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異世界都市伝説大戦【改稿版】  作者: 知恵利一
第1部 死と生
22/33

第22章 雷の刀、継承



 嫉妬の化身の瘴気が森を覆い尽くす。

 双雷と水京は膝をつきながら、必死に耐えていた。


《妬め……もっと妬め……その心ごと我に喰われろ……》


「くっ……このままじゃ……!」

 双雷が歯を食いしばったその時、青白い光が二人を包み込んだ。


「結界……!」

 水京が顔を上げる。


 神社の方角から、水神宮司の祈祷が届いていた。

 青い水の障壁が森全体を覆い、化身の瘴気を押し返していく。


「今のアンタたちじゃ勝てない! 戻りなさい!」

 宮司の声が頭に響いた。


「チッ……!」

 双雷は悔しさを滲ませながらも、水京の肩を借りて後退する。


 化身は追撃してこなかった。

 その無数の口が嘲笑するように響いた。


《いずれまた……妬みの夜が来る……》



 命からがら神社へ戻った二人は、境内に倒れ込んだ。

 全身ボロボロ、神力もほとんど残っていない。


「……くそっ……全然……届かねぇ……!」

 双雷は拳を叩きつけ、悔しさに唇を噛む。


「でも……生きて帰れただけでも……」

 水京も息を切らしながら、かすかに笑った。


 そこへ、重い足音が響く。


「よお、やっぱり無茶しやがったな」


 現れたのは、鍛冶屋・鋼次だった。

 煤けた前掛けに火傷の跡、鉄と火の匂いをまとった男。



「鋼次……!」

「お前ら、化身に挑んだんだろ。バカ野郎……死ぬ気かよ」

 鋼次はため息をつきながらも、双雷をじっと見据える。


「……けどな、ようやく“器”が整ったみてぇだ」


「器……?」

「ああ。雷兆に言われてたんだよ。

 “いつか後継者が来る。その時までこれを眠らせておけ”ってな」


 双雷の心臓が大きく跳ねた。

「……師匠が……!」



 鋼次は工房から布に包まれた長物を抱えて戻ってきた。

 布を解くと、漆黒の鞘が現れる。

 稲妻の紋様が刻まれ、ただ置かれているだけで空気が震えた。


「こいつの名は――【雷牙らいが】」


 鋼次の声は低く、重く響いた。


「雷兆が最後まで使わなかった刀だ。理由は一つ。

 器を持たぬ者が握れば、雷に呑まれて死ぬからだ」


「……」

 双雷は刀を見つめ、ゆっくりと手を伸ばす。



 柄に触れた瞬間、雷光が弾けた。


「ッ……!」

 全身に走る衝撃。だが双雷の身体は耐えた。

 覚醒で広がった“器”が、刀の雷を押し留めていたのだ。


 鞘から抜かれた刀身は白銀に輝き、雷そのものを纏っていた。


「……すげぇ……これが……師匠が残した……!」



 鋼次は口の端を上げる。

「ようやく似合う奴が現れたってわけだ。

 その刀は雷神の意志を宿す“斬雷”の刃。

 ――頼んだぜ、後継者」


 双雷は刀を握りしめ、夜空を仰いだ。

 雷鳴が応えるように轟き、刀身が眩く閃いた。


「待ってろよ……! 次はこの雷牙で、絶対に化身を斬り伏せる‼」

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