第11章 道行く雷と炎
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嫉妬区へと続く街道。
アスファルトはひび割れ、街灯は半分以上が倒壊している。
時折、カラスの鳴き声と、風に揺れる看板の音だけが響いていた。
「……ずいぶん荒れてんな」
双雷は辺りを見渡しながらぼやいた。
「この辺りは瘴気が濃いのよ。人間が住める環境じゃない」
水京は弓を背に、冷静に答える。
それでも二人の足取りは止まらなかった。
雷兆の遺言、水京の目的、そして二人が背負った罪。
全てがこの先へと導いていた。
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不意に、地面がぐらりと揺れた。
「――来るぞ!」
双雷の警告と同時に、舗装の割れ目から異形者が這い出してくる。
黒い影のような体、無数の腕が蠢く姿。
「また厄介そうなのが……!」
水京は弓を構えた。
「連携だ。俺が前で引きつける!」
「わかった!」
双雷は電磁バリアを纏い、怪物の群れに飛び込む。
鋭い爪が迫る。
だがバリアが火花を散らし、攻撃を弾き返した。
「今だ、水京!」
「任せて! ――【火焔矢】‼」
炎を纏った矢が群れを貫き、一気に焼き払う。
そこへ双雷が釘を構え、叫んだ。
「仕上げだ! ――【飛雷針】ッ‼」
稲妻の閃光が一直線に走り、怪物たちの頭部を吹き飛ばす。
黒い影は絶叫を上げ、やがて瘴気の霧となって消え去った。
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「ふぅ……」
肩で息をする双雷の横に、水京が駆け寄る。
「思ったより悪くなかったわね。アンタ」
「はっ、褒め言葉として受け取っとくよ」
互いに息を切らしながらも、自然と笑みが浮かぶ。
不器用ながらも、確かな信頼が芽生え始めていた。
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夕暮れ。
二人は小さな廃ビルの屋上で野営の準備をしていた。
瘴気が届きにくい高所は、安全な休息場所でもある。
「なあ、水京」
「何?」
「さっきの連携……ちょっといい感じじゃなかったか?」
水京はわざとそっけなく答える。
「まあ、アンタが足引っ張らなければ、ね」
「おいおい……。でも次はもっと合わせてやるよ」
夜風が吹き、街の灯りの欠片すらない闇が広がる。
その中で、二人の笑い声だけが小さく響いていた。
――雷と炎。
その絆は、確かに強くなりつつあった。




