヌルム)の家系だったのですか」


「そうだな。もう血が薄(うす)くなり、紋様(もんよう)が現れる者の方が少なくなったが」

父上はかすかに微笑(ほほえ)み続ける。


「お前に子どもが生まれた時に、その秘密を明かすのがしきたりだった。機会がなくて伝えられず、申し訳ない」

頭を下げる父に、気にしないでください、と首を振(ふ)る。


もともと俺が婚期(こんき)を逃(のが)したのが悪い。書庫守(しょこもり)として妻帯ができないことを気楽に思っていたのも事実だ。


「紋様(もんよう)の本を持っていたのもそうですか」

ずっと引っかかっていた。

ネルヴァが、いとも簡単に禁書となっていた本を俺にくれたことが。


そうだ、と満足そうな頷(うなず)きが返ってきた。

「私は2巻までしか解読できなかった。それをお前は5巻まで読み、書庫守(しょこもり)になるとは。たいしたものだ」

俺の肩(かた)を叩(たた)く。


「父上は、この腕輪(うでわ)に書かれていた内容も知っていたのですか?」


「いや。……何が書かれているのだ?」

読み取ったことを話すと、父上は顔色を変えた。


「私が知っている限りの話をしよう。何かの参考になるかもしれない」

一瞬(いっしゅん)間を置くと、遠くを見る様な目をする。


「あれは私がヴァルゼンベルク家の跡目(あとめ)争いに破れて敗走していた時のことだ。深い森の中で、黒い紋様(もんよう)の民にあったのだ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。