鋼主への裁き(980字)
※時系列的には、海の向こうの国との戦いのあとのエピソードです。
目を覚ますと、馴染みのある瞳と目があった。
「よかったぁぁぁ!!」
涙を浮かべたシェムリが視界一杯に入り、抱きついてきた。
「おいおい、怪我人をいじめちゃダメだぜ」
番人が苦笑している。
……あの戦いで死ななかったのか。
俺よりも生き残るに相応しい者が大勢いただろうに。
この混血の体は、どうしようもなく強くできているらしい。
「ファクトル。デイトンから伝言だ。動けるようになったら来てほしい、とのことだ」
「分かった」
番人の言葉に頷きつつ、きっと処刑されるのだろう、と思った。
◇
「鋼主。いやファクトルと言ったか。そなた、海の向こうの国の者にそそのかされ、戦争をおこしたのであろう」
新たな国王――デイトンは、開口一番、そう言った。
平服したまま動きを止めていると、デイトンの隣に佇む若王がしびれをきらしたように口を開いた。
「質問に答えよ。そうなのか、そうでないのか」
「……根も葉もない話に、そそのかされた私が悪いのです」
平服して言った。「多くの罪なき人を殺しました。死をもって償いたく思います」
若王が呆れたように眉をひそめた瞬間、デイトンの朗々とした声が響いた。
「罪には問わん。この国の発展に尽くせ」
自分の耳を疑った。
デイトンはよどみなく述べた。
「まずは類まれなき身体能力。そして黒い紋様の解読にも成功したその頭脳。そなたは知力・体力ともに傑出している」
呼応するように若王が続ける。
「死という楽な道を選ぶな。生きて罪を償え。――これは王からの命であるぞ」
「は……」
言葉を失い、ただ頭を下げた。
「よし」
満足そうに微笑んだ国王に、「ひとつだけ望みが」と申し出た。
「しばらく、旅に出たく……」
若王が剣呑な雰囲気になったのが分かった。
「そなた、旅先で事故に見せかけて死のうという魂胆だろう」
自分でも、なぜこんなことを言ったのか、分からなかった。
ただ少し、この国でも黄泉の国でもないどこかへ、行きたかったのだ。
「……」
黙していると、国王は音もなくこちらへやってきて、私の顔をしばらくの間覗き込み、ふと微笑んだ。
「良いぞ。たくさんの土産をもってこい」
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※作者つぶやき
これは、最終話に入れようと思っていたのですが、ない方がいいかなと思い、カットしました(;'∀')
でもあってもよかったかもですね。




