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異世界都市伝説大戦【改稿版】  作者: 知恵利一
第1部 死と生

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第17章 嫉妬の化身


⸻


 ――森が震えた。

 大地が軋み、空気が黒い粘液のように重くなる。


 双雷と水京は前に出ていた足を止めざるを得なかった。


「……これが、本体……」

 水京の手がわずかに震えている。


 森の奥から現れたのは、人の形を模してはいるが、異様に歪んだ存在だった。


 顔には無数の口が裂け、絶えず誰かの声を真似て囁いている。

 身体は液体のように揺れ、周囲に漂う瘴気を吸い込み続けていた。


《……羨ましい……どうしてお前だけ……選ばれる……》


 耳元で囁かれたかのような声が、双雷の頭をかき乱す。


⸻


「来るぞ‼」

 叫んだ瞬間、化身の腕が鞭のように伸びた。


 双雷は反射的に電磁バリアを展開。

 しかし、次の瞬間――


「――ッぐぅぅっ‼」


 全身を叩きつけられ、地面にめり込む。

 電磁バリアごと、押し潰されたのだ。


「双雷‼」

 水京が炎の矢を放つが、化身は笑うように瘴気を吐き、炎ごと呑み込む。


《弱い……お前たちでは、妬みの闇は超えられぬ……》


⸻


「チッ……まだだ‼ 【飛雷針・集轟】‼」

 双雷が立ち上がり、三本の釘を放つ。


 雷光が森を切り裂き、化身の胴を貫いた――が。


「なっ……」

 雷光に焼かれたはずの身体が、黒い液体となって再生していく。


《羨ましい……その力……奪ってやる……》


 声と共に、化身の瘴気が双雷の身体へと絡みつく。

 頭の奥で、自分とは別の声が響いた。


《力なんていらないだろう? 楽になれ……妬まれるだけだ……》


「……っ、くそ、やめろ‼」

 双雷は必死に意識を保つが、視界が揺らぎ始めた。


⸻


「双雷‼ しっかりしろ‼」

 水京が横から矢を連射する。

 炎が黒い瘴気を一瞬だけ払うが、それでも化身は止まらない。


《仲間も裏切る……妬ましい……お前たちはいずれ壊れる……》


 化身の全身から触手が放たれ、森を薙ぎ払った。

 木々が爆ぜ、地面が崩れ、双雷と水京は吹き飛ばされる。


「ぐはっ‼」

「きゃあっ‼」


 二人は地面に転がり、血を吐いた。


⸻


 立ち上がると、目の前に巨大な影が覆いかぶさっていた。

 化身はゆっくりと、だが確実に迫ってくる。


 圧倒的な力の差。

 修行で鍛えられた力すら通じない現実。


「くそっ……! これが特級……!」

 拳を震わせる双雷。


 だがその瞳の奥には、まだ消えていない炎が宿っていた。


《お前たちの絶望……その妬みこそが、我の糧だ……》


 囁く声が、夜の森に響き渡った。

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