第19章 雷の暴走
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覚醒した双雷の一撃は、空間そのものを揺さぶった。
「うおおおおおっ‼」
拳から放たれた雷撃が森を貫き、嫉妬の化身を真正面から吹き飛ばす。
《……ぐぅぅぅッ‼》
無数の口から悲鳴が漏れ、黒い瘴気が弾け飛んだ。
その光景に、水京は思わず目を見張った。
「すごい……! 本当に化身を押してる……!」
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化身の触手が襲いかかる。
だが双雷はその全てを避けるどころか、素手で掴み砕いた。
「効かねぇ‼ テメェの妬みなんざ、雷で焼き尽くしてやる‼」
全身から放たれる稲妻は暴風のように広がり、化身を押し返していく。
――だが。
次の瞬間、その稲妻が暴発した。
「ぐっ……!?」
双雷の顔が苦痛に歪む。
制御しきれない電撃が四方八方へ飛び散り、地面を抉り、木々を薙ぎ倒した。
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「双雷っ、やめろ‼ このままじゃ自分まで……!」
水京の声は届かない。
双雷の瞳はすでに焦点を失い、ただ雷に飲まれていた。
「……もっとだ……もっと力を……」
歯を食いしばり、雷を増幅させる双雷。
その姿は、力を求めるあまり我を忘れた怪物にすら見えた。
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化身は逆に笑った。
《ククク……そうだ……それが妬みの果て……!
お前はやがて、自分の力に妬まれ、壊れるのだ……!》
挑発する声すら、双雷には届いていない。
バリバリと雷鳴が走り、地面に巨大なクレーターが穿たれる。
その余波が水京の足元に迫った。
「きゃっ……!」
炎のバリアを張り、辛うじて防ぐ。
だが表情は青ざめていた。
(……このままじゃ、双雷が……!)
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雷の奔流の中心で、双雷は膝をついた。
「はぁっ……はぁっ……っ、止まんねぇ……!
体が勝手に……暴れやがる‼」
雷光がさらに強まり、彼の髪は逆立ち、銀を超えて白く輝いていく。
その姿はもはや人ではなく、雷そのものの化身だった。
「双雷‼ 戻ってきて‼」
水京の叫びが夜空に響いた。
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その声に、一瞬だけ双雷の瞳が揺らいだ。
だが――化身の触手が再び迫る。
《妬ましい……その力……私が頂く……》
覚醒と暴走の狭間で、双雷は極限の選択を迫られようとしていた。




