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異世界都市伝説大戦【改稿版】  作者: 知恵利一
第1部 死と生

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9/33

第9章 語られる過去、交わる誓い


⸻


 戦いの終わった夜。

 双雷と少女は瓦礫の残る廃ビルの屋上に腰を下ろしていた。


 冷たい風が吹き抜ける。

 怪物を倒したばかりの二人には、ただその静けさが心地よかった。


「……で、アンタ。名前は?」

 沈黙を破ったのは少女だった。


「俺か? ――鳴神(なるかみ)双雷(そら)。元は……日本の高校生だ」

「元は?」

「……死んだ。で、気づいたらこの世界にいた。訳も分からず雷神に選ばれて、異形者と戦うハメになってる」


 少女はわずかに目を見開いた。

 だが驚きよりも、納得の色が強い。


「なるほどね……。やっぱり、あんたも“転生者”か」


「やっぱり? ってことは……」


 少女は小さく頷いた。

「私もよ。名前は――【皆神(みながみ)水京(すいけい)】。こっちでは水神を祀る宮司の家に生まれた」


「水京……」

 双雷はその名を反芻する。


「小さい頃から知ってたの。いずれ“異形狩り”になる宿命だって。……でもね」

 水京は唇を噛む。

「本当は逃げたかった。怖かった。……それでも、見てしまったの。怪物に食い殺される人たちを」


 その瞳には、夜の水面のように深い影が揺れていた。


「だから戦ってる。……せめて目の前の命ぐらい、守れるように」


 双雷は黙って彼女を見ていた。

 その横顔には強さと脆さが同居している。


「……なんか似てんな、俺たち」

「似てる?」

「俺も、守れなかった。……母さんを」


 その一言に、水京ははっと顔を上げた。


「力があれば守れると思ってた。ケンカばっかして、自分が最強なら全部解決できるって思ってた。でも……結局、母さんを守れなくて……死んで……気づいたらこの世界だ」


 自嘲気味に笑う双雷。

 だがその拳は震えていた。


「だから、もう二度と同じ過ちはしねぇ。俺は……絶対に誰も殺させない。誰も泣かせねぇ」


 その声には、血を吐くような決意が宿っていた。


 水京はしばらく黙っていたが、やがて柔らかく笑った。

「……あんた、ほんとバカね」

「はあ!? いきなり何だよ!」

「でも、嫌いじゃない。……私も同じだから」


 双雷は目を瞬かせた。

 その笑みは炎のように凛々しく、同時に温かかった。


「よし。じゃあ、これからは共闘だな」

「勘違いしないでよ? 私はまだアンタを仲間にするなんて言ってない」

「は? もう共闘しただろ!」

「それは一時的な協力!」

「屁理屈じゃねぇか!」


 二人の声が夜に響く。

 だがそのやりとりは、不思議と心を軽くしていた。


 雷と炎――。

 罪を背負った二人の道は、今まさに交わり始めたのだった。

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