第6章 孤独なる雷と特級の影
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雷兆が倒れた直後――。
目の前には、まだ特級怪物が立ちはだかっていた。
全身から瘴気を吐き出し、血走った瞳をギラギラと光らせている。
「……師匠……俺がやるしかねぇんだよな」
震える手で三寸釘を握りしめる。
全身は恐怖で固まっていたが、それ以上に胸の奥で燃えていたのは怒りだった。
「テメェは絶対にここでぶっ倒す‼」
電磁バリアを纏い、双雷は飛び込む。
爪が迫る。
咆哮が耳をつんざく。
必死に飛雷針を放つ――!
「喰らえぇぇ‼ ――【飛雷針】ッ‼」
稲妻の閃光が怪物を直撃する。
しかし、巨体は揺らぐだけで膝を折らない。
「嘘だろ……効いてねぇのかよ!」
反撃の爪が双雷を吹き飛ばす。
地面に叩きつけられ、肺の空気がすべて押し出された。
「ぐっ……はぁ……!」
立ち上がろうとしても、足が震えて動かない。
怪物の口が裂け、今にも喰らい尽くそうと迫ってくる。
その時――。
雷兆の声が、脳裏に響いた。
『俺の分まで贖え、双雷』
「……ッ‼」
全身に力が漲る。
残った神力をすべて込め、最後の三寸釘を握りしめる。
「これで……終わりだぁぁぁ‼」
雷光が指先から迸り、釘は閃光の槍と化して怪物の頭部を貫いた。
爆裂音とともに、特級怪物は悲鳴を上げ、瘴気の霧となって消え去る。
「はぁ……はぁ……や、やった……」
その場に崩れ落ち、夜空を見上げた。
星はひとつも見えず、ただ黒い闇だけが広がっている。
「……師匠。見てたかよ……」
涙が頬を伝う。
それでも、彼は生き延びた。
たったひとりで、特級を討ったのだ。
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数日後。
双雷は神社を拠点にし、ひとり夜の町で異形者を狩り続けていた。
だが、代償は大きい。
体はボロボロ、心は孤独。
「……けど止まれねぇんだ」
拳を握る。
雷兆の遺志を継ぐため。
母を悲しませた罪を贖うため。
「俺は……最強になる。必ず」
その誓いを噛み締めた時――。
遠く離れた町で、一人の少女が異形者に追われていた。
必死に走りながらも、彼女の瞳には光が宿っている。
――やがて、その運命が双雷と交わることを、彼はまだ知らなかった。