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第二話 世界の目

目が覚めると、そこは巨大な石造りの祭壇の上だった。

 周囲には同じような祭壇が無数に並び、それぞれに一人の若者が立っている。皆、呆然とした顔をしていた。


 俺の目の前に、再び半透明のウィンドウが浮かんだ。


『立地先着選択権利を確認。転移タイルを選んでください』


 視界いっぱいに広がったのは、地球規模とも思える超巨大な大陸地図だった。

 100×100のタイルが無数に並び、そのうち約千個が緑色に光っている。あまりにもリアルで、まるで本物の世界地図を見ているようだった。


「ん……世界の目、使えるかな」


 俺はEスキル「世界の目」を強く意識しながら、言葉に出して試した。

 すると、タイルの上に1〜100の数字が浮かび上がった。

 ほとんどのタイルが1〜20程度の低レベルだったが、ところどころに20〜100を超える高レベルタイルが点在しているのが確認できた。


「運がいい……」


 俺は慎重に地図を眺め始めた。

 1〜20の低レベルタイルに囲まれつつ、高レベルエリアへのアクセスが良く、なおかつ資源が豊富そうな場所を探す。

 森林と川に囲まれた小さな盆地が目に入った。周囲は低レベルばかりで、スタートとしては理想的だ。


 俺は迷わずそのタイルを選択した。

 選択を確定させた瞬間、体が柔らかい光に包まれた。


 次の瞬間、俺は柔らかい草の上に倒れ込んでいた。

 空は青く澄み渡り、風は気持ちよく頰を撫で、遠くで鳥の声が聞こえてくる。

 本当に、異世界だった。


 俺はゆっくりと体を起こし、周囲を見回した。

 まずは状況を整理しなければ。

 立地先着選択権のおかげで、かなり有利なスタートを切れたはずだ。


 次にやるべきことは——。


 光の粒子がゆっくりと集まり、形を成していく。


 現れたのは銀髪の少女だった。

 尖った耳と透き通るような白い肌——明らかに人間ではなかった。精霊族のような美しい容姿だが、その瞳には警戒と苛立ちがはっきり浮かんでいた。


「……誰?」


 少女は俺を見て、眉をひそめた。

 声に甘さはなく、むしろ棘がある。


「ご主人様? ふざけないでよ。突然呼び出されて、何がご主人様だっていうの?」


 俺は少し驚いた。

 初期眷属生成券で生み出したはずなのに、予想していた「忠実で少し天然」な反応とはまるで違う。

 彼女は腕を組み、俺を上から下まで値踏みするような目で見ていた。


「カルボン……どうだ? お前の名前だ」


「カルボン? 炭素から取ったんでしょ? 馬鹿みたい。勝手に名前なんか付けないで。そもそもあんたに仕える気なんてないから」


 少女——カルボンは鼻で笑った。

 尖った耳がピクピク動き、明らかに不機嫌だ。

 俺が何か言おうとすると、彼女は背を向けて数歩離れた。


「とりあえずここがどこかもわからないし、腹減った。勝手に何か食べてくるわ。後で勝手に名前呼ぶんじゃないよ」


 そう言い残して、彼女は森の方へ歩き出そうとした。


 俺はため息をついた。

 初期眷属のはずなのに、完全に反抗的だ。

 生成券の効果で強制的な忠誠心は発生しないらしい。

 これから信頼関係を築いていく必要がある——それが、最初の課題だとすぐに理解した。


 異世界に来てまだ数分。

 すでに予想外のスタートだった。


 しかし、俺は静かに微笑んだ。

 研究者として、未知のサンプルを相手にするのは慣れている。

 炭素と同じく、彼女も「理解」すればいい。


 カルボンの背中を追いながら、俺は小さく呟いた。


「まあ、ゆっくりやろうか」

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