第8章 雷と炎、共闘の夜
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炎の矢が夜を裂き、特級怪物の肩を焼き焦がす。
瘴気が悲鳴を上げるように渦巻き、巨体がよろめいた。
「立てるか!」
少女の声が飛ぶ。
「……あ、ああ!」
双雷は血を吐きながらも無理やり立ち上がった。
全身は傷だらけだが、心には確かな熱が宿っていた。
少女は神弓を構えたまま振り返る。
「私が援護する! アンタは雷で仕留めろ!」
「命令すんなよ! ……でも、分かった!」
特級怪物が咆哮し、地を揺らしながら突進してくる。
少女は矢を番え、炎の神力を注ぎ込む。
「――【火焔矢】‼」
火炎を纏った矢が怪物の足を貫き、動きを鈍らせた。
その隙を逃さず、双雷が飛雷針を構える。
「喰らいやがれぇ‼ ――【飛雷針】‼」
三寸釘が稲妻と化し、怪物の胸に突き刺さる。
轟音が夜を震わせ、怪物が絶叫を上げた。
「効いてる……!」
「まだだ、もう一撃!」
少女は次の矢を構え、双雷は残る神力をかき集める。
二人の視線が交錯した。
「行くぞ!」
「おう‼」
雷と炎。
二つの光が同時に解き放たれる。
「――【双連撃】‼」
轟音と爆炎が重なり、特級怪物は絶叫のまま爆ぜ散った。
瘴気が霧散し、夜の空気が静けさを取り戻す。
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沈黙の中、双雷はその場に座り込んだ。
「……はぁ……死ぬかと思った……」
少女も弓を降ろし、荒い息をつきながら彼を見やった。
「ギリギリだったわね。でも、やるじゃない」
「へっ、俺がいなきゃ倒せなかっただろ?」
「何よ、生意気」
二人は互いに睨み合う。
だが次の瞬間、どちらともなく吹き出した。
雷と炎――。
不器用な二人の共闘は、こうして始まったのだった。