第10章 次なる地へ――嫉妬区への旅立ち
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夜が明け、東の空が薄紅に染まるころ。
双雷と水京は、瓦礫の街の小さな神社に身を寄せていた。
昨夜の戦いの傷を癒すように、境内には静かな風が吹いている。
「ふぅ……やっと一息つけるな」
双雷は腰を下ろし、ぐったりと背をもたれかける。
「アンタ、寝ないの?」
水京は冷水で濡らした布を差し出す。
「ありがと。……でも、寝たら起きれなさそうでな」
双雷は苦笑しながら布で顔を拭う。
冷たさが火照った頭をスッと冷やしてくれた。
――どれくらいぶりだろう。
こうして、誰かと同じ場所で夜明けを迎えるのは。
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「なあ、水京」
「何?」
「これから、どうするつもりだ?」
水京は少し考え、答えた。
「……嫉妬区に行く。そこには水神を祀る宮司がいる。私の師匠……って言ってもいい人よ」
「嫉妬区か……」
双雷の脳裏に、雷兆が最後に言っていた言葉が浮かんだ。
『次に行け、嫉妬区だ。そこに鍛冶屋がいる。武具を調達しろ』
「偶然だな。師匠も、嫉妬区に行けって言ってた」
水京が双雷を見つめる。
「……つまり、行き先は同じってことね」
「まあな。……だったら一緒に行こうぜ」
双雷はにやりと笑う。
水京は一瞬だけ目をそらし、わざと素っ気なく返した。
「勘違いしないで。あくまで目的が一緒なだけ」
「はいはい。そういうことにしといてやるよ」
そのやり取りに、わずかに笑みが漏れた。
互いにまだ素直にはなれない。
だが確かに、同じ道を歩き始めていた。
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準備を整え、鳥居の前に立つ二人。
朝日が差し込み、長い影を伸ばす。
「嫉妬区か……。どんなヤバい奴らが待ってるんだろうな」
「さあね。でも――」
水京は弓を握りしめた。
「一人よりは、少しは楽になるはず」
双雷もまた、スカジャンの背に刻まれた雷神の刺繍をなぞる。
「そうだな。二人なら、何でもぶっ倒せる」
そう言って、二人は笑った。
――次なる地、嫉妬区へ。
雷と炎の旅路が、今始まろうとしていた。




