第26章 嵐の前の灯火
⸻
決戦を明日に控えた夜。
神社の境内には、焚かれた篝火が揺れていた。
炎の赤と、月明かりの白が交じり合い、静かな光を放つ。
双雷は雷牙を膝に置き、無言で刀身を磨いていた。
稲妻を宿す刃は、磨かれるたびに淡い光を返す。
「……落ち着かない?」
水京が隣に腰を下ろし、問いかけた。
「いや……逆だ」
双雷は刀を見つめたまま答えた。
「落ち着きすぎて怖ぇくらいだ。
明日、死ぬかもしれねぇのにな」
⸻
水京は少し黙り込み、それから空を仰いだ。
「……私も同じ。怖いのに、不思議と静か。
でも、それはきっと――」
彼女の瞳が揺れる篝火を映す。
「隣にアンタがいるから、だと思う」
双雷は驚いて目を見開いた。
だが次の瞬間、照れ隠しのように鼻を鳴らす。
「……へっ。なら絶対に死ねねぇな」
「そうね。二人で生き残る。それが約束よ」
⸻
篝火の前で二人は肩を並べ、言葉少なに夜を過ごした。
虫の音。
木々のざわめき。
遠くで雷鳴が響く。
嵐が近づいているのを、誰もが感じていた。
⸻
やがて水京がそっと口を開いた。
「ねえ、双雷。もし明日……どっちかが倒れても――」
「言うな」
双雷が遮る。
「そんなフラグみてぇなこと言うなよ」
顔は真剣そのものだった。
「俺は死なねぇし、お前も死なせねぇ。
二人で勝つ。……それ以外は考えねぇ」
水京は一瞬きょとんとして――
ふっと笑った。
「……ホント、アンタってバカ。でも――頼もしい」
⸻
篝火がはぜる音。
夜風が頬を撫でる。
雷牙は静かに膝の上で輝き、明日の戦いに備えていた。




