第12章 嫉妬区の鍛冶屋
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翌朝――。
双雷と水京はついに嫉妬区へと足を踏み入れた。
かつては賑わっていたはずの街並みは、今では瘴気に覆われて荒廃し、建物は骨組みだけを晒している。
しかし、その中でただ一つ、異様に力強い光を放つ建物があった。
「……あれか」
双雷が指さす。
巨大な煙突からは白い煙が立ち上り、打ち鍛える音が響いている。
どこか懐かしい“命の営み”の音。
それは確かに、この世界に生きる人間の証だった。
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「おーい、誰かいるか!」
双雷が声を張り上げると、奥から野太い声が返ってきた。
「……誰だ、朝っぱらから騒がしい!」
姿を現したのは、大柄で筋骨隆々の男だった。
髭は無精だが、瞳は鍛え上げた鉄のように鋭い。
「俺は鳴神双雷。雷神から力を継いだ転生者だ」
「私は皆神水京。水神宮司の弟子」
自己紹介を終えると、男はニヤリと笑った。
「なるほどな……噂は聞いている。転生者どもが神の力を受け継いで、このトーキョーを渡り歩いているとな」
「アンタが……鍛冶屋か?」
「ああ。【皆川鋼次】だ。先代からこの鍛冶場を引き継ぎ、神具を打ち続けている」
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工房の奥には、武具や釘、刀剣、鎧が整然と並んでいた。
どれも普通の金属ではなく、淡く光を宿している。
「……すげぇ。全部、神力を込めてあるのか?」
双雷が感嘆の声を漏らす。
「当たり前だ。異形者相手に、普通の鉄じゃ紙切れ同然だ。……で、お前の武器は?」
鋼次の視線が双雷の腰に下がるポーチに向く。
「俺のはこれだ」
三寸釘を取り出すと、鍛冶屋の目が鋭く細まった。
「純銀の三寸釘……! 雷神の宮司が好んで使っていたやり方だな」
「知ってるのか?」
「ああ、三十年前の宮司……神宮寺雷兆って奴から頼まれてな。釘を打ってやったのはこの俺だ」
「――っ」
双雷の心臓が跳ねた。
雷兆の名を、この男が知っている。
「そいつは……死んだ」
「ああ。感じていたさ。だが、その力はお前に継がれたんだろう?」
鋼次は真っ直ぐに双雷を見据えた。
「なら、お前のために釘を打とう。雷神の力を受け継いだ者としてな」
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炎が轟々と燃え上がる。
鋼次は真紅に灼けた鉄を槌で叩き、火花が飛び散る。
双雷はその姿を、言葉もなく見つめていた。
――師匠が託したものを、俺は受け継ぐんだ。
「ほらよ。雷神専用、強化済みの三寸釘だ」
差し出された釘は、以前のものよりも重く、どこか生きているかのような輝きを放っていた。
「これが……」
双雷は指で挟み、神力を込める。
瞬間、バチバチと雷光が走り、釘全体が眩く光った。
「やべぇ……力の流れがスムーズだ!」
「当たり前だ。俺の打った神具は“雷”を呼ぶ」
鋼次が豪快に笑った。
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「……なあ、鋼次さん」
「なんだ」
「俺、もっと強くなりたい。師匠を超えて、異形者を全部ぶっ倒せるくらいに」
双雷の真剣な眼差しに、鍛冶屋は一瞬黙り――やがて口角を上げた。
「いい目だ。だがそのためには……まだまだ血を流さなきゃならんぞ」
「望むところだ!」
双雷は拳を握りしめた。
水京はそんな彼を横目に、小さく笑った。
「アンタって……ほんと単純よね」
「うるせー!」
雷と炎。
そして鉄を打つ鍛冶屋。
ここから、さらに強力な武具と共に彼らの旅は進んでいく――。




