↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界都市伝説大戦【改稿版】  作者: 知恵利一
第1部 死と生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/33

第12章 嫉妬区の鍛冶屋


⸻


 翌朝――。

 双雷と水京はついに嫉妬区へと足を踏み入れた。


 かつては賑わっていたはずの街並みは、今では瘴気に覆われて荒廃し、建物は骨組みだけを晒している。

 しかし、その中でただ一つ、異様に力強い光を放つ建物があった。


「……あれか」

 双雷が指さす。


 巨大な煙突からは白い煙が立ち上り、打ち鍛える音が響いている。

 どこか懐かしい“命の営み”の音。

 それは確かに、この世界に生きる人間の証だった。


⸻


「おーい、誰かいるか!」

 双雷が声を張り上げると、奥から野太い声が返ってきた。


「……誰だ、朝っぱらから騒がしい!」


 姿を現したのは、大柄で筋骨隆々の男だった。

 髭は無精だが、瞳は鍛え上げた鉄のように鋭い。


「俺は鳴神双雷。雷神から力を継いだ転生者だ」

「私は皆神水京。水神宮司の弟子」


 自己紹介を終えると、男はニヤリと笑った。

「なるほどな……噂は聞いている。転生者どもが神の力を受け継いで、このトーキョーを渡り歩いているとな」


「アンタが……鍛冶屋か?」

「ああ。【皆川鋼次(みながわ こうじ)】だ。先代からこの鍛冶場を引き継ぎ、神具を打ち続けている」


⸻


 工房の奥には、武具や釘、刀剣、鎧が整然と並んでいた。

 どれも普通の金属ではなく、淡く光を宿している。


「……すげぇ。全部、神力を込めてあるのか?」

 双雷が感嘆の声を漏らす。


「当たり前だ。異形者相手に、普通の鉄じゃ紙切れ同然だ。……で、お前の武器は?」

 鋼次の視線が双雷の腰に下がるポーチに向く。


「俺のはこれだ」

 三寸釘を取り出すと、鍛冶屋の目が鋭く細まった。


「純銀の三寸釘……! 雷神の宮司が好んで使っていたやり方だな」

「知ってるのか?」

「ああ、三十年前の宮司……神宮寺雷兆って奴から頼まれてな。釘を打ってやったのはこの俺だ」


「――っ」

 双雷の心臓が跳ねた。

 雷兆の名を、この男が知っている。


「そいつは……死んだ」

「ああ。感じていたさ。だが、その力はお前に継がれたんだろう?」

 鋼次は真っ直ぐに双雷を見据えた。


「なら、お前のために釘を打とう。雷神の力を受け継いだ者としてな」


⸻


 炎が轟々と燃え上がる。

 鋼次は真紅に灼けた鉄を槌で叩き、火花が飛び散る。


 双雷はその姿を、言葉もなく見つめていた。

 ――師匠が託したものを、俺は受け継ぐんだ。


「ほらよ。雷神専用、強化済みの三寸釘だ」

 差し出された釘は、以前のものよりも重く、どこか生きているかのような輝きを放っていた。


「これが……」

 双雷は指で挟み、神力を込める。

 瞬間、バチバチと雷光が走り、釘全体が眩く光った。


「やべぇ……力の流れがスムーズだ!」

「当たり前だ。俺の打った神具は“雷”を呼ぶ」

 鋼次が豪快に笑った。


⸻


「……なあ、鋼次さん」

「なんだ」

「俺、もっと強くなりたい。師匠を超えて、異形者を全部ぶっ倒せるくらいに」


 双雷の真剣な眼差しに、鍛冶屋は一瞬黙り――やがて口角を上げた。


「いい目だ。だがそのためには……まだまだ血を流さなきゃならんぞ」


「望むところだ!」

 双雷は拳を握りしめた。


 水京はそんな彼を横目に、小さく笑った。

「アンタって……ほんと単純よね」


「うるせー!」


 雷と炎。

 そして鉄を打つ鍛冶屋。

 ここから、さらに強力な武具と共に彼らの旅は進んでいく――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。