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異世界都市伝説大戦【改稿版】  作者: 知恵利一
第1部 死と生
12/33

第12章 嫉妬区の鍛冶屋



 翌朝――。

 双雷と水京はついに嫉妬区へと足を踏み入れた。


 かつては賑わっていたはずの街並みは、今では瘴気に覆われて荒廃し、建物は骨組みだけを晒している。

 しかし、その中でただ一つ、異様に力強い光を放つ建物があった。


「……あれか」

 双雷が指さす。


 巨大な煙突からは白い煙が立ち上り、打ち鍛える音が響いている。

 どこか懐かしい“命の営み”の音。

 それは確かに、この世界に生きる人間の証だった。



「おーい、誰かいるか!」

 双雷が声を張り上げると、奥から野太い声が返ってきた。


「……誰だ、朝っぱらから騒がしい!」


 姿を現したのは、大柄で筋骨隆々の男だった。

 髭は無精だが、瞳は鍛え上げた鉄のように鋭い。


「俺は鳴神双雷。雷神から力を継いだ転生者だ」

「私は皆神水京。水神宮司の弟子」


 自己紹介を終えると、男はニヤリと笑った。

「なるほどな……噂は聞いている。転生者どもが神の力を受け継いで、このトーキョーを渡り歩いているとな」


「アンタが……鍛冶屋か?」

「ああ。【皆川鋼次みながわ こうじ】だ。先代からこの鍛冶場を引き継ぎ、神具を打ち続けている」



 工房の奥には、武具や釘、刀剣、鎧が整然と並んでいた。

 どれも普通の金属ではなく、淡く光を宿している。


「……すげぇ。全部、神力を込めてあるのか?」

 双雷が感嘆の声を漏らす。


「当たり前だ。異形者相手に、普通の鉄じゃ紙切れ同然だ。……で、お前の武器は?」

 鋼次の視線が双雷の腰に下がるポーチに向く。


「俺のはこれだ」

 三寸釘を取り出すと、鍛冶屋の目が鋭く細まった。


「純銀の三寸釘……! 雷神の宮司が好んで使っていたやり方だな」

「知ってるのか?」

「ああ、三十年前の宮司……神宮寺雷兆って奴から頼まれてな。釘を打ってやったのはこの俺だ」


「――っ」

 双雷の心臓が跳ねた。

 雷兆の名を、この男が知っている。


「そいつは……死んだ」

「ああ。感じていたさ。だが、その力はお前に継がれたんだろう?」

 鋼次は真っ直ぐに双雷を見据えた。


「なら、お前のために釘を打とう。雷神の力を受け継いだ者としてな」



 炎が轟々と燃え上がる。

 鋼次は真紅に灼けた鉄を槌で叩き、火花が飛び散る。


 双雷はその姿を、言葉もなく見つめていた。

 ――師匠が託したものを、俺は受け継ぐんだ。


「ほらよ。雷神専用、強化済みの三寸釘だ」

 差し出された釘は、以前のものよりも重く、どこか生きているかのような輝きを放っていた。


「これが……」

 双雷は指で挟み、神力を込める。

 瞬間、バチバチと雷光が走り、釘全体が眩く光った。


「やべぇ……力の流れがスムーズだ!」

「当たり前だ。俺の打った神具は“雷”を呼ぶ」

 鋼次が豪快に笑った。



「……なあ、鋼次さん」

「なんだ」

「俺、もっと強くなりたい。師匠を超えて、異形者を全部ぶっ倒せるくらいに」


 双雷の真剣な眼差しに、鍛冶屋は一瞬黙り――やがて口角を上げた。


「いい目だ。だがそのためには……まだまだ血を流さなきゃならんぞ」


「望むところだ!」

 双雷は拳を握りしめた。


 水京はそんな彼を横目に、小さく笑った。

「アンタって……ほんと単純よね」


「うるせー!」


 雷と炎。

 そして鉄を打つ鍛冶屋。

 ここから、さらに強力な武具と共に彼らの旅は進んでいく――。

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