第23章 雷牙、初陣
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その夜。
神社の結界が淡く揺れた。
「……っ、来る!」
水京が弓を構えると同時に、瘴気が境内に流れ込んでくる。
鳥居の向こうから現れたのは、先日の眷属たちと同じ影――だが、数も質も段違いだった。
十を超える瘴気の獣が這い出し、境内を黒く染め上げていく。
《妬ましい……! 選ばれた者など許さぬ……!》
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「チッ……さっそくお出ましかよ!」
双雷は腰の雷牙を引き抜いた。
瞬間、刀身から雷光が迸り、夜空に稲妻が奔った。
「うおおおおっ‼」
振り抜いた一閃は雷そのもの。
迫り来る眷属の数体をまとめて斬り裂き、瘴気の霧へと変えた。
「……なにこれ……」
水京が息を呑む。
「威力が……飛雷針どころじゃない……!」
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だが、残った眷属たちは怯まず迫る。
四方八方から飛びかかり、牙と爪が双雷を狙う。
「おらぁ‼」
双雷は雷牙を大きく振り回し、雷の奔流で薙ぎ払った。
だが力が強すぎて、境内の石畳までも砕け飛ぶ。
「ちょっ……! 神社まで壊す気⁉」
「わ、わりぃ! まだ加減が……!」
力の制御は難しい。
だが斬撃の一つ一つが戦況を切り裂くほどの破壊力を持っていた。
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眷属の中から、一際巨大な個体が現れる。
四つの眼を光らせ、牙を剥き出しにして咆哮した。
《お前の力も……妬ましい‼》
巨体が突進する。
双雷は刀を構え、息を呑んだ。
「行くぞ、雷牙……!」
踏み込むと同時に、雷鳴が轟いた。
雷光の刃が一直線に走り、巨体の眷属を真っ二つに切り裂く。
爆ぜる瘴気。
残った影たちも恐れをなしたように霧散していった。
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「……はぁ……すげぇ……! これが雷牙の力……!」
双雷は肩で息をしながら、刀を見つめる。
水京は弓を降ろし、双雷を見つめた。
「本当に……化身に届くかもしれないわね」
だが次の瞬間、神社の結界が軋む音が響いた。
森の奥から、再び濃い瘴気が溢れ出していた。
《……面白い……その刀……妬ましい……》
――嫉妬の化身は、確かに双雷の“雷牙”を認識していた。




