第20章 雷を制する者
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轟音。
雷光は制御を失い、周囲を無差別に焼き払っていた。
「ぐっ……はぁ、はぁ……!」
双雷の体は裂けるような痛みに苛まれていた。
それでも雷は止まらない。
《もっとだ……もっと力を……》
心の奥底に囁く声。
それは化身のものか、自分自身の欲望か、もう分からなかった。
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――その時。
脳裏に鮮やかに響いたのは、師匠・雷兆の声だった。
『力に飲まれるな、双雷。雷は刃であり、同時に毒でもある。
制するのは雷じゃない。お前の“意思”だ』
その言葉が胸を撃つ。
忘れるはずがない。
雷兆が最後に見せてくれた、あの揺るがぬ眼差し。
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「……師匠……」
双雷は苦悶の中で、必死に自分の拳を見つめた。
稲妻が迸り、皮膚を裂き、血が滴る。
だが――その拳は確かに自分のものだ。
「……そうだ……。雷は俺のものだ……!」
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強く握りしめた瞬間。
暴走していた稲妻が、まるで従うように収束していった。
荒れ狂っていた光が一本の刃のように形を変える。
「……おお……」
水京が息を呑む。
双雷の背から伸びる雷光は、もはや爆発ではない。
鋭く、清冽で、研ぎ澄まされた“刃”だった。
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「妬みの声なんざ……どうでもいい。
俺は俺の意思で、この力を振るう‼」
双雷の瞳が蒼白く輝く。
雷兆の教えを胸に刻み、自らの力を制御した瞬間だった。
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化身が呻く。
《……馬鹿な……人の身で雷を……従えた……だと……?》
「黙れ‼ これは俺の雷だ‼」
双雷は飛雷針を構え、全身の力をそこへ集中させた。
「――【飛雷針・極】‼」
放たれた稲妻は一本の閃光の剣となり、闇を切り裂いて化身の身体を抉った。
森全体が閃光に包まれ、瘴気が一気に吹き飛ばされていく。
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膝をつきながらも、双雷は笑った。
「……師匠。ちゃんと、制御できたぜ」
その姿に、水京は思わず見惚れた。
暴走しかけた少年は、ついに“雷を制する者”へと成長していた。




