第22章 雷の刀、継承
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嫉妬の化身の瘴気が森を覆い尽くす。
双雷と水京は膝をつきながら、必死に耐えていた。
《妬め……もっと妬め……その心ごと我に喰われろ……》
「くっ……このままじゃ……!」
双雷が歯を食いしばったその時、青白い光が二人を包み込んだ。
「結界……!」
水京が顔を上げる。
神社の方角から、水神宮司の祈祷が届いていた。
青い水の障壁が森全体を覆い、化身の瘴気を押し返していく。
「今のアンタたちじゃ勝てない! 戻りなさい!」
宮司の声が頭に響いた。
「チッ……!」
双雷は悔しさを滲ませながらも、水京の肩を借りて後退する。
化身は追撃してこなかった。
その無数の口が嘲笑するように響いた。
《いずれまた……妬みの夜が来る……》
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命からがら神社へ戻った二人は、境内に倒れ込んだ。
全身ボロボロ、神力もほとんど残っていない。
「……くそっ……全然……届かねぇ……!」
双雷は拳を叩きつけ、悔しさに唇を噛む。
「でも……生きて帰れただけでも……」
水京も息を切らしながら、かすかに笑った。
そこへ、重い足音が響く。
「よお、やっぱり無茶しやがったな」
現れたのは、鍛冶屋・鋼次だった。
煤けた前掛けに火傷の跡、鉄と火の匂いをまとった男。
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「鋼次……!」
「お前ら、化身に挑んだんだろ。バカ野郎……死ぬ気かよ」
鋼次はため息をつきながらも、双雷をじっと見据える。
「……けどな、ようやく“器”が整ったみてぇだ」
「器……?」
「ああ。雷兆に言われてたんだよ。
“いつか後継者が来る。その時までこれを眠らせておけ”ってな」
双雷の心臓が大きく跳ねた。
「……師匠が……!」
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鋼次は工房から布に包まれた長物を抱えて戻ってきた。
布を解くと、漆黒の鞘が現れる。
稲妻の紋様が刻まれ、ただ置かれているだけで空気が震えた。
「こいつの名は――【雷牙】」
鋼次の声は低く、重く響いた。
「雷兆が最後まで使わなかった刀だ。理由は一つ。
器を持たぬ者が握れば、雷に呑まれて死ぬからだ」
「……」
双雷は刀を見つめ、ゆっくりと手を伸ばす。
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柄に触れた瞬間、雷光が弾けた。
「ッ……!」
全身に走る衝撃。だが双雷の身体は耐えた。
覚醒で広がった“器”が、刀の雷を押し留めていたのだ。
鞘から抜かれた刀身は白銀に輝き、雷そのものを纏っていた。
「……すげぇ……これが……師匠が残した……!」
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鋼次は口の端を上げる。
「ようやく似合う奴が現れたってわけだ。
その刀は雷神の意志を宿す“斬雷”の刃。
――頼んだぜ、後継者」
双雷は刀を握りしめ、夜空を仰いだ。
雷鳴が応えるように轟き、刀身が眩く閃いた。
「待ってろよ……! 次はこの雷牙で、絶対に化身を斬り伏せる‼」




