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異世界都市伝説大戦【改稿版】  作者: 知恵利一
第1部 死と生

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第5章 師の最期、弟子の誓い



⸻


 それは突然だった。


 異形者討伐の帰り道。

 瘴気の濃い夜道を歩いていた双雷と雷兆の前に、かつてない“異形”が立ちはだかった。


 体長は三メートル。

 牛のような角を持ち、口は耳まで裂け、全身から瘴気を吐き出している。


「……あれは……!」

 雷兆の顔が険しくなる。

「特級《バケモノ》だ。双雷、下がれ‼」


「はぁっ!? 一人でやんのかよ!」

「お前はまだ未熟だ! 足手まといになる!」


 雷兆の体を稲妻が包む。

 怒涛の雷撃が怪物に叩き込まれるが――。


「ぐっ……!」

 怪物は怯まない。

 むしろ瘴気を爆発させ、雷を掻き消して突進してくる。


「師匠ッ‼」

 双雷は咄嗟に飛び出した。

 だが、雷兆が振り返り怒鳴る。


「来るな‼ 死ぬぞ‼」


 次の瞬間。

 怪物の爪が雷兆の身体を深々と切り裂いた。


「がっ……はっ……‼」

「し、師匠ぉぉぉ‼」


 鮮血が夜道を染める。

 雷兆はよろめきながらも笑った。


「……双雷……お前は……生きろ」

「ふざけんなよ‼ 俺だって戦える‼ 一緒に――!」

「ダメだ……俺の命はここまでだ……。だが……お前はまだ……未来がある」


 雷兆の手が震えながらも双雷の肩を掴む。

 その目には悔恨と、それ以上に弟子への期待が宿っていた。


「俺は……救えなかった命を背負ってきた……。だが……お前なら……」


「やめろよ……やめてくれよ……!」

 双雷の頬を涙が伝う。


「……俺の分まで……贖え……双雷……」


 雷兆の瞳から光が消えた。

 雷神に選ばれし男――神宮寺雷兆は、静かに息を引き取った。


「……師匠……?」

 返事はない。

 燃え尽きたように崩れ落ちたその身体を、双雷は必死に抱きしめた。


「クソッ……! ふざけんなよ……! こんなの……あんまりだろ……!」


 怒りと悲しみが入り混じり、胸の奥で雷のように渦を巻く。


 怪物が再び咆哮を上げ、迫ってくる。

 双雷はゆっくりと立ち上がった。

 涙で濡れた顔に、確かな決意の炎が灯る。


「……ああ分かったよ、師匠」

 ポケットから三寸釘を取り出し、震える指で握りしめる。

「俺が……全部背負ってやる」


 雷光が彼の全身を駆け巡る。

 まだ未熟な力。だが確かな覚悟がそこにあった。


「俺が必ず――この世界で最強になってやる‼」


 雷鳴が夜を裂き、少年の叫びが闇に轟いた。


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